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第十七話

 一旦少し落ち着かせ、リビングで話を聞いてもらった。


「……と、まあ、そういうわけなのよ」

「――認められません!」


 コドクさんから説明を受けたティアナさんが、フェリンさんに食ってかかった。


「触手となんて、絶対に認められませんよ!」


 ……そりゃそうですよねー。

 俺だって、自分の知り合いが触手と結婚したいだなんて言い出したら、全力で止めると思うし。

 だが、俺が納得しても、フェリンさんは納得していないらしい。


「……なんで?」

「だって、触手なんですよ!? 女性を無理やりに犯して孕ませるような、最低の魔物なんかに、勇者を任せられません!」

「アレンは、そんなことしない」

「なんの確証があるんですか! それで万が一のことがあったら!」


 ヒートアップしていく二人。

 フェリンさんが、だんだん不機嫌になっていくのが分かる。


「ない。絶対」

「絶対って……! そんな、言い切れるわけないでしょう!」

「確かにそうかもしれない」

「だったら!」

「それでも、もう勇者じゃないわたしと、あなたは関係ない。あなたが決めることじゃない」

「っ!」


 静かに、しかし怒りを滲ませたその一言に、ティアナさんは言葉を詰まらせた。


「勇者、様……」

「違う。わたしはもう、勇者じゃない」


 搾り出すようなティアナさんの声を、ぴしゃりと遮るような、フェリンさんの声。


 ふいっと視線を彼女の目から放し、フェリンさんは言い放った。


「……もういい。体調が元に戻ったら、帰って」


 それだけ言って、彼女はリビングから出て行った。


 真っ直ぐな拒絶の言葉に、ティアナさんはうつむく。

 そしてキッと俺を睨む。


 ……俺を睨んでも、どうしようもないですよ。

 というか、ものっそいダメージ入ってそうだよな、今のセリフ……。

 どう聞いたってティアナさんのセリフ、フェリンさんを心配してのセリフだったし。


 でも、フェリンさん怒ってたよな。

 あれって、好きな人の事を悪く言われたから怒ったってことであってるのか?


 って、それって嬉しいような恥ずかしいような、申し訳ないような……。


 額に手をやり、溜息一つ。


 とりあえず、ティアナさんの乱入は、フェリンさんの混じって安定しかけた日常を、十二分に掻き乱すものだった。


 ……


 様子を見ようと、フェリンさんの部屋を覗くと、フェリンさんが枕に顔を埋めていた。


「……何してるんですか?」


 と聞いても、


「失敗した……」


 とだけ言って、また黙り込んだ。


「さっきのティアナさんとの話ですか?」

「ん……」

「……言い過ぎたって思ってるんですか?」

「……ん」


 小さくだけど、ちゃんと俺の質問に答えてくれる。

 この調子で、上手く話を聞いてみるか。

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