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第二十話

 そんなこんなで数日。


 この時期最も嫌なものがチラつきだした。


「雪ですかー」

「雪ねー」


 白くて冷たいにくいヤツ。

 子供は大喜びだろうが、大人にとっては頭痛のためである。


 ちなみに俺は子供(?)の時から嫌いだった。

 だって寒いの辛いし。


「この分だと結構積もりますよね?」

「そうね。とりあえず、ご主人様も働きなさいよ?」

「えー」

「えー、じゃないわよ。働きなさい、屑ニート」


 いや、屑ニートだから働きたくないんですが……、あ、いや。


「…………」


 ティアナさんの汚物を見る視線。

 やめてー、目覚めちゃうからやめてー。

 びくんびくん。


「……それ、余計に印象悪化させるんじゃない?」

「はっ!?」


 ついついコドクさんとふざけるノリで!


「…………」


 ティアナさんから絶対零度の視線が向けられる。

 ……好感度、今ので大分下がったなー。


 ティアナさんが、落ち込む俺を尻目に、フェリンさんに話しかける。


「……フェリン様」

「なに?」

「やはり私には、彼がフェリン様の夫になるに相応しいとは、どうしても思えません」

「……そう?」

「はい。今も私の目線で、変態の様な表情をしていました」

「…………そう」


 フェリンさんがこちらを向く。

 ……なんか申し訳なくて、目をあわせられない。


「……アレンは変態かもしれない」

「間違いなく変態です」


 ティアナさんが厳しい。

 コドクさん、笑い堪えてるのバレバレですよ?


「でも、アレンはわたしの命の恩人だから」

「ですが、それでも彼は……」

「彼がいなければ、わたしはここに居なくて、彼がいなければ、わたしは勇者にもなっていなかった」

「……フェリン様」

「わたしにとって、アレンはかけがえのない人」


 フェリンさんの言葉に、ティアナさんの表情が悲しげに歪んだ。


「……だからこそ、私は、彼を認めたくないのですよ」


 ……


 夜。

 静かに雪が降り積もる。


「……あれ?」


 何の気なしに外を見て、首を傾げる。

 ティアナさんが外に出ていた。


「何しに行ったんだ?」


 ……


「ティアナさん!」

「……アレン殿」


 俺が彼女を追いかけて外に行くと、物憂げな顔で彼女は振り返った。


「なんですか?」

「いえ、どこに行くのか気になったので」

「そうですか……」


 彼女の溜息が、白く月明かりに照らし出された。


「ただの散歩です。気にしないでください」

「こんな夜更けに、ですか?」

「……私の勝手ででしょう? 構わないでください」


 やっぱりまだつんとした態度のままだった。


「冷たいですねー」

「当たり前でしょう?」

「なんで当たり前なんですか」

「……彼女の生い立ちを、共に生きたあなたなら、よく知っているはずだ」


 目の前の少女から、剣呑な雰囲気が漏れ出した。

 抑えようのない、やり場のない怒りの感情を感じた。

 ……これは、時間どうこうでは、どうにも出来そうにもないか。


「あなたを彼女が好いているのは、彼女があなたしか知らないからだ」

「……ええ」

「フェリン様は恋をしたことがなかった。おまけに、正直言ってちょろい。初めて優しくされた貴様のことを、忘れられず、そのまま恋をしてしまったのかも知れない」

「……まあ、そんなオチだとは思ってましたけど、ズバリ言いますね」

「言わせてもらおう。それで恋をした相手がエロ触手では、彼女が不幸になる」


 随分な言われようだ。

 俺と結婚するとフェリンさんは不幸になるんですかそうですか。

 ……いやまあ、甲斐性くらいしか、俺と結婚する利点は挙げられないけどさ! でもそーいうもんでもないんじゃないかなぁ!


 ほら、愛とかなんとか、ロマンチックなのがあるじゃん! 俺が言ってもあれだけどさ!


 ……言ってて、ちょっと泣きそうだった。


「フェリン様には、もっと幸せな人生があるはずだ。だから、私は彼女をあなたから解放する。それが、勇者と共に魔王を倒せなかった、無力な青の騎士の――彼女の役に立てなかった、私の今の使命だ!」

「なんともまた、ご苦労なことですねー」

「……あなたは、彼女が離れてもいいのか?」

「ええ。正直、彼女の望むようにさせたいので、好きになった人がいたなら、その人のところに行けばいいと思っています。……ですが」


 溜息一つ。

 この人、割と突っ走りがちな性格っぽいなー。


「彼女はまだ、それを望んではいませんから」

「……彼女をあなたから離すことはない、と?」

「ええ。まだフェリンさんは、俺のそばに居たいと言ってくれてるので」

「っ!」


 きっ! と睨まれる。


「……話し合いじゃ、すみそうにないですね?」

「……そうだな」


 ふっとその剣呑な雰囲気を消して、ティアナさんは静かに告げた。


「……明日、私と決闘していただきたい」

「条件は?」

「私が勝てば、フェリン様を連れ帰らせていただく」

「俺が勝てば?」

「その時は、私を、煮ようが焼こうが好きにしてくれて構わない。フェリン様は、彼女の意向に従っているのなら、あなたの家にいようと、私は何も文句は言わない」

「ふむ……」


 女騎士を好きに、ねぇ……。

 それって、あれですか。

 伝説の「くっ、殺せ!」を生でやれと。エロ触手の本分を思う様発揮しろと。成る程成る程……たまりませんなぁ……。


 ……勿論冗談ですよ? ほら、俺って一応(変態)紳士ですし。


「いいでしょう。その決闘、うけてたちます」

「……そうか」


 それだけ呟いて、ティアナさんは歩き出した。


「明日に備えさせてもらう。話はここまでだ」

「はい」


 何はともあれ、明日だ。

 ……決闘、ねぇ。

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