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第弐話 『死の境界と物質の寿命』

 ゴーン…ゴーン…


 いつもこの鐘の音で起こされる。

「ん…朝か。」


 外は子供達の声で賑わっている。


 俺は洗面所で顔を洗っていた。


 二人の神が創造したと言われている永遠に終わりの無い世界───『永遠奏界』。

 

 この世界には人間と妖怪が暮らしている。


 昔の伝説が信じられないくらい平和である。

 

 ───そういう俺も普通に暮らしてるんだけどな。

 

 

 

 俺、『七刹 黒』はこの世界に生きる人間の一人。極普通だが特殊な能力がある。


 それは「対象の物質の寿命が見える」という能力だ───。




 通学路を歩いていると何本か桜の木が見れる。


「桜か…。風情があるな。だが・・・。」

 舞い散る花びらを手に取る。


「この桜も、いずれは全て散って儚く枯れてしまう…。次の春まで。」


 手に取った桜を握りしめる。俺は5秒ほど深く目をつぶり、また歩き出した。


 数分後、俺たちの通う学校にたどり着く。


「ん?」


 3階でこちらを見ている女子がいた。


「あれは…「十六夜 蓮華」か。」

 妖怪だが、心優しい先輩で頼りにしている。


 俺は教室に入る。


「よお、七刹。悪いが今日からお前と俺はライバル同士ってわけだ。」


「・・・何のことだよ。」


 こいつの名前は「東乃 月」俺の昔からの友達だ。


「おいおい、朝先輩に見つめられていたのはどこのどいつだ?」

 月はにんまりした顔でそういった。



「二人とも仲がいいんだね。」


「森風 美香」が笑顔で声をかけてきた。


「おお、美香か。実はなこいつ…。」


「アホか。訳の分かんないこというな。」


 俺はツッコミを入れた。


「ハハハ、しかし最近は平和と言われたこの世界でも物騒なことが起きてるらしいな。」


「ああ、お前のせいで俺は平和な気分になれない。」


「そうか、だったら今から幸せな気分にしてやろうか?」


 月はニヤリと笑う。


「…いやな予感がするのでやめておく。」


 苦笑いをしながら黒は断った。


「もうっ違うよ。夜になると人が大量出血で死んでいた、という事件が頻繁でね。」


 月が繋げる。

「しかも人の手で殺したような形跡が無いんだよ。妖怪の仕業だとか噂されている…。」


 俺は少し驚いた。妖怪がそんなことをするとは予知もしなかったからだ。


「それはまた恐い話だな・・・。」


 月は首を傾げる。


「ん…。ニュースとかで話題になっているのだが、知らなかったのか?」


「俺の家にはテレビというテレビが無い。勿論、新聞も来ないぞ。」


 堂々と言い張ったが、無論自慢出来ることではない。


「そっか、確か七刹君って一人暮らしだったね。」


「まあ、お前も気をつけるこったな。」



 授業中、机を見る。


「・・・二年。」


 自分の机は寿命が二年しか無いと悟った。


 いつでも見えるというわけではないが、寿命が見えるということは


 とても恐ろしく、


 気持ち悪い。


 対象の物質に集中すると寿命が見えてしまう為、瞬きをすることが多かった。


「くっ・・・。」


 一瞬、頭痛が起きた。俺は机に顔を伏せ、ゆっくり眠ってしまった。

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