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繰り返されるセカイ  作者: めろう
第一章
7/12

第六話 屋上

屋上の扉を開けると心地よい風が吹き抜ける。

空は雲一つない快晴。この空の下布団で寝れたらどれだけ良い事か。


「ん~いい天気だね」

後ろで篠原が伸びをする。そのまま彼女はとことこと歩いていき、屋上のフェンス前まで行っては「うわ~高いな~」と感嘆の声を上げていた。


俺はその背中に見覚えがある。

――

「ねぇ……なんでこの世界はこんなにも綺麗なのに…………残酷なんだろうね」

――

そんな切ない言葉を発する、彼女の背中が脳裏に浮かぶ。

「なぁ、変な事聞いてもいいか?」

彼女を一目見てから、断片的に思い浮かぶシーンを、俺はただの白昼夢などとは思えなかった。このデジャヴが、忘れてはいけない何かな気がして、聞かずにはいられなかった。


「ん、なにかな?」

つぐみは振り返り、笑みを見せてくれた。

やはり、どこかで見たことがある。気のせいではない。

「俺は……篠原とどこかであったことがあるか?」

どこかであったことがある……というのもおかしい。そうと言うのも、彼女の姿は断片的なシーンと今とで何一つ変わらないし、今よりももっと親しげだったからだ。

では俺は過去ではなく、未来を見ているのだろうか?

いや、そんなことは……。


篠原はその問いに、驚いたような表情を見せていた。

それと同時に、悲しそうで、でもどこかで嬉しそうな。そんな複雑な表情を浮かべていた。

「……初対面なのに、ほんと変な事を聞くんだね……。ナンパかな?」

そこにあった笑顔は、感情を押し殺すような憂いを帯びたものだった。

何かを知っているのに話さない。そこに使命感や義務感を感じて、俺はこれ以上聞くのをやめておいた。


「……なんでもねぇ。ごめん、ホント変だよな、俺」

ボリボリと頭を掻く。

しまったな。この空気をどうしようか。

あからさまに気まずいこの雰囲気をどう打開するか……。なにかいい話題はないか!!



話題を考えていると、ガチャと扉が開く音がする。

今までの気まずい空気は消え去り、一気に冷汗が出てくる。

能力を使うべきか!?いや、篠原が見ている……。人前でやすやすと使うものじゃないし……!


そんな葛藤を繰り広げていたら音の主が姿を現す。

ワックスで形作った緑がかった金髪。着崩した制服とそのバカみたいなイケメン顔には見覚えがあった。

「……はぁ、なんだ。黄緑か」


夏岡 黄緑(なつおか きみどり)は俺の友人だ。

容姿端麗、成績優秀、運動神経抜群とどこかの出木過ぎた奴みたいな男。しかし実を知るとそうでもない奴である。


コイツは数少ない俺や優虎の超能力を知る者の一人。そして黄緑自身も超能力を有している。【パロディー】(猿マネ)こそこいつの能力。最後に触れた人間の能力(この場合超能力に限らない)を模す能力だ。バスケが上手い奴に触れば上手くなる。頭がいい奴に触れば頭がよくなる。俺に触れば透明になれる。そんな便利な奴なのだ。

ただし、触れるのは右の手のひらでなくてはならない。逆に右の手のひらで触れてしまえば例え模したくなくても模してしまう。使い勝手が難しい能力ではある。

故にこいつはいつも右手をポケットに突っ込んでいるのがデフォルトなのだ。


「なんだ、お前かリュート。あーあ、せっかく触れたくもないのにピッキングが上手い奴に触れたのになぁ……無駄骨じゃねぇか」

「おい、バカ!」

咄嗟に篠原を見てしまう。何を言っているのか分からないような顔をしているが、こいつも中々勘が鋭いため、用心しておかねばならないのだ。


「おっ……と、お邪魔だったか?」

「そんなんじゃねぇよ、餌やった子犬みてぇについてきただけだ」

と、横目で篠原を見る。

「なんだよその紹介は、ひどい奴だな」

頬を膨らませて「ぷんすこだよ」と言っていた。


「ん、その顔は確か転校生の……?」

中々情報が早いな。まぁ転校生なんて一大イベントをこいつが見逃すわけないか。

「うん、私は篠原つぐみ、よろしくね」

「おうっよろしくな、つぐみちゃん!」

こいつ……いきなり名前呼びとは、流石イケメンは格が違った。


「しっかし……転校生をいきなり連れまわすとは……お主も中々やるよのぉ!」

うざい顔でうりうりと肘で突っついてくる。怒りそう。

「だぁら違うっつってんだろ!!突くな!うっとおしい!!」

腕を振り払うと少し離れたところで「おぉ、怖い怖い」とうざい顔をしている。すごく怒りそう。


「ふふっ」

後ろで篠原の笑い声。振り向くと可笑しそうに俺たちを見ていた。

「二人とも仲良しなんだね」

「はぁ……まぁこいつとは付き合い長いからな……」

小学生のころから一緒に遊んできた、幼馴染とも悪友ともいう。



あー……と空を仰ぎ、過去に思いを馳せる。

さっき思い出したくないことを思い出したからか、芋づるのように思い出してしまうのだ。


それは黄緑と出会って少したった後。

コイツと俺が仲良くなるきっかけとなった日の事だった。

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