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夏10日 マリエッタ 父の日のプレゼント

今日は父の日。

もちろんすでにプレゼントは渡したわ!

ケノビーデラックスサンシャインEXアバンチュールっていう毛生え薬。

いつもお父様が使っているお薬の最上位版で、とっても貴重なのよ。

あたくしのお父様、鏡の前で毎日帽子カツラをとっては、「まだ生えない」「まだ生えない」って言い続けてるの。

あたくしがプレゼントしたお薬で、早く生えてくるといいわよね!

ところでお父様の狂気(頭の草)は夏の日差しを浴びて急激に伸びてきて、最近じゃ帽子カツラに収めるのも一苦労なのよ。

何とかならないかしら!



というわけで、本日休日らしいリーンを連れてきたわ。

リーンといえば、ロバートのこと、どうするのかしら。

ちょっと……ちょーっとだけだけど! 気になるわ!

ほんとにちょっとよ? ほんとよ?


「ん……んん……? ……むう」

リーンはお父様の草を見て、口を尖らせてるわ。

アンシーほどじゃないけど、リーンもあんまり表情が無い子だから、こんな表情は珍しいわね!

「どうなんじゃ?」

お父様の方は、リーンの表情に気が気じゃないみたいだけど。

「あと一週間くらいで草が枯れ落ちて、代わりに髪が生えてくる予定だったんだけど……。

 こんなに背が高く生えるはずじゃなかったの。生えても三センチくらいのはずで……」

三センチ……?

お父様の草はすでに十五センチはありそうよ?

「原因がわからないし……それに……」

リーンは言いにくそうに目を逸らしたわ。

なにか、悪い話ってことよね?

お父様には聞かせられない話ってことかしら。


あたくしはリーンを部屋の外に連れ出して、続きを聞いてみたの。

「あれだけ伸びるには、栄養が必要だと思うの。その栄養がどこから来たのかわからなくて……」

リーンの説明によると、本来は三センチくらいの草が生えて、その草を日光に当てることで頭皮に栄養が蓄積されて、さらになんだかよくわからない難しい効果で毛根が作られて、草が枯れた後に新しい髪が生えてくるはずだったらしいわ。

それなのにお父様の髪……じゃなかった、草は、十五センチを超える勢いで伸びている。

その栄養はどこから来たかというと、頭皮に蓄えられるはずだった栄養を使っている可能性が考えられるらしいの。

そんな……このままお父様は、一時的に頭に草を生やしただけの狂気の禿男となってしまうの……!?


「でも、これは推測なの。なにか、草がのびた原因がわかればいいんだけど……」

原因、ね。

ここはサトウに原因を調べてもらいましょ。

サトウはあれで頭も良いから、リーンにわからないことも何か気づけるかもしれないわ。


「サトウ!」

「御意。ここに村長のここ数日の行動の記録があるでゴザル」


え、何それコワイ。

指示せずともあたくしの意図を汲んでくれたのは別にいいけれど、お父様の行動をすでに逐一チェックしていたとか恐いわ。

ま……まさか……あたくしの行動も……!?


~村長のとある一日~

朝五時起床 身支度 ケノビー付与

朝五時半  散歩に行く

      エターナルダークフォースと草試合(草をかけた戦い)をする

朝六時半  朝食を作る

朝七時   マリエッタとサトウを起こし朝食

朝八時   ケノビー付与

(以下略)


「ん……この、ケノビーって言うのは……?」

「毛生え薬でゴザル」

あたくしはケノビーよりも、サトウが寝てる時間もお父様の行動が記録されてることが気になるわ。

「ん……それは、どういう理由で草……じゃなかった、髪が生える薬なの?」

「かくかくしかじか」

サトウの説明によると、とにかく頭皮に刺激を与えつつ栄養を与える薬らしいわ。

「それによって、草ものびると思う?」

「おそらくは」

「そっか……なら、枯れればちゃんと髪の毛生えてきそう。……よかった」

リーンは心底ほっとしたって感じの顔ね。

あたくしは……実は早く草がなくなりさえすれば、それでいいわ。

父親が頭に草を生やしているって、娘からすると結構複雑なのよ……?

それよりは頭頂が一本残さずツルっといっちゃってる方が、比べようもなくマシだと思うの。


「長くのびちゃった分、どうにかできないか調べてみるね。

 抜いちゃうのはやっぱり良くないと思うから、たいへんだろうけどあと一週間頑張って!」

そう言ってリーンは帰っていったわ。



翌日、あたくしのプレゼントをふんだんに付与されたお父様の草が三十センチを超える勢いで成長しているだなんて、あたくしにはもちろん、さすがのサトウにも予想できなかったらしいわ。


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