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夏25日 マリエッタ ニンジャ流情報伝達

サトウが帰ってきたわ。

虹の日の朝に「王都に行ってくるでゴザル」って言ったまま、姿が見えなかったのよね。

まさか本当に王都に行ったのかしらと思っていたけれど、今日帰ってきたってことは違うみたいね。

王都までは往復十二日ほど、サトウが出かけてからまだ四日しか経ってないもの。

大方隣町でニンジャマニアの人たちと遊んでいたのね。


「ふむぅ。今月末に調査員が来ることとなったか……」


お父様が難しい顔で唸っているわ。

例の魔石を持つ魔物の調査の話みたいね。


「国から知らせが届きましたの? 何人いらっしゃると?」


人数しだいでこの村の体制も整えないといけないし、万が一粗暴な兵士が来た時のために子どもたちに注意を促したりしないといけないわ。


「いや、国からの正式な書簡はまだじゃ。

 これはサトウが持ち帰った非公式な情報なんじゃが、

 夏の三十日に到着する日程で調査員が王都を出発する予定らしい。それでな……」

「ちょっと待ってくださる? サトウが持ち帰った情報?」


あたくしはお父様の言葉を遮ったわ。

まさか本当にサトウは王都に行っていたと言うの?

それにしては早すぎるのだけど……。サトウは瞬間移動は出来ないしニンジュツとかいう技も手品みたいなものだったはずよ。

これがスーニさんなら、彼女のメイド力でどんな不可能も可能にしそうではあるのだけれど……。


「サトウ、あなた本当に王都まで行ったの?」


サトウが嘘を付いてお父様に出まかせの情報を言っているとも思えないけれど、この短時間で王都まで行ったとはどうしても思えないわ。


「否。拙者も当初は王都まで不眠不休で走るつもりでいたのでゴザルが……」

「死ぬからおやめなさい」


気力で走り切ったとしても、王都についた途端に死にそうよ。


「隣町に拙者たちNINJAとは不仲な、邪道日本オタクがいるのでゴザルが」


同じニホンマニアでも派閥があるってことかしらね。


「彼奴に、『サトウゎ走った……アードルドがまってる……

 でも……もぅつかれちゃった…でも……あきらめるのょくなぃって』と言われ

 どことなく不快感を感じたため、走っていくのはやめたでゴザル」

「走るのをやめてくれたのはいいのだけど、私怨で任務を放棄するのはどうかと思うわよ?」


ニンジャっていうのは任務遂行に命をかけるものだって、前にサトウが言っていたもの。


「面目ない。しかし、任務は王都の情報を得ること。

 拙者はNINJAの連絡網を使い、隣町にいながらにして任務は達成したでゴザル」

「どういうこと?」

「隣町からさらに次の町へ、そこからさらに次の町へと

 狼煙と暗号を使って情報を伝達していったでゴザル」

「待って。各町にニンジャがいるの?」


そんなにニンジャって一般的なものなのかしら?


「我々は町ではなく闇に潜むものでゴザル」

「そ、そうなの……」


なんだかよくわからないけれど、もういいわ。


「じゃあ、この情報は間違いなく王都で入手した情報なのね?」

「王都にいる拙者の兄弟が城に忍びこんで得た情報でゴザル」

「あなた王都に兄弟がいたの? 御兄弟にそんな危ないことさせてはダメじゃない」


あたくしが驚きつつたしなめると、サトウはすこし黙った。

顔のほとんどを布で覆っているから、表情がよくわからないのよね。


「血の繋がりはないが、血より濃い絆で結ばれた仲間という意味でゴザル。

 諜報活動はNINJAの誉れ高き仕事でゴザれば、

 危険にさらされるもまた名誉なことでゴザル」


サトウは小さく溜息をついた。

表情はないし口調も抑揚がないけれど、なんとなく馬鹿にされている気がするわ。


「まあとにかくじゃ。サトウよ、ご苦労じゃった」


あたくしとサトウの間の不穏な空気を感じ取ったのか、お父様が話を仕切り直した。


「お主の仲間たちにも礼をせねばならんの」

「そのお言葉だけで十分でゴザル」

「そうは言っても狼煙を上げるのにも費用がかかったじゃろう?」


お父様がサトウと報酬について話し始める。

それにしてもさっきから、何かが……何かが気になりますわ。

狼煙……費用……はっ!


「王都のNINJAから音声転送で連絡を貰えば良かったんじゃないの?」


音声転送はたしかに費用がかかるけれど、それでもこの村から王都までの各村や町で使われた狼煙の費用を考えれば音声転送代の方が安いし、それに狼煙よりも格段に早く、そして正確に情報を伝えることができる。

あたくしがサトウにそう指摘すると、サトウはあたくしを愚かなものを見るような目で見てきた。

表情の無いサトウがここまで感情を露わにするのは珍しいわね。

馬鹿にされているのは腹が立つけど!


「我々はNINJA。音声転送を使用するなど邪道でゴザル」


まるであたくしがニンジャのことをわかっていないみたいにサトウは言うけれど、そして実際わかっていないしわかりたいわけでもないけれど、だけど任務を確実に遂行するために、ニンジャも時代とともに

変わっていくべきだとあたくしは思うわ。

あたくしとサトウが無言でにらみ合っていると、部屋の隅に置かれた音声転送装置の魔石がピカピカと光った。

一番近くにいたお父様が装置を操作し、受信ボタンを押す。


『あ、ラスシャ村の村長さんの家っすよね? サトウその辺にいますか?』


装置から音声が響いてくる。


「おるよ」

『あ、じゃあ、今狼煙あげてるんで見るように伝えてください。それじゃあよろしくっすー』


短く用件を告げて、音声転送は終了したわ。


「伝達を解読してくるでゴザル」


そしてサトウは外に出て行ったけれど、さっきの音声転送で狼煙の内容も伝えればいいじゃない!

あたくしはそう思うけれど、きっとロマンとか言うものなのよね。

あたくしはもう、何も言わないわ。


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