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第二十九話

 平日の昼。

 我が家の屋根の上。


「これまた、面白い運命じゃないか」

「あなたがそう言うとなかなかに不穏なんですが」


 クリエイターが笑う。

 楽しそうなのは構わないが、こちらとしては不安でしかない。


 ちなみにフェリンさんには友人と会ってくると話した。


「人の娘に不吉な予言とか、残していかないでくださいよ?」

「勿論さ。僕は外から眺めるのが趣味だよ。祈ることはあれど、干渉はしないさ」

「いやまあ、あなたが干渉するとか、本気で洒落にならないんですけど」

「心外な」

「というか、干渉云々言うのなら、俺を以前に誘ったのは?」

「勧誘はノーカウントだよ」

「そうですか」


 随分いい加減だよなー、この人。

 というか、俺だってこの人のミスから産まれたような存在だしなー。


 そもそもの話、この世界自体法則やらなんやらガバガバだし。

 おまけに世界の融合して、面倒ごとをほぼほぼこっちに丸投げしたんだよな。

 その上で役割まで押し付けやがったし……。


 あれ? 今更だけれどふつふつと怒りが……。


 ……全権行使、は拙いな。

 変な影響でたら困るし。


 よし。


「そう言えば、クリエイター。あなた今年で何歳でしたっけ?」

「!?」

「そんな歳でいまだ告白も出来ず童貞とか……あ、だから創世の魔法使い()なんですね分かりますー」


 精神攻撃。


「き、君だってついこの間まで……!」


 肩に手をポンと置いて、にっこり。


「歳の差を考えましょう」

「うっるさい! お互いもはや気にしてられる年齢じゃないでしょう!」

「いや、それでも結構な差がありますよ?」

「――――!」


 クリエイター は 逃げ出した!


「まったく……」


 何でこんなのが創造者なんだか。

 頭が痛くなってくるが、俺もどっこいどっこいなので、考えるのはこれくらいにしておこう。


「アレンさーん!」


 そうこうしていると、誰かが俺を見つけて手を振っている。


「カタナ君!」


 長い白髪をくくり、さほど高くない身体を黒いコートに包んだ、美少女のような整いすぎた顔の

 ともすれば怜悧な雰囲気を感じさせるその顔に無邪気な笑みを浮かべ、カタナ――カタルナギア・ヒーラーは走ってきた。


「お久しぶりです!」

「いや本当に……百年はあってませんよね?」

「はい! アレンさんもお変わりなく! ……ところで、なんでクリエイターさんが泣きながら飛んでいったんですか?」

「ああ、うん。自業自得ですから気にせんで大丈夫ですよ。それより、ブラックドラゴンさんと仲良くやってます?」


 彼の佩いている黒い長剣を見やる。


「ええ。相変わらず喋れませんけど」

「そもそも彼らはヒトと会話できませんから、仕方ないでしょう」


 彼はエルフ――今や希少種のハイエルフだ。

 俺ほどではないが、長い時を生きてきた存在。


 回復の全権持ち。


「しかし、それでもやろうと思えば、もうそんな制約無視できるはずなんですが……」

「?」


 ぼそっと呟いた言葉は、カタナ君には届かなかったようだ。


 まだ隠しますか、ブラックドラゴンさん。

 というか、未だ自分がだってばらしていないのか?


 もう随分長く一緒に旅してるんだから、素直になったって良い頃合だろうに。


 まあそれよりずっと長くうじうじしている創世の魔法使い()も居ることだし、気長に待つ方がいいのかもしれない。


「ああ、折角なので上がって行きますか? 娘が産まれたんですよ」

「ふふっ、何を隠そう、娘さんが生まれたのをリイレさんから聞いてこっちに来たんですよ!」

「そうなんですか」


 成る程。

 確かにリイレさんならみんなに「あいさつくらいはしに行きなさい」とか言うよな。

 あの人、なんだかんだで面倒見が良いんだよな。

 後でお礼を言いに行こう。

 実際ノートは非常に参考になった。


「いらっしゃい」

「おじゃまします」


 カタナ君を家の中に招くと、フェリンさんがアンリを抱いて出てきた。


「あう?」

「うわ、可愛い!」


 早速、こてん、と首をかしげたアンリに、カタナが撃墜された。


「うちの天使アンリです!」

「アレン、その人は?」

「俺の知り合いのカタナ君です」

「あ、アレンさんの奥さんですよね? はじめまして、カタルナギア・ヒーラーと申します。カタナと呼んでください。知り合いはみんなそう呼ぶので」

「……その剣」

「ああ、これですか?」


 フェリンさんがカタナ君の剣を見て小首をかしげる。


「黒い色だけど……勇者の剣?」

「確かにデザインが一緒だから紛らわしいですよね。これ、ブラックドラゴンさんが契約した姿なんですよ」

「ブラックドラゴン!?」


 ブラックドラゴンさんの名前を聞いて、フェリンさんが身構える。


 当然の反応か。

 ドラゴンと言えば、かつて存在していたヒトの天敵だ。


 まあ、今じゃ生存しているのは一匹もいない。

 契約状態のドラゴンは生きてるってカウント出来ないし。


「大丈夫ですよ。カタナが敵対しない限りは。それに万が一敵対しても倒せますしねー」

(舐められたものだな、竜王)

(おや……)


 ぶすっとした少女の声が俺の耳に届いた。

 ブラックドラゴンさんである。

 しかし竜王とか、その名前を呼ばれるのは随分久しぶりな気がする。


(喋れるじゃないですか)

(招待を明かしていないだけで、既にこいつの前で人間の姿にはなっている。本来は肉体から分離しているのだが、今は隠れていることになっている)

(成る程)


 普段は何か上手い理由をつけて人間の姿で行動しているけど、今はばれると面倒だから剣の中に引っ込んでいる、と。


 で、どうせ人間の姿でいちゃいちゃしているんですよね。


「まあそんなワケで安全ですよ。それに勇者の剣だって、レッドドラゴンさんが契約した姿ですし」

「!?」

「へぇ……」


 フェリンさんが愕然とした表情をしている。

 というか、感心したように頷く辺り、カタナ君も知らなかったのか。


「……なんでそんなことを?」


 アンリをあやしながら、フェリンさんがおずおずと聞いてくる。


「いや、随分昔に使ってたので」


 嘘は言ってないな。


「そう……」


 あ、なんか諦めた調子だ。


「アレンさんは昔から色々やらかしますから、今更勇者だったとか言われても驚けませんしねー。あ、そういえば、奥さんも勇者だったんですよね?」

「あれ? 教えたっけ?」

「いえ、風の噂で白い魔狼が勇者になったって聞いていたので」

「そうでしたか」

「となると、アンリちゃんは勇者二人の子供ってことになるんですかね?」

「ああ、確かに」


 ううむ、いろんな意味で将来が楽しみな子だ。

 ああ、今のこの可愛さから言って、絶対にお母さん似の美人になる。

 これ確定。


「アンリちゃん、本当に可愛いですね」

「でしょう?」

「ああ、もし病気とかでしたら、お任せを。念話なんかでいつでも呼び出してください。これでも回復者ヒーラーなので」

「その時は頼みます」


 彼が席を立つ。

 俺達は玄関まで彼を見送った。


「では、そのうち」

「彼女さんとお幸せに」

「あれ、知ってたんですか?」


 本人に聞きました、とは言わず、手を振る。


「お元気で」

「ええ」


 ……


「アレン、勇者だったなんて、知らなかった」

「すいません、そんなに面白い話でもないので……」

「それはわたしが判断する」

「……怒ってます?」

「ん」


 首肯されてしまった。

 ちなみにアンリはベビーベッドですやすやと寝ている。


 フェリンさんは我が家の天使のほっぺをふにふにと突きながら、


「未だに敬語をやめてくれないし、昔のことも話してくれないし」


 とかブツブツ言い出してしまった。

 これはあれか? いじけてるってことなのか?


「……たぶん、アンリを除けば、一番わたしは、あなたと一緒にいた時間が短い」


 ぽつりとフェリンさんが呟く。


「だからやっぱり、少し不安。アレンが……アンリと一緒に、何処か行ってしまうんじゃないかって」


 ……本当に、俺は。

 この口調はクセみたいなものだけど、彼女がそれを気にするとは。


 でも……いい機会か。


「……わかったよ、フェリン」

「っ!」


 彼女にくらい、敬語じゃない、俺なりの言葉で話してみよう。


「ごめん、不安な思いをさせて。でも、少なくとも俺は、フェリンから離れたくないよ」

「……うん」

「お詫びといってはなんですが、少し昔の話をしましょうか――」


 そうして、俺は懐かしい頃を話し始めるのだった。

 活動報告でも言ったとおり、今回で「触手ニート」は一区切り、もとい一休みです。

 これからは「テンタクル・サーガ ~世界を救った触手~」を投稿していきますので、よろしくお願い致します。

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