第陸話 『タダの妖怪 vs ヴァンパイア』
「来たわね。」
黒と桜花が3階から飛び降りてくる。
「なるほど、なかなか広い舞台じゃないの。これなら思いっきり暴れることが出来るわね。」
桜花は軽く腕をならす。
「ここにいた人はみんな逃げたわ。この方がやりやすいでしょ?」
「もちろん。でも惜しいなぁ〜、投げるって結構爽快なのよね。」
「あんたは楽しいかも知れないけど、私はちっとも楽しくないわ。」
そう言ってユエの手から赤い剣が現れた。
「とりあえず…腕を一本貰おうかしら。」
桜花に向かって飛びかかり、剣を振り下ろす。
桜花はバック転で避けた。
「肉弾戦が得意な私は武器で襲われるとちょい不利なのよね…!」
「ほらほらどうした!?あんたの力はそんなものじゃないでしょう?」
「そうね。だったら本気で行かせてもらうわよ。」
その瞬間桜花はその場から消え、ユエの目の前に現れた。
「速───!」
ドガッ!!ユエに足蹴りを入れる。
「くっ・・・。はっ!」
ユエの目の前には腕に炎をまとった桜花がいた。
「観念なさい───!」
腕にまとった炎はユエの体で爆発する。
「きゃあ!?」
ユエは爆風により吹き飛んで行く。
「す…凄い。」
「ふふふ、どうだったかしら黒。それじゃあそのナイフで───。」
その時、ユエが起き上がった。
「・・・油断したな!」
ユエは桜花にめがけて剣を投げる。
「危ない!」
俺は桜花を庇おうと目の前に飛び出た。
ブシュッ…。
何かが刺さったような音が出る。
「痛く…ない?」
俺の目の前には腕に剣が刺さった桜花が立っていた。
「無…事…?」
腕から血がボタポタと垂れている。
「ば…馬鹿野郎!何考えてるんだ!」
「バカなのは貴方の方じゃない…。余計な事をするから…くっ。」
桜花は倒れる。
「桜…花?」
「あははは!やったわ!」
「桜花、桜花!」
そしてユエは高笑いを止め、黒の方に顔を向けた。
「さて・・・次はあなたの番よ。」
ユエは黒にゆっくり近づいてくる。
が、その時───!
「油断したのは貴方の方よ!」
なんと、ユエの後ろに桜花がいたのだ。桜花は腕に刺さった剣を引き抜く。
「お、桜花!」
「い、いつの間に!?」
「武器っていうのはね・・・こうやって使うのよ!」
剣に炎がまとう。桜花は上空へ飛び上がり、手から弓が現れる。
「剣を矢代わりに───!」
弓の弦に剣を引っ掛けて引き、一気に放つ。
ドスッ!
ユエの体に剣が突き刺さる。
「い、いたい!」
ユエは仰向けに倒れる。
桜花はユエの上に降り立った。
「・・・トドメよ。」
桜花が腕をお聞く振り上げた時、ユエは強く目をつぶる。
…ピシッ
桜花はユエにデコピンをした。
「もうこんな事したら"めっ"よ?」
桜花は静かに微笑む。
「・・・え?」
「さて、黒。そのナイフを彼女の寿命の集点に刺すのよ。大丈夫、死にはしないから。」
「わ、分かった。」
俺はユエの体にナイフを刺す。
ユエは気絶してしまった。
「何が起きたんだ?」
「そのナイフには寿命を操作する能力があるのよ。」
「寿命を操作する能力・・・お前が持っていなくていいのか?」
「誤ったら死んでしまうわよ。寿命が見える貴方にはとても便利でしょう?」
俺は軽く頷く。
「そうだ、桜花。傷は大丈夫なのか?」
「平気よ。私の治癒力は異常だから。」
そうキッパリと言う。
数分後、ユエが目覚める。
「う…ん。」
「あら、目覚めたかしら?」
「…!! 桜花!」
「まだ反抗する気みたいね。」
桜花は手から縄を出す。ユエに向かって放つと勝手に縛られた。
「く…。」
「さて、貴方に聞きたい事が色々あるの。いいかしら?」
ユエは軽くため息をつく。
「・・・何が聞きたいの?」
「・・・。」
俺はただ見ているだけしか出来なかった。