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繰り返されるセカイ  作者: めろう
第一章
6/12

第五話 不可視

職員室の前に着く。周囲に人の影はなく、気配は後ろにいる篠原だけだ。

「じゃあちょっと準備があるから、ハンカチか何か落としやすいものを貸してくれ」

「落としやすいもの?何をするつもりだい?」

といいつつピンクの花柄ハンカチを渡してくれる。


「まあ詳しい事はいいんだよ。とりあえず、篠原は俺が隠れた後に職員室に入ってくれ。このハンカチを職員室の中に落としておく。それを取りに来たという風に装ってくれたらいい」

「んん……?それなら私がハンカチをわざと落とせばいいんじゃないかな?」

「いや、それじゃあバレる可能性がある。少しでも成功率を上げるために必要なんだ」

篠原は理解が出来ていない様子だった。まあそれも仕方ない。常人には理解できないのが俺の「テク」だからだ。


優虎は人の心の声を聞く超能力を持っている。

それと同じように、俺も俺で超能力を持っているのだ。

【インビジブル】(触れた物を不可視)にできる能力。簡単に言えば透明になれる能力。この能力を使って教師に気付かれないように鍵を拝借しようという魂胆だ。

その為にも自然にドアが開かれなくてはならない。普段なら優虎や他に俺の能力を知る者に協力してもらうか、他の誰かがところを抜けているのだが、今回は勝手が違う。

能力を知らない人物と協力するのは初めてだ。故に成功率も下がるだろう。


「とにかく、篠原は職員室に入って・扉を開けたまま・ハンカチを拾ってくれるだけでいい。その間に俺は俺のすることをするから」

指を折って一つずつ確認する。これを自然にやってくれるだけでいいのだ。

「うーん、腑に落ちないところはあるけど、その3つを自然にやればいいんだね?」

「ああそうだ。細かい事は気にしなくていい」

じゃあ行くぞと言って、篠原にも見えないところで能力を発揮する。

身体はすぐに不可視になり、俺からも手や足が見えなくなる。距離感等があやふやになるが、もうすでに数年間はこの能力を使ってきたため、コツはつかんでいる。


篠原が動き出す。

篠原にも気づかれないように、後ろに追従する。

扉を開けた瞬間、するりと脇を抜けて職員室に入る。そして彼女が目につきやすい位置にハンカチを置き、手早に鍵置き場に向かう。


ここで気を付けるべきはかもしれない歩行をすること。

物に、人にぶつかった時点で存在がバレてしまいかねないからだ。ここであの教師が動くかもしれない、紙の山が崩れるかもしれない。そのような危険察知能力を全体にめぐらさなければならないのだ。


篠原は上手くやってくれている。

慎重かつ大胆に、鍵置き場の前に行き、屋上の鍵を取る。

ここまでは順調だ。


いや、順調だったのだ。


「あれ、篠原さん?どーしたの?」

職員室に聞きなれた声の女性――南野先生が入ってきて、開け放しておいたドアを閉めた。篠原の表情が一瞬固まるのが見える。

くそっ!あと少しで完全犯罪だったのに!!


この計画には弱点がある。

それが南野先生なのだ。

何故か彼女には俺の不可視能力が効きづらい。いや、姿を見られることは無いのだが、勘……というか獣並みに気配を察知する。半径5mが気配を察知する距離。その範囲に入らなければ事を静かに済ますことができるのだが……。


「あ、いえ。先程ハンカチを落としてしまったみたいなので、探しに来たんです」

いいぞ篠原!その調子だ!!

「そっかぁ。で、見つかった?」

「はい、そこに落ちてました」

よし、そのまま手短に話を切り上げて退散するんだ!!

篠原を見守りながら、出口近くに移動する。


「そこ?おっかしいなぁ……私が見たときは無かったんだけど」

しまったな……。流石に目につきやすいところに置きすぎたか。

南野先生は記憶力もよく勘も鋭いため、脆い嘘で出来た壁はすぐに崩されてしまう。

俺ができることは何もない。ここは篠原が何とか切り抜けてくれることを信じるしか……。


「あぁ、落ちてたハンカチが床の色と似ていたので分からなかったんでしょう」

といって、ポケットから床の色に似たネズミ色のハンカチを出す。

ハンカチを複数枚持っていたのか?それも職員室の床に似た物を?いつの間にそんなものを用意したんだ……。

「あ~たしかにこりゃ見つけにくいなぁ。それにしても篠原さん中々渋いハンカチ持ってるね」

「間違えてお父さんの持ってきちゃったんですよ」

うふふと笑う。なんだか俺は篠原さんが怖くなってきたよ。


「では、そろそろ授業が始まっちゃうので、失礼します」

「はいはい~がんばってね!」


篠原がドアを開けたところをするりと抜け、見えないところで能力を解く。

「……そのハンカチどうしたのさ」


その問いに篠原はうふふと、先程のように笑い、

「私はマジックが得意なんだよ」

とどや顔をしてきた。


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