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繰り返されるセカイ  作者: めろう
第一章
9/12

第八話 紛諍

しかしまぁ……今日はよく過去を思い出すもんだ。

いいモノではないからあまり思い出したくは無いんだが。


こういう時は寝るに限る。

寝て、忘れるのがベストなのだ。


壁にもたれかかって座り、腕を組んで寝る体制を取る。すると篠原が、さも不思議そうに話しかけてくる。

「あれ、秋山君寝ちゃうのかい?」

返事をするのも面倒なため、無視をして肯定を示した所、あからさまシュンとした顔をする。

「おいおいリュート、女の子連れ出して……それも転校生をだぜ!転校当日に連れ出して一人寝ちゃうのかよ!」

俺が悪いように言ってくるが、これも無視を決め込む。

下手に何か言うとコイツは調子に乗るのだ。


「ねぇね、秋山君。お話しよう?」

無視。

「おいリュート。お前そこまでタマなし野郎だったのか?」

無視。

「ほら、こんなにも天気がいいんだよ!一緒に遊ぼうよ!!」

無視……。

「ほら、可愛こちゃんが誘ってくれてるぜ!起きろ!!」

無……視…………


「だぁあ!うるせえなぁ!静かに出来んのか馬鹿ども!!

篠原!お前は勝手についてきたんだろ!遊ぶなら勝手に遊べ!

黄緑!お前は黙ってろ!口を開く前に15分黙ってろ!」

ハァハァと息を切らすほど怒号してしまった。

なんでコイツらは初対面なのにこんなにシンクロしてんだ。


「何もそんなに怒んなくてもいいだろー?」

ふてぶてしく黄緑がぼやく。

確かに、少し言いすぎた。

気が高ぶっているんだろうな……落ち着かねば。クールになれ秋山龍人。


「あー……ちょっと今嫌なこと思い出しちまったんだよ……ほっといててくれねぇか?」

正直に話してこれ以上のストレスをカットする。

今の俺には余裕がない。

それがよくわかるからこそ、せめてコイツらにもこれ以上嫌な思いをさせないようにしなければと考えたのだ。


しかし、黄緑は空気を読んではくれない。


「何?何を思い出したの?教えろよリュートぉ」

……今日の黄緑は何時もよりウザかった。


「はぁ……お前が新学期でテンション上がってるのは分かった。分かったから頼むから静かにしておいてくれ」

クールに……冷静に行こう。

新学期そうそう喧嘩する訳には行かない。

「あぁ!なるほどねっ!!お前の母さんのことか!!」


「おい……黄緑」

聞き捨てならない。

たまに空気読めない事があるが、ここまで酷いのは初めてだ。

これ以上馬鹿なことを言うなら殴ってでも黙らせなければならない。

「何怒ってんだよ!!どうせママに殴られたこと思い出してピリピリしてんだろ?」

「黄緑……!テメェ!!」


こいつ、どうしたんだ。

なんでここまで俺を挑発する。

頭に血が上るのが分かる。コイツの顔面を殴りそうになるのを、なんとかして抑える。

頼むから黙っててくれ。

これ以上俺を……怒らせないでくれ。


「どうした?図星なんだろ?なんだ、怒ってんのか?」

明らかに様子がおかしい。が、今の俺には冷静になる余裕が無い。

そう、図星だからこそ。俺は茶化されてるのがムカつくんだ。

拳に力が入る。

怒りが、感情がコントロールできない……!


「秋山君!」

ハッと我に返る。

そうだ。ここには篠原もいたんだった。

だがしかし、俺の母親について知らない奴がいる前でその話をするのが、尚更頭にくる。

「秋山君、落ち着いて。今の夏岡君は様子がおかしいんだよ!」

ンなこと分かってる。

分かっているがそれがなんだ。


黄緑は挑発的な顔で左頬を指さす。

「どうした?殴んないのか?ホラホラァ……ココに一発かませよ……オラァ!」

切れた。俺の中で大切な何かが。

反射的に右拳が、黄緑の頬を殴り抜ける。

と、思っていた。


篠原が、俺の手首を掴んでいた。

「どけっ!」

篠原の手を振り払おうとする。

しかし、右手は固定されたかのようにビクともしない。

「落ち着いて、秋山君」

ヤケに冷静な篠原の目は、威圧を秘めた鋭いものだった。


「邪魔ァすンなよぉ……転校生ェ!!!」

左拳で篠原に殴りかかる黄緑。声を上げようとする前に、篠原はもう片方の手でその拳を静止する。

こちらも振りほどこうとしても、どうにも難しい様子だった。


「夏岡君は正気じゃない。秋山君、感情に飲み込まれてはダメだよ」

まるで全てを知っているかのようなその言葉に、そしてこの力に、俺はただ言葉を飲み込むしかなった。


夏岡が動く。

先程からポケットに入れていた右手を引き抜き、左手を掴んでいる篠原の手を掴もうとする。

しかし一瞬篠原がはやい。

手を離し、黄緑の顎に酔盃手(手首を曲げ、鶴頭の部分で打撃)を当てる。

そして俺を引っ張り、黄緑と距離を取る。


「……お前、凄いな」

篠原は軽くドヤ顔をし、黄緑に向き直る。

「夏岡君が正気じゃないのは、感情に飲まれているからなんだよ」

真面目な顔で説明をしてくれるが、至極当たり前な事でなんの説明にもなっていない。

「負の感情を増幅させる、あるモノが夏岡君に取り付いてる……それさえ取れば、元通りの夏岡君になるはずだよ」


なるほど、わからん。

「というかなんでお前はそんなに詳しいんだよ!」

「それは……それが私の使命だからだよ」

なるほど……。


説明になってねぇんだよ!!!

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