第肆話 『クイシンボウヨウカイ』
「はー、疲れた〜。」
ソファーの上に寝転がる桜花。
「ん・・・そんな感じに見えないが?」
「ひどいよー今日は貴方を探しまわったんだからね!」
「あ、ああ。すまん。」
「なんだか眠くなっちゃった。少し寝るわね。夕飯の時に起こして。」
そう言って数秒で眠り着いてしまった。
「はぁ〜。俺も散々だったってのに。」
俺はため息をついて椅子に座る。
「永遠奏界のバランスねぇ…。こいつは一体今まで何をしてきたんだろうな。しかし…あのとき本当にナイフが俺の体に刺さったはず。だが本人は刺していないとか。これも能力という奴なのか?」
疑問に思いながら、桜花の顔を見る。
「こいつ…良い寝顔しているんだな。さっきのことは何も言えん…。」
その後、俺は時計を見て顔つきを変えた。
「そうだ!飯作らないと!」
俺は立ち上がる。台所へ料理を作りに行った。
──────。
「よしっ出来た。」
「はっ牛肉の匂い!」
桜花が急に起き上がる。
「・・・起こす前に匂いで起きやがった。」
「あぁ・・・私は肉類が大好きなんだ…。特に牛肉とかステーキ!」
「・・・そうですか。食うのは久しぶりか?」
「5ヶ月ぶりだ!!!」
桜花は口調を変え、瞳を輝かせてそう言った。
「それじゃあ、その久しぶりの肉とやらを召し上がろうじゃないか!」
「のぞむところだ!」
そうして二人は食べ始めたのだが、桜花は5分で食べ終わってしまった。
「うん、美味かったわよ。」
「早ッ!もっとよく噛んで食べないと消化に悪いぞ。」
「何、超速で噛んでいるから大丈夫。妖怪でも唾液はちゃんと出しているしね。」
「いや…そう言う問題じゃないだろ。」
俺は苦笑いをする。
食べ終わった黒は、食器を片付けていく。
「バランスを保つと言っているが、標的は決まっているのか?」
「ええ、貴方も聞いたことがあるでしょ?最近夜になると人が大量出血で死んでいた・・・という事件よ。」
俺は朝、月達が言っていたことを思い出す。
「…あの時の奴か。」
丁度片付け終わったので、桜花の隣に座る。
「私は推定時刻も黒幕も全て知っているわ。・・・後もうちょっとね。」
「ん・・・もしかして。」
不安な顔をする。
「ふふっもしかしてよ。出るわ。」
「ぐぐぐ、やっぱり…。」
俺はガクッと首を落とした。
「そう落ち込まないでよ、貴方の眼の力…。見せてもらうわね。」
「・・・お前と一緒にいれば俺は死ぬことは無いのか?」
「そうね。でもその時の場合によるわよ。」
「そうか…お前に頼ることにするよ。」
微笑んだような眼で桜花はこっちを見た。
「あら、勘違いしないでよね。あなたも戦ってもらうわ。」
「何ぃ…!?」
体にイナズマショックが走ったように黒は固まった。
「ここを出る前にある物を渡しておくから待っててね。」
「ん?ああ。」
「…もうそろそろね。私は着替えるから、ちょっと廊下に出てくれる?」
桜花は笑顔でそう言った。
「へぇ…妖怪にも恥っていうのがあるんだな。」
「いいから出てくれる?」
「・・・すいません。」
笑顔の桜花だが、その裏に殺気が感じとれた。