不幸な料理店
悲しいことがあると、ぼくはそこへ向かう。
そこは、様々な不幸な人々が集う、秘密の料理店。
「今日のオススメメニューです」
静かに渡されたメニューに目を通す。
注文し、料理を食べ、外に出た。
お金は払わない。なぜならこの店は"悲しい記憶"を代金の代わりにしているからだ。
だから、料理は食べられるし、悲しいことは忘れられるしで、一石二鳥。
…ただ、
悲しい記憶とともに、何か他の大切なものも一緒に失うと最初に教えてもらったような…
なんだったか、
ああ、もう思い出せないからいいか。
…どうせ、思い出すことすら、
ぼくにはもう、できないはしないのだから。