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第二十八話

 あれから一ヶ月が経った。


「あう?」

「うあああ……うちの子が可愛すぎて生きるのが辛い!」

「死んじゃ駄目」

「勿論です! フェリンさんとアンリが居る限り、俺は不滅ですよ!」


 つぶらな瞳で俺を見上げる、黒い髪に桜色の瞳の赤子。

 俺とフェリンさんの娘である。

 名前はアンリ。


「しかし、ここまで早く生まれるとは思ってませんでしたよ」


 妊娠報告のあの日からたった二週間で産気づくなんて、誰が想像しただろうか。

 しかも産まれた子の成長までもが早い。


 まさかたったの一週間でここまで成長するとは思わなんだ。

 これ、人間だったら六ヶ月くらいかかるんじゃないかという急成長っぷりだ。


 まだまだ夜泣きがひどいが、それくらいは赤子のうちは普通だろう。

 というか、この調子で成長されると、も経ったら立派に成長していそうだ。


「元々魔狼は成長が早い魔物だけど……多分、あなたの血も影響している」

「俺の血……ですか?」

「ん。因子と言い換えてもいいかもしれない」


 そういえば創造者クリエイターも言っていた。

 俺や旅人トラベラーの因子を持った連中は面白いと。


 彼の性格から考えれば、面白い=普通じゃない、だろう。


 元を正せば、旅人トラベラーが由来の髪の色だが、確かに今じゃあ俺の色として定着している気がする。

 というか、最早俺の因子に分類されてるな。


 しっかりアンリにも受け継がれてるし。


 ちなみにコドクさんは今は居ない。

 万が一アンリに悪影響があったら嫌なので、暫くは家に帰ってこないらしい。


 一応妖刀だけれど、正直もう呪いも何も全部自分の意思で抑えているから、心配ないと思うんだけどなー。


 でも、俺も俺で触手だからと遠慮したこともあったし、分からない話でもないんだよな……。


「だー、あー!」


 はっしと俺の服の裾を掴み、アンリが笑う。


「か・わ・い・い・で・す!」


 やっべ鼻血もんだ!

 この子、パパを出血多量で殺しにかかってるよ!


「もうわたし達の顔を覚えてるみたい」

「……ここまで育つのが早いと、ちょっと寂しいですね」


 ちょっとそんなことも思ったりする。

 この分だと、赤子の姿でいる期間はとても短いのだろう。


「仕方ない。この子には、生きようとする血の力がある」

「すくすく大きくなってくれるのは嬉しいんですけどね」

「健康が一番」

「そうですね」


 フェリンさんの言葉にうなずき、もう一度俺はアンリの頭を撫でた。


 確かに、彼女がすくすくと育ってくれるなら、それに越したことはない。


 というか、そのためだったらお父さんは世界でも滅ぼしちゃうぞ☆

 ちなみにフェリンさんもそれには賛成した。

 「徹底的にやる」と言うのは本人の弁。


「う?」

「なんでもないですよー、アンリ」


 俺達二人から立ち昇る愛の覚悟ふおんなけはいを感じたのか、少し不安そうな顔でアンリが首を傾げた。

 それもあやせばすぐににっこり笑顔だ。


 マジで天使だ。


 そういえばこの子、あんまり泣かない。

 何か気になるものがあればそれをばしばし叩いて意思表示するし、不満がある時はいやそうな顔をしてもじもじとしている。


 泣くと言えば、本当に夜泣きくらいのものなのだ。


 お陰様で楽なのだが、手がかからなすぎて、少し怖いのもある。

 どこか調子が悪いということもないのだが……悩みどころである。


 でも、それでフェリンさんにも負担はかかってないし、というか、我が娘、ひょっとして天才なんじゃね?


「あー!」


 俺がしげしげと眺めているの面白がっているのか、万歳するようなポーズできゃっきゃと笑っている。


 ああ、うん。天才じゃないな。

 疑う余地もなく天使だわ(本日二回目)。


「もう可愛すぎて食べちゃいたいくらいです!」

「……食べちゃダメ」

「食べません! 俺がアンリを傷つけるワケがありません!」


 さっと俺から庇うようにフェリンさんがアンリを隠した。

 俺はおろおろしながら弁解する。


「だー、うー」


 アンリがフェリンさんの胸を叩く。

 お腹が減っている時だ。


「ん、おっぱい、すぐあげる」

「もう授乳にも慣れてきましたね」

「一週間もやってるから」


 美味しそうにアンリがおっぱいを飲む。

 この調子で元気に育ってくれれば何も言うことない。


「大きくなってくださいね。元気で、幸せに過ごしていけるように」

 アンリエイル・アジャスター(アンリ)


 黒髪に桜色の目。狼耳と狼尻尾もしっかり母親から受け継いだ模様。

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