第漆話 『半人半妖』
「まず最初に聞きたいのが何故事件を起こしたって事ね。人間と妖怪のハーフばっかり狙ってたみたいだけど。」
それを聞いた俺はこう質問する。
「人間と妖怪のハーフ・・・?」
「人間と妖怪の間に生まれた人の事よ。半人半妖ともいうわね。」
「むぅ。私も・・・その、人間になりたかったの。恥ずかしながら。」
ユエは照れくさそうに言った。
「あら、やっぱり可愛い一面もあるのね。」
「う、うるさい・・・。」
「しかし貴方みたいな人も珍しいわね。自分は妖怪になりたくなかったみたいな。」
「その通りよ。ヴァンパイアって結構不自由なのよね。夜にしか動けないし、血が足りないと理性が暴走するし。」
俺がまた質問を挟む。
「ちょっと待て、半人半妖の血で人間になれるのか?」
「ええ、とは言っても人間に少し近づけるだけだけど。後いきなり人間の血を入れると発作が起きるのよ。」
「これこそバランス、というやつね。」
俺は難しそうな顔をした。
「他に聞きたいことがあるのだけれど、いいかしら?」
「どうぞ。」
──────。
「・・・というわけよ。理解できた?」
「ええ、なるほどね。質問はそれだけだわ。」
桜花は少し歩いた後、振り返ってこう言った。
「あなた、これからどうするの?正確には牢屋行きだけど・・・。」
「う、それだけは勘弁して欲しいわ。」
それを聞いた桜花は、ふふ、と笑う。
「やはりそう言うと思ったわ。一つだけ条件があるわ。」
その時、俺もまさか、とピンと来た。
「もしや・・・いや、まさかな。」
「私の仕事、手伝ってくれる?」
予想的中で首を落とす俺。
「・・・いいわ。許してくれるなら何でもしてあげる。」
「交渉成立ね。縄は解くわ。」
縄を軽く引っ張るとすぐに解けた。
「で、これからどうするんだ?事件はまだ解決されてないぜ?」
「大丈夫、私に任せて。あと、3階に行くわよ。」
桜花は3階へ向かう。
「あ、ああ。」
「あ・・・みなさん無事でしたか。」
「あのヴァンパイアは退治したわ。もう大丈夫よ。」
桜花はそう言って微笑む。
「立てるか?」
俺は女性に手を差し伸べる。
「は、はい。」
「ホテルの外へ出るわよ。」
──────。
「皆さん、ありがとうございました。」
女性は頭を下げる。
「いえいえ、ああいう妖怪もいるみたいだから、気をつけろよ。」
俺はそう言った後、桜花は女性に近づく。
「あなた、人妖ハーフね?」
「あ…はい。父が人間、母が妖怪でした。」
その時、桜花は悲しい顔をする。
「・・・やっぱりね。貴方みたいな特別な人は狙われやすいわ。気をつける事ね。」
「分かりました。気をつけます。」
彼女は再び礼をした後走って行ってしまった。
「桜花…。」
俺は桜花の顔を見てそうつぶやいた。