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自家用ジェット(五月Ver.)

五月の新緑が眩しい晴れのなかを

小さな鳥のように

自家用ジェットが飛んでいる


僕は列車のこない線路を歩きながら

ゆっくり遊ぶ飛行機雲の行方を追う

線路の先がどこにも繋がっていないように

自家用ジェットにだって行くあてはない

そうやって時間と景色は乾いていく

錆びた線路と雑草 それから

焼けた石によって


 理科室の標本

 瓶詰めのミルクキャンディ


背の低い町を飛ぶ自家用ジェットは

きっとこの町の思い出を探している

僕らは昔

高校生だった

あの時手の届かなかったものを

今では記憶の棚にきれいに並べて


 空を覆っている

  工場の煙

  夏の砂埃


自家用ジェットが光のなかに消え

僕の足音も言葉を失う

空はまだ青いが

やがてかすんでいくだろう


 あの時渡せなかった

  埃だらけの手紙

 割れたままの金魚鉢


青春を詰め込んで空を飛ぶことはできないだろう

だけど僕の見上げるあの自家用ジェットは

分け隔てなく思い出を降らせてくれる

手紙に書かれた君の名前は

きっと色褪せたままのほうがいい


同じように僕の名前も

この空の下のどこかで

誰かが懐かしそうに呼んでいるだろう

その度に五月はどこか輝き

誰かの特別が空気を熱くしていく


手のひらに残るものは何もないだろう

もうすぐ君の香りも完全に消えて

僕は一人で枕木の上に立つ そう

誰かが僕の肩代わりをしないように

どこまでも穏やかな呼吸を

ここに残して

ずっと前にも同タイトルで書いた詩がありまして、それを朗読用に作り変えたものです。5月に作ったので、5月Ver.

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