プロローグ0
はい、新作です。
世界はその日から動き出した。
創造主が寝る間も返上し、作り上げたその世界は、実に美しく、そして多くの可能性に満ちていた。
多種多様な生命が最初から存在し、それらの中には、ほんの僅かに、世界に干渉する顕現を持つ者さえ存在した。
作り上げた創造主ですら、この愛しい世界がどうなっていくのか予想がつかなかった。
想定外の存在が生まれること。
そしてそれを楽しみにしていた。
その期待は、予想よりずっと早くに満たされた。
……
エロ触手という生物がいる。
人型の生物のメスを襲い、無理やりに生殖するという、極めて醜悪な生態の生物である。
生殖に特化した彼らは、世界の始まりからその本能に従い、メスを探し出した。
多くの子孫を残し、種を保存することを、彼らは自分達の責務であり、至福だと理解していたのだ。
だが、その本能に待ったをかけた個体がいた。
元来、完璧な存在など有り得ない。
創造主ですら、その例外ではなく、創造主が作った世界もまた、例外ではない。
綻びは、一体のエロ触手の、異常な理性と知能と知識として顕現したのだ。
そのエロ触手は、自身の本能を理性で封じ込み、思案し、結論を出した。
それは本来、彼らにはありえぬ思考。
すなわち――
(ただひたすらにグータラしていたいなぁ……。正直、メスを犯すとか、それ下手したらオスやそのメスに殺されそうで嫌だし)
――生殖活動の放棄と、個としての存在の維持だった。