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チラシの裏

「どうしよう……。お兄ちゃん……」

 腰が抜けたのか咲が床にペタンッと座り込んだ。

 さっきまで軽い気持ちで生活をしていて、身の回りの充実ばかりを考えていた。けれど、本格的に動き出さねば万が一の事態がすぐそこまで来ていそうだ。

「あ! お兄ちゃん、紙の裏にも何か書いてあるよ!」

 咲が座り込んだ事が幸いし、裏面に気が付くことができた。思考が働いていなかったけど、なんとか持ち直す。

 俺は咲にも見えるようにしゃがんでから紙を裏返した。

『食事処』……ゴブリン銅貨一枚。

『武器屋』……ゴブリン銅貨一枚。

『防具屋』……ゴブリン銅貨一枚。

 と施設が並んでいる。


「ゴブリン銅貨ってなんだ?」

「倒した時に手に入ったコレかな?」

 咲がポケットから五〇〇円玉サイズにゴブリンの顔が押された銅コインを出した。

 俺はゴブリンを倒しに行かないから見たことがなかっただけか……。

「きっと一位の奴らと俺たちには決定的な違いがあるはずだ」

『防具屋』のさらに二個下に気になる文字を見つけた。

『ゴブリンダンジョン』……ゴブリン銅貨三枚。

 攻めてきたゴブリンだけを処理していた俺たちはこれを利用しなかったから順位が高くならなかったのか?

「ダンジョンを購入するか……?」

「『薬屋』も買っておく?」

「そうだな。もしもの場合は必要だよな」

 |『ゴブリンダンジョン』《ゴブリン銅貨三枚》と『薬屋』(ゴブリン銅貨一枚)をそれぞれ購入。


 ピーーーーーーーーー!


「咲! 薬屋が出現したのかもしれない。警告音で鳴らしているのかも。急いで見てきてくれ」

「うん。わかった」

 咲は立とうとしても力が入らない足をバンバンと叩いて気合いを入れた。

「よし、私は立てる! 私は動くんだ!」

「手伝うにゃん!」

「猫タン、ありがとう」

 猫タンに掴まって、二人三脚のように歩いて行く。

 フラついているのは、仕方ない。まだまだ中学生だ。

 俺だって動揺は隠せない。人って三〇秒で死ぬんだな……。


「薬屋が家の横に出現してた。童話の『三匹のこぶた』のワラの家だったよ」

 レベル一がワラの家で、こちらもどんどんレベルアップをするのか?

「次の新薬までゴブリン銅貨一〇枚だって……」

「利用すれば利用しただけレベルアップしそうだな。『食事処』って必要か?」

「お兄ちゃんはご飯を出せるから必要ないだけでしょ? 普通は食料不足になるんじゃない?」

 納得。『武器屋』と『防具屋』も同じか……。


「マスター! あれは保護対象でよろしいですか?」

「あぁ、味方だ」

 確認が終わった隊長が部下を引き連れて外へ向かう。


 俺は『ゴブリンダンジョン』の検証を始める。

「あ、隊長。兵隊を一体貸してくれ」

 隊長が怪我をしていない部下を選んで、寄越す。

 強さがわからないので、入場料のゴブリン銅貨一枚を兵隊に持たせて進入させた。

 マップはレベル一から動かせない。クリアしないと次のマップを選択できないシステムなのだろう。

 兵隊が『ゴブリンダンジョン』の扉を開けて、入りすぐに出てきた。

 だが、兵隊の手にはゴブリン銅貨が七枚もあった。


「もしかして中と外では、時間の流れが違うのか?」

 もう一度同じ兵隊に進入させる。

「マスター。時間制限があり再入場できません」

 なるほどな。無限に入る事ができないからこそ、女子寮の数の暴力が天下を取れるわけだ。

 分かりやすくさっきの兵隊を兵隊Aとして、別の兵隊Bに『ゴブリンダンジョン』に進入させる。

 やはりマップ一をクリアしたからマップ二を選択出来るようになった。

 入場料はマップの数字と同数が必要なのか、今度は二枚。

 やはり、兵隊Bは入ってすぐに出てきた。


 今回は無傷とはいかず、左腕がなくなっている。ライフル使いじゃなく、剣兵を送り出しておいて良かった。この場合の盾は必要経費だ。

「レベル的にギリギリだったかな?」

 安全マージンを考えると、作品レベルとマップレベルは同じ数字じゃダメか。

 ここから先は作品レベル三で、マップ二に。


 今度は砂時計を持たせて、進入させようと思う。

 普通の小型の砂時計だが、設定で『六時間計』とした。きっとサイズの有無に関わらず、一回ひっくり返すと六時間計れるのだろう。


「中のモンスターを倒し、この砂時計が落ちきってから出てきてくれ」

「イエッサー!」

 兵隊Cが砂時計を小脇に抱えて扉に入る。

 六時間でも兵隊A、Bと同様に一瞬で出てきた。

 調子に乗った俺は砂時計を四回。つまり丸一日に挑戦する。

 兵隊Dが入って行く。


 ……。


「あれ?」

 出てこない……。

 どういう事?

 やられた? いや、さっき出てきた作品レベル三は無傷だった。身体能力が同じなら生還はできるはずだ。

「あ! 私わかっちゃった」

「兵隊が戻ってこないわけか?」

「うん」

「教えてくれ」

「きっとネジ巻きが途中で切れたんだと思う!」

「は? お前たちって自分たちでネジを巻いていたのか?」

「一二時間おきにペアを作り、巻いているであります」

 兵隊Aが俺の疑問に答えた。

 知らなかった……。最初しか巻いてなかったけど、形式的な事だと思っていた。

 六時間が一瞬なら時間経過はないと見るべきだな……。


 梯子(はしご)作って(描いて)玄関の吹き抜け上の窓から外に出撃できるようにした。

 他には(くわ)持ち農夫のブリキおじさんを描く。

 模造紙サイズで作ったから、兵隊よりも強そうだ……。

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