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秋
ある朝わたしは
あらゆるものが落ちようとしている景色を見た
それらは重力に向かっていこうとしているのではなく
おのれの最も深い中心点に引き寄せられているのだった
ススキやコスモスは
高く抜けた空に昇っていくように生えているが
彼らは
夏を謳歌するものたちが見せていた
限りない広がりをまったく見せず
目は半分閉じかけて
自分以外の誰も知らない秘密の場所へと
死期を悟った猫のような静けさで
落下しているのだった
大気に充満していた自然の呼吸は
穴だらけのチーズのように希薄になっている
夏の日差しのもとでは
話し相手に困ることなどまったくなかったが
今わたしは
あらゆるものたちを遠く感じる
熟れたブドウも
アケビの蔓も
牛の反芻や川の流れまで
声の届かない遠くへ行ってしまっている
大声を出そうにも
わたしの呼吸もまた
小さく縮んでいこうとしている
地球もまた
落ちていこうとしている
膨張していた自身の感覚を呼び戻して
冷たく固まる準備をし始めている
その動きに引きずられて
わたしの神経も
脳の奥深くへと落ちていく
遠く遠くへと感覚を置き去りにして
空間にめまいを生じさせながら
わたし以外のものが
誰にも見られたことのないわたしの座へと
まっすぐに落ちてくるのを待っている
そしてある朝
わたしは落下する魂になっている




