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夏19日 ヴァニラ よいこのおまつり

お祭とはいえ夜の町、女の子二人じゃ危ないってことで、お兄ちゃんに無理やりジャンを護衛につけられた。

ジャンが役に立つと思ってんのかなー、もー。

不貞寝するくらい暇なら、今年もお兄ちゃんがついてきてくれればいいのに。

まあお兄ちゃんがついてくると「あれは食べちゃ駄目」とか「そこは行っちゃ駄目」とか言われるから、不貞寝してくれててラッキーだったかも?

カラースライム食べてみたかったんだよねー。



ジャンが行きたいというので、見世物小屋にやってきた。

ここもいつもはお兄ちゃんに駄目って言われるんだよね。


「あたしは行かない」


見世物小屋の前まで来ると、ルリが外で待ってると言い出した。

ルリは興味ないのかなあ。それとも怖いとか?

たしかにちょっと、小屋の外装がおどろおどろしいというか、奇妙な雰囲気が漂ってるけど。

でもでも、「世にも珍しい珍獣が見れる」ってさっき呼び込みの人が言ってたし、やっぱり気になるよ。

「ヴァニラのお兄さんが毎年ダメって言ってるし」

ってルリは言うけど、だからこそじゃん。

お兄ちゃんがいない今がチャンスなんじゃん!

なんとかルリを説得しようと思ったけど、ルリは頑として首を縦には振ってくれず、あげく「ヴァニラも行ったらダメ。行ったらお兄さんに言う」とまで言ってきた。

なんなのもー、裏切者!


「あっちなら行ってもいい」


あたしが頬に空気をためて不服を表現していると、ルリが見世物小屋の隣にある小屋を指さした。

小屋の前の看板には「よいこのみせものごや」と書いてある。

明らかに子ども向け!

でも呼び込みの人が「珍しくて可愛い生き物が見れるよー」って言ってるのは、ちょっと気になるかな。

うーんでも、世にも珍しい珍獣の方が絶対スゴイよね……。

あたしが「大人の見世物小屋」に後ろ髪をひかれる思いでいると、「よいこのみせものごや」の人が

「今なら世にも珍しいシュワシュワするカラースライムあげちゃうよー」

と声を張り上げた。


「ルリ、行こう」


世にも珍しい珍獣なんて頭痛が痛いみたいな生き物よりも、世にも珍しいカラースライムで決まりでしょ!



あたしたちが「よいこのみせものごや」から出ると、ちょうどジャンも「大人の見世物小屋」から出てくるところだった。


「どうだった?」


ちょっと顔色が悪いジャンに聞いてみると


「……えぐかった」


いつも「世界は俺を中心に回っている」という態度のジャンには珍しい、後悔した風な返事が返ってきた。

ふーん、あたしの方の珍獣は可愛かったけどね!

やっぱり大人も良い子じゃないといけないってことよね!

さてさて、「よいこのみせものごや」でお土産にもらったカラースライム食べちゃおうかな!


「良い子だからカラースライムは家に帰ってから食べようね」


スライムを取り出そうとしたらルリに止められた。

もー、わかったよ。良い子だから我慢するよ、もー。



そんなわけで仕方なく家までカラースライムを持って帰ってきたけど、これお兄ちゃんに見つかったら没収されるんじゃないの!?

あたしはコソコソと自室にカラースライムを持ち帰り、こっそりひっそりスライムを食べた。

良い子を目指したはずなのになんだか悪いことしてるみたいになってる!!

初めて食べたカラースライムは、なんだかイケない味がした。



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