表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/52

第四十一話

 で、今日も今日とて殺されているわけである。まる。

 寝転んでいる地面がひんやり冷たい。


「か、勝てない……というか、かわせない……」

「んー、惜しいところまでは来てるんですけどねー」

「正直惜しいもへったくれもない気分ですよ……」


 がくがくと震える足に鞭打って、ボクはもう一度立ち上がる。


「あと一歩ですよ。踏み出せれば道は自ずと開けます」

「それ、大分聞いてますよ」


 なのに、一向に成長できている気がしない。

 いや、確かに成長しているのだろうけれど、相手が強大すぎてその成長はしばらくはなんら無意味だろうし、そもそもその方向性さえ間違っている様な気がする。


 仮にそうだとしても、今のボクはこれ以外の方法がわからないのだけれど。


「くっ、まだまだぁ――!」

「はいはい。ちゃんと付き合いますから、急かさないでください」


 再び構え、気炎を吐いて、ボクはもう一度彼と向き合い――


「ぎゃぁあああああああああああああっっっ!」


 ……また殺されたのだった。


 ……


「勝てない、勝てないよぉ……」


 そろそろ心が折れそうだった。

 というか、本気で勝てる気がしないのだ。

 あの人、容赦の欠片も無しに殺しにかかってくるんだもん。


 手足を潰すまでもなんだか段々とじっくりとやってる感じだから、余計に痛いし辛い。おまけに顔は終始笑顔で、その表情からピクリとも動かさないのだ。普通に怖い。

 それでも、雰囲気から真面目にやっているのが分かる辺り、頑張ろうと思ってしまうのが余計にたちが悪いったらないし……。


「うぅ……でもいい加減ツライ……というか先が見えないし…………」


 ふと思い浮かぶのは、先生の攻撃。

 あんな鉄の塊みたいな武器を、早く、鋭く、目に見えない程の速さで使い、手足を潰しにかかってくる。

 ……いったい、どれだけの鍛練を積めば、そこまでの実力が付くのだろう。

彼を殺せるようになるだなんて、今のボクにできるんだろうか。


「……いつか、届くのかな」


 ぽつりと呟いた言葉には、びっくりするくらい力がなかった。


 ……


 大地が、赤々と燃えていた。人々は逃げ惑い、或いは炎に飲み込まれ、悲鳴を上げながら絶望している。

 随分懐かしい記憶を振り返っていた。

 思い出すことも、自分を認識することさえも久しくなかったというのに。


 ……人間は、また数が多くなっているようだ。

 以前のように、傲慢な進歩こそしていないけれど、十二分に脅威になり得るだろう。

 それでも、まだ見過ごして問題がないレベルだ。以前ほど危険というワケではないのだから、まだ静観していられる。


 しかし、どうしてだろう。

 何故、わたしは今更――――


『ああ、君達は本当に愚かだ。俺では救いようがない程愚かだ。……もういい。後の全部、俺が一切合切焼き払う』


 ――そうだ。

 近くに彼が居る。


 ……


「…………おい、ちょっと待て。なんだこの書類!?」

「どうされましたか、学園長?」

「ああ、リーゼリット先生……この魔動機士マギウスの使用許可って…………」

「……アレン先生です」

「やっぱりかぁ……」

「……あの、学園長……いったいどういう意図があって、アレン先生をこの学園へ呼んだのですか? 学園長に深い考えがあるのは分かります。しかし……彼は異質過ぎます。教師にしても、魔法使いとしても、冒険者としても」

「ああ…………いや」

「…………?」

「聞かないほうが良い。知りたいってのも、納得できないってのも判るけれどさ。……知らない方がいい。絶対に、ワザワザ知りがるようなモノじゃないからな」

「…………」

「ま、アレン先生は敵対さえしなければ一応無害だ。好奇心は猫を殺すってもいうからな。あんまし嗅ぎまわんなよ?」

「もし……嗅ぎ回るような猫がいれば?」

「その時は、真っ先に俺が殺すだろうな。この書類、許可出しておくから、アレン先生に伝えておいてくれないか?」

「……承りました」


 ……


「……拙いなぁ」

「どうしたの、アレン?」

「いえ、そろそろちょっと大掛かりな事が起こる感じなので、少々気が滅入るといいますか……まあ、面倒くさいってだけだよ」

「……ん。判った。でもね――」

「フェリン――!?」


 ちゅっ


「困ったら、いつでも頼って、旦那様」

「…………了解。かっこ悪いとこ、見せられないなぁ……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ