表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/100

夏28日 マリエッタ 魔道研究員の疑惑

王都からくるという調査員の人数は四人。

ジジさんとニニさんは顔馴染だし、一人は騎士ということだし、荒々しい兵士が大挙して押し寄せてくるなんて事態にならなくてよかったわ。

騎士も兵士ではあるのだけど、品位ある人間でなければなれないらしいから、きっと大丈夫よね。

だけど、最後の一人、魔道研究所の所員って人のことが心配だわ。

どう言ったらいいのか、研究所って怪しい響きがすると思わない?

そこに「魔道」がつけばなおさらよ。

魔法ってもちろん憧れもするけれど、まったく使えない人間からしたら気味悪く思う部分もやっぱりあるのよね。


「魔道研究所の所員の方って、どんな方なのかしら」


教材の整理をしながらノエル先生に尋ねる。

ノエル先生は貴族の出ということもあって、ただの村民にはまったく関係ないような国の機関にも詳しいの。


「魔道研究所の所員と言っても、研究内容は人それぞれなんだよ。

 研究所が掲げている大きな研究テーマには、

 『魔石から魔力を効率良く取り出す方法』、『魔法陣による永久機関作成』、

 『人工魔石の作成』なんかがあるけれど、それ以外の研究をしている研究者も多いんだ」


ノエル先生が今日やった小テストを採点する手を止めて答えてくださった。

あら、ミズキったらまたスペルミスしてるわ。


「それ以外の研究って、どういったものなんですの?」

「そうだなあ。僕が聞いた話だと、ラットに魔力を照射し続けることにより

 魔物に変質するかどうかを研究している人もいるし、

 魔物自体の生態を研究している人もいるって聞いたなあ。

 有名なのは、触手の研究をしている人だね」

「しょく……っ」

「ん? どうかしたのかい?」

「い、いえ……なんでもありませんわ」


あたくしが研究内容について聞いたからではあるけれど、先生の口からしょ……触手なんて単語が出てくると驚いてしまうわ。

あたくしも詳しくは知らないのだけど、触手ってなんていうか……いやらしいものらしいのよね。昔猥談している男の子たちの会話が聞こえてしまった時に、官能小説なんかには触手がよく出てくるって言っているのが聞こえたわ。

魔道研究所は国の税金で運営されているのに、研究費をそんないやらしいものに使うなんて、絶対良くないと思うわ!

そ……それとも……、そういうのって実は結構需要があるから研究されているのかしら……。


「本当になんでもないのかい? 顔が赤いようだけど具合が悪いんじゃないのかい?」


ノエル先生に顔を覗き込まれて、あたくしはぱっと頬を押さえた。

いやだわ、いやらしい顔になってなかったかしら。


「ちょっと熱っぽいみたいですわ。あたくし、今日はこれで失礼します」


あたくしは逃げるように学校を後にしたわ。



家に帰ると、ちょうどリーンがあたくしの家から出てきたところだった。

挨拶ついでにうちに来た用事を尋ねると、お父様に髪のことで相談を受けていたみたい。

髪を生やす魔法なんて、いったい誰が考え付いたのかしら。

もしかしてそういう研究をしている人も、魔道研究所にはいるのかしらね。


「そういえばリーンは、今度村に来る魔道研究所の人について何か知っているのかしら?」


リーンは魔法使いなのだし、研究者について何か知っている可能性もあるわよね。なんて思うのは、魔法を全然使えない人間の勝手な思い込みかしら?

質問した後でそうも考えたけれど、リーンはこくりと頷いた。

そして、


「触手研究の第一人者って言われてる人みたい」


なんて、とんでもない情報を口にした。


「しょ……っ!? 大丈夫なのその人! 子どもたちと接触しないようにしないと!」


女の人たちも危ないかもしれないじゃない!

目が合っただけで子どもができたりはさすがにしないとは思うけれど、なるべく関わらないようにしないと!


「ん……だいじょうぶ、なんじゃないかな。

 わたしも時々、その人が発明した魔法を使うことがあるよ」

「触手魔法を!?」


リーンはちょっとそういうことに無防備なきらいがあるのよね。年頃の女の子なんだから気をつけないとダメじゃないの。

もちろん、その……実はそういう趣味で、個人的に密かに使っているって言うのなら、あたくしがとやかく言う筋合いはないのだけど……。


「あんまりむやみに人前で使ったりしちゃダメよ?」


だから控えめに注意を促したのだけど。


「ん……? だいじょうぶ、だよ。

 今のところ村長さんにしか使ったことないから」

「お父様が触手を!?」


どういうことなの!? お父様が触手でいやらしいことをしているってことなの?

触手は女の人だけじゃなくて男の人にも効果的なの!?


「この前村長さんの頭に、草を生やしたでしょ?

 あれね、本当は草というより触手の一種なの」


どういうことなの!? つまりお父様は頭に触手を生やしていたということなの!?

きょ……狂気を感じるわ……。



落ち着いて詳しく話を聞くと、その研究者は触手の細胞分裂や再生能力などについて研究していて、その力を医療技術に応用したものが表向きの研究成果として一般に広まっているということだった。

なんだ、いやらしい研究者かと思って焦ってしまったわ。

勘違いしたあたくしの方がいやらしい人間みたいで、なんだか恥ずかしいわね。

そうなのね、表向きは医療技術に応用されてるのね。医療なんて立派じゃない。子どもたちが近づいても大丈夫そうな人物ね。

表向きはね。表向きは……。


裏があるってことじゃない!!


やっぱりこれは、厳重注意になりそうね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ