春13日 ヴァニラ 花の日×おまじない=完全勝利!!
恋する乙女はらんらんらーん♪(歌詞どおり)
心揺られてふんふんふーん♪(うろ覚え)
春っていいよね!
明日は花の日。
男の人が女の人に日頃の感謝をこめて、お花やお花をモチーフにしたアイテムを贈る日なの!
近年の贈り物の流行は、お花の形のクッキーやキャンデー。
消え物で間違いはないんだけど、
あたしはできたら、本命の人から花束や、お花をモチーフにしたアクセサリーとかもらってみたいなあ。うっとり。
そう! 感謝を表すイベントであると同時に、
一大告白イベントでもあったりするのです!
「浮かれた春風に誘われて、浮かれた恋人たちが大量発生する季節」、とは親友のルリの談。
「あのうようよ出てくる感じ、まるで虫ね」って言ってた。
でもあたしは! 虫でもなんでもいいから素敵な彼が欲しいの!
お兄ちゃんが無駄に見た目が良いせいか、あたしは周りにブラコンだと思われてるらしいの。変なの。
そりゃ、お兄ちゃんのこと嫌いじゃないし、頼りになるとも思ってるよ。
でもあの無駄に抜け目のないところとか……あと……えーと……
あれ? 他に悪いところ思いつかないけど……
でもでも! あたしはブラコンじゃない!
あたしだって、
恋する乙女はらんらんらーん♪
好きな人の一人や二人や五人くらい、いるんだから!
「五人もいるの?」
はっと我に返ると、向かいに座るミズキさんが、面白いものを見るような目であたしを見ていた。
「好きな人の一人や~から声に出てた」
とは、となりに座るルリ。
ホセが隣町に仕入に行くっていうから、ルリと一緒についてきたの。
あたしたちは仕入じゃなくて、ホセの用事が終わる時間までショッピングを楽しむだけなんだけどね。
あたしもルリも馬は扱えないから、ホセが馬車を出すときがショッピングの狙い目なのよ!
「一人です!」
声に出ちゃってたとは恥ずかしい!
「一人かあ、いいねえ春だねえ」
「春ですねー」
「あ、虫」
ミズキさんは「王子!」って噂だったけど、実際会ってみると割と普通の人だった。
男装してるけど、中身は面倒見の良いお姉さんって感じ。
ミズキさん曰く、もっと王子っぽく振る舞ってる時もあるけど、今はルリもいるから普通にしてるんだって。
王子モードでいたらルリに「そういうの面倒くさいからやめて」って言われちゃったらしい。
「二人はどんなお店に行くの?」
ミズキさんが話しかけてくる。
馬車といっても、馬が荷車を引いているだけなのでホセにも会話は聞こえてると思う。
でも、ホセは不用意に乙女の会話に入ってきたりはしない。
なかなか出来る男なのです。
でもあたしの恋の相手じゃないけどね!
「お菓子を見てー、あとアクセサリーを見てー」
もちろん本命の人に花束をもらったりしてみたいけど、
花の日仕様の可愛いお菓子にだって興味はあるのよ!
「あたし、本屋行きたい」
でもルリの方は乙女度は低いんだよね。
「本屋かあ……」
もちろん、ルリが行きたいところにも行こうとは思うよ。
でもあたし、本って苦手。
ルリは、「ヴァニラも恋愛小説なら好きなんじゃない?」って言ってくるけど、でも、恋愛小説のヒーローって、あたしの好みじゃないもん。
金髪で青い瞳のヒーローなんて、お兄ちゃんみたいだし。
お勉強の本はもっと苦手なんだけどね。
あたしと違って、ルリはよく難しそうな本を読んでる。
やっぱりお医者さんの娘だから頭いいのかな。
そんなわけで、あたし、本屋に行ってもやることないんだよね。
どうしようかなぁ。別行動に……
「恋に良く効くおなじないの本が出てるんだって」
「行こう本屋!」