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夏24日 ホセ UMAとUMU

昨日、町から村に戻っているときに

「私も真剣に馬に乗れるようになりたいんだが」

とミズキが言い出したので、今日は乗り物カタログを見ている。



「ようは移動手段が欲しいって話だろ?」


移動手段なら別に馬である必要はない。

普及はしてねーけど自動車とかいう機械と魔石で動く陸路を走る乗り物もあるし、空を飛ぶ乗り物もある。

ああでも、空を飛ぶ乗り物の方は出たばっかで、一般販売はしてないんだったか。

まあ自動車の方も一般販売してるっつっても、値段がとんでもなく高けーんだけどな。

馬の良いところは安いところだ。


「うむむ……空を飛んでみたいしバイクっぽいやつもちょっと興味あるが、

 私の懐事情だと買えたとしても馬だなあ。他の乗り物は金額的に無理だ」


異世界人が国から最初に受け取る金の半分くらいの金額で、馬は買うことができる。

他の乗り物に比べりゃ格段に安いけど、だからって馬も安い買い物じゃねーんだよな。維持費もかかるし。


「馬でいいなら、とりあえず俺の馬貸てやっから、

 とりあえず乗る練習してみた方がいいんじゃねーか?」



つーわけで、客もいねーのでミズキの乗馬練習に付き合うことにした。

本日分の仕事が終わったリーンも来て、ミズキを応援している。

先に乗り方の手本を見せて、ミズキに悠久たる深淵エターナルダークフォースを明け渡す。


「結構大人しいな」


ミズキが悠久たる深淵の隣に立つと、悠久たる深淵はチラリとミズキの方を見て、すぐに前を向いた。

村長の頭に草が生えている間は毎日落ち着きがなくて心配したが、村長が一本毛に戻ってからは悠久たる深淵も落ち着いている。


「しかし、近くで見ると思っていた以上にでかいな」


ミズキが悠久たる深淵の腹を撫でながら感心した顔をして頷いた。

たしかに荷台付近から見るのとすぐそばに立ってみるのじゃ、感じが違うかもしれねーな。


「とにかくまず乗ってみろよ」

「う、うむ」


腹を撫でるばかりでなかなか乗ろうとしないミズキに乗るように促すが、ミズキは怖気付いたのか目を逸らした。

思っていたよりデカいからって、落馬でも心配してんのか?


「落馬したらわたしが助けるからだいじょうぶだよ!」

「う、うむ……」


リーンが励ますが、それでもミズキは乗ろうとしない。


「どうした?」


尋ねると、ミズキは苦笑いして頭を掻いた。


「いやー……私の筋力じゃ、乗れそうにないかな、と」


鐙まで足を上げるのは何とかできそうな気がするが、馬の上まで体を持ち上げるのが無理ということらしい。落馬以前の問題だった。

まあ初めてみてーだし、仕方ねーか。

俺は悠久たる深淵の横に膝をついて屈んだ。


「ほら、俺の肩踏み台にしていいから、のぼってみろ」


慣れれば踏み台なしでも乗れるようになるだろ。


「王子は人を踏みつけるような女王様な趣味はないんだが」

「馬鹿言ってねーで早くしろ」


ミズキは俺の肩に足を乗せると


「そぉい!」


と掛け声をかけて馬に上がった。

そして馬の向こう側に落ちた。

まさか乗る時に反対側に落ちるとは思っていなかったから、リーンの救助も間に合わなかったみてーだ。

つーか、これも落馬って言うのか?



足を捻挫したミズキを背負ってリーンとミズキの家まで運ぶことになった。


「ごめんね、資格がないから人体を魔法で運ぶことができなくて……」


足を捻挫したミズキを背負って運ぶ横で、リーンが眉をへにょりと下げて謝ってきた。

重い荷物も魔法でラクラク運んでいるリーンだが、それは荷物が無機物だから出来ることであって、

資格がなければ生き物に向かって魔法を使うことはできない。


「いや、別にかまわねーよ」


どう考えてもリーンのせいじゃねーし。

どっちかっつーと、この微妙に運動音痴な背中のやつのせいなんだが。


「スライム産みそう……」


背中の運動音痴は、「馬には乗るが、人に乗る趣味はない!」と背負われるのを散々拒否したあげく、渋々俺の背中に乗った後は、ずっとわけわかんねーことを呟いている。

スライム産みそうって、スライムのコアでも産み付けられたのか? 病院行け。


「あ、クーちゃんとヒューくんだ」


道の向こうにヒューたちを見かけて、リーンが手を振った。

ヒューは背負われているミズキを見て一瞬驚いた顔をしたあと、


「鉄下駄いるか?」


真剣な顔で尋ねてきた。


「は?」


どういう意味だ?


「安産のために足腰を鍛えるですっ」


クーが補足してきたが、さらにわけがわからねぇ。

だけど安産って、もしかして俺じゃなくてミズキに鉄下駄が必要ってことか? スライム産むために?

いや、産ますんじゃねーよ。病院勧めろ。


「いや、鉄下駄はいらねーよ」

「……そうか」


俺が断ると、ヒューはものすごく残念そうな顔をした。

こいつ、どんだけスライム産ませたいんだ?

ヒューは真面目な良い奴だと思っていたが、実は密かな狂気を隠し持ったやつだったらしい。

いや……、これ隠してねーな。

俺は適当に会話を切り上げ、そそくさとヒューから距離を置いたのだった。

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