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夏15日 ヴァニラ がおー!カイジュウ大作戦!

どうやらこうやら、お兄ちゃんは無事にリーンと付き合うことになったみたいなの。

うーん……まあ、お兄ちゃんが振られるわけないとは思ってたけど、リーンがお兄ちゃんの彼女って、なんかちょっと変な感じ。

リーンがお兄ちゃんのことを好きって感じがしないからかな。好きじゃないけど、お兄ちゃんに合わせて付き合ってる、みたいな。

リーンって人の希望に沿うように行動しようとするところがあるからね。

それは悪いことじゃないんだろうけど、でも愛のないお付き合いってどうなのかなー。

お兄ちゃんはそれも納得済みで付き合うことにしたみたいだけどさ。

あたしは嫌かも。

あたしはちゃんと、ヒューさんに好きになってもらって、それでお付き合いしたいもん。

そう考えるとやっぱりね、あたしに告白はまだ早いと思うの!

もうちょっと二人の距離を縮めてから、自然な流れで、ね!

自然な流れと言えば、不自然なくらいのスピードでお兄ちゃんはリーンとキスしたらしいの。

お兄ちゃんって、手が早かったんだ……。来年には甥っ子か姪っ子ができてたりして……。

うわ、ドン引きー。

ちょっと前までヒューさんとデキてるんじゃないかってくらい女っ気なかったのに、なんなのかな、もー。

でも、でもでも、もしあたしがヒューさんに告白してOKしてもらって、その場でキ……キスを迫られちゃったりしちゃったりなっちゃったりしたら……!

きゃーっもう! もう! もうっ!!


「仕事しろ」

「……はい」


お兄ちゃんに叩かれた額を擦りつつ、お掃除再開。

まったく、手がはやいんだよ、もー。




昔に異世界人が伝えた言葉に「千里の道も一歩から」っていう言葉があるって、学校に行ってた頃ノエルが言ってた。

今はヒューさんに会うことさえ困難な状況だけど、一歩ずつ近づいて行って、いつかは両想いに!

ヒューさんに会いに行ってもクーに妨害されちゃうからって、今まではヒューさんがお店に来てくれるのを待ってたけど、やっぱり待ってるだけじゃダメよね!

クーに妨害されないようになればいいのよ! 仲良くなったりしてね!

どっちみちヒューさんのワイフになったら、クーは義妹になるんだもん。

仲良くなっておくのは将来のためにも必要なことだよね!


というわけで、雑貨屋で駄菓子を買っていざ出陣。

籠絡するべきはクーだけど、アッシュの分も買って行かないとね。

あたしのおやつのプリンをあげる手も考えたけど、さすがにプリンは、プリンだけは譲れないと思うの。

まあ今日のプリンは見た目が子ども向けじゃなかったから、どっちにしろあげられないけどね。

都で飲み物の上に絵を描くサービスが流行ってるらしくて、お兄ちゃん、プリンの上に絵を描こうとしてるみたい。

最初はカラメルの上に粉糖を乗せてみたんだけど粉糖が溶けちゃって失敗で、今はカラメル無しのプリンの上に、ココアパウダーで絵を練習中。カラメルソースはお皿に添えることにしたみたい。

出来栄えは……うん、抽象画も味があるよね。


さて、今の時間ならクーは外で遊びまわってる頃よね。

もちろん今の隙をついて鍛冶屋に行けばヒューさんに会うことはできるけど、さすがにお仕事中にプライベートな面会を頼むのはどうかと思うの。

仕事上がりになると、もうクーが防衛しちゃってて近づけないんだけどね。


クーの餌付け大作戦を決行するべく村をうろうろ探し回っていると、クーより先にアッシュを発見。

アッシュに聞けばクーの居所がわかるかもね。

アッシュに買ってきたチョコレート菓子を渡すと、

「なにこれ? 賄賂? いらねーよ」

と突き返された。ぐぬぬ。

クーのあとはあんたを懐柔してやるからね! 首洗って待ってなさいよ! がおー!

アッシュはクーと喧嘩したらしく、どこにいるかは知らないとのこと。

また喧嘩かあ。喧嘩多いなあ。

まあ、あたしもお姉ちゃんがお嫁に行く前は毎日のように喧嘩してたから、人のことは言えないよね。喧嘩……ううん、蹂躙されてただけかも……。


アッシュと別れて当てもなく川辺を彷徨っていると、草むらの方からコホンコホンと咳をする音が聞こえてきた。

草むらをかき分けると、クーが転がって喉をひゅーひゅー言わせている。

ミズキさんといいクーといい、なんで草むらに入るんだろう?

でもとにかく今は、クーを病院に運んだ方がいいよね!

あたしはクーを無理やり背負うと、病院に向かって走り……出せない。

クーとあたしの体格差じゃ、なんとかかんとか歩くのが精一杯だよ……!

でも多分、あたしが人を呼びに行くより一歩ずつでも運んだ方が早いはず!

千里の道も一歩から!

幸い五分ほど歩いたところで、不貞くされて散歩していたアッシュに再開して、アッシュが走ってヒューさんを呼びに行ってくれた。


クーをヒューさんに預けて、一緒に病院へ運んでいった。

クーは薬を吸ったらだいぶ楽になったみたい。嵐が来ると体調が悪くなりやすいんだって。

ちょっと風も強くなってきたし、今夜から本格的に荒れるって予想だもんね。

嵐の夜に入院は怖いだろうってことで、クーは家に帰ることになった。

ヒューさんが軽々とクーをおんぶしてる。

すごいよね。あたしなんて五分運んだだけで、いまだに足がガクガクするのに。


「……世話になったな」


なんとなくヒューさんの斜め後ろについて歩いていると、ヒューさんが顔だけ振り返ってあたしを見た。

ヒューさんの素敵な琥珀の片目に見つめられて、あたしは……

あた、あた、あたしは……っ!


「いえっ! えっとあの! そう! 足腰! 足腰を鍛えるのに最高でしたっ!」

「そうなのか」

「はいっ! 安産のためにも足腰は鍛えておかないとっ!」

「なるほど……そうだな」



数日後、またテンパって変なこと口走っちゃったなあと反省していると、「先日の礼だ」と、ヒューさんから鉄下駄をもらった。

足腰を鍛えろってことですね、わかります。


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