第十五話
「はぁ、はぁ――」
顎から汗が滴り落ちる。
閑静な住宅街。そこには不釣合いな青い鎧。
ポニーテールにした金髪と碧眼。
凛とした美貌。
腰に挿した長剣。
紛うことなき、女騎士がそこに居た。
「後、すこ、し――」
ふらふらと、おぼつかない足取り。
よくよく見れば、その目元には濃い隈が見て取れた。
余程疲労しているのだろう。
その瞳に宿る光は、どこか虚ろだ。
「勇者、様……」
その言葉を最後に、どさりと彼女は地面に突っ伏した。
……
で、その一部始終を見た俺は、それを放っておくわけにいかないわけである。
警戒して監視用の魔法を使っていたのだ。
「……転移してきた反応があったから、何が来たのかと思えば」
故郷の人間だった。
しかも恐らくフェリンさんの関係者だ。
ばっちり勇者とかそんなワードが聞こえてきたのだ。
「フェリンさん。一緒に来てください」
「?」
首を傾げるフェリンさんと一緒に外に出た。
我が家の目の前で、女騎士が倒れている。
「! ティアナ!」
女騎士を見たフェリンさんが驚きの声を上げる。
「やっぱり知っていますか。どういう人なんですか?」
「……勇者だったころに、一緒に旅をしていた人」
「ああ、付き添いの騎士ですか」
やっぱりフェリンさんの知り合いだった。
見た感じはとても弱っている。
転移の魔法を感じたが、そもそもこの女騎士から魔力をほとんど感じない。ほぼゼロといっても間違いではない。
つまり、送られてきたか、無理やりに魔法を使ったか。
この消耗具合から察するに、恐らく後者なんだろうな……。
「随分、無茶をしたようですね……っと」
鎧を着たままだが、今脱がすのもあれだし、そのまま背負った。
この身体、いつもリミッターをかけているが、それでもこれくらいは問題ない。
「アレン……」
「大丈夫、ちゃんと治します。これでも回復魔法は得意なんですよ」
「……ん、お願いする」
ぺこりと、フェリンさんが頭を下げる。
「ええ、任せてください」
……
空き部屋のベッドにティアナさんを寝かせた。
「回路接続。権限行使――」
回復の全権を呼び出す。
彼女の魔力を回復させる。
「――お終いです」
ものの数瞬でことは片付いた。
これで彼女の魔力は通常値に戻ったから、後は無理に引き出して消耗した分を、ゆっくりと回復させれば問題ない。
流石に、過度のストレスでダウンした意識までは、魔法で戻すよりも、自然に任せたほうがいい気がする。
「ぁ、うぁ……」
呻き声。
どうやら、少しうなされているようだ。
フェリンさんが心配そうにその様子を見ている。
「……濡れタオルとか、持って来ておいたほうが良さそうですね」
「もう持ってきたわ」
彼女の額の汗を見て、ぼそりと呟くと、コドクさんが部屋に入ってきた。
暫くは、交代でティアナさんの面倒を見るしかないだろう。




