第六話
「いい? お嫁さんたるもの、掃除洗濯料理なんかの家事は、完っ璧にこなしなさい?」
「ん」
なにやら力説するコドクさんに、力強く頷くフェリンさん。
「いやあの、何してるんですか二人とも?」
「え? ああ、花嫁修業よ。一応ご主人様と結婚したいみたいだし、だったらしっかり家事やらなにやら全部叩き込んで、わたしは楽させてもらうわよ」
「ええー……」
花嫁修業とか言いつつ、ばりばり私欲まみれなんだけど。
つか、ご主人様の嫁さん候補に家事任せて楽しようとか、それどうなんですか。そこの(駄)メイドさん。
「ところでコドク」
やる気満々といった表情のフェリンさん。
一体何を聞く気なんだ?
「うん?」
「夜の営みについてもご教授して欲しい」
「「ぶっ!?」」
コドクさんと二人同時にむせた。
ふぇ、フェリンさんっ!?
あんたいきなり何を言い出すんですか!?
「戦いばかりだったから、あまり知識がない」
「うん、フェリン。後でしっかりと教えてあげるわ。今ここでだと、変態がいつ暴走するのか分からないもの」
「そこまで言いますか」
なかなか手厳しい(駄)メイドだった。
「大体、俺を変態扱いしますけど、俺が世間一般で言うところの変態だと、本当に思ってるんですか?」
「エロ触手が何を言ってるの?」
「エロ触手でも、紳士かもしれないじゃないですか」
「変態紳士かしら?」
「ただのダンディーな老紳士ですよ」
「ご主人様の顔で、ダンディーとか言ってたら、世のダンディーファンの皆さんに八つ裂きにされつわよ?」
「……ダンディーファンって、そんなに恐ろしいものでしたっけ?」
ちょっと記憶と違う気がするが、とりあえず八つ裂きは嫌なので謝っておこう。
ダンディーが好きな方、ほんとすいません。
「まあ、ダンディーでなくとも、俺は変態じゃないですよ」
「どうかしらね?」
「わたしはアレンが変態でも、一向に構わない」
フェリンさん。そこは普通にフォローを入れて欲しかった……。
……
結論。
俺は変態でもOKらしい。
「少々納得いきませんが、まあいいです」
「納得っていうか、事実なんだから諦めなさいよ」
「…………はい」
やっぱりコドクさんは容赦がなかった。
……
「ねえ、ご主人様」
「うん? なんですか、コドクさん」
「あのさ、結局どうするの?」
「はい?」
「フェリンのことよ」
「昼間、なんかのりのりだったじゃないですか」
「それとこれとは話は別よ。結婚するの? しないの?」
コドクさんの質問はもっともだった。
その答えを見つけるために、今こうして生活しているのだ。
だが、
「その答え、もう出さなくちゃダメでしょうか?」
「そうまでは言わないけど……あんまりのんびりしちゃ駄目よ。あの子の時間は、あなたよりも何百倍も短いんだから」
「分かってますよ」
知っている。
理解している。
世界創生から生きてきたのだから。
この世界の出来事の、全部が全部、俺にとっては一瞬の夢でしかないということを。
「……となると、歳の差が凄まじくなりますか」
「そんなこと、とっくに分かっていたでしょ」
「いや、そうなんですけどね。やっぱり、目を逸らしたくなる現実だってあるじゃないですか」
「逸らしたってなくなるわけじゃないわよ?」
「ごもっともです」
やっぱり、我が家のメイドは手厳しかった。




