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夏10日 ヴァニラ ワタナベショウシャ

星の日の夜くらいから微妙に記憶があやふやだけど、今日も元気にお掃除しますよ!

ロヴァ亭看板娘のヴァニラでっす!

ところで一個問題があるの。

あたし、葉舟流したっけ……?

ポケットにも入ってないし、どこいったのかなあ。

記憶を掘り起こしてみようにも、お兄ちゃんの告白事件のことしか思い出せない!

川に流してたらいいんだけど、地面に落としてて誰かに見られたりしたら最悪だよ……。



そんなわけで、お店の掃除をささっと終わらせて、川辺にやってきました。

あれ? 川上から、何かが流れてくる。

ドンブラコ、ドンブラコ。

落ちていた木の棒で引き寄せてみると、パンプスでした。

どっかで見たことあるような……。

棒でかかとの辺りをツンツンつついてみると、

「カツン」

という音がする。

あ、これ、ルリのお母さんの靴かー。

しばらく待ってみたけど、本体(ルリのお母さん)は流れてこなかった。よかった。

ルリのお母さんのことだから、靴をなくしたことも気づいてないかもね。

お届けしますか!


パンプスを届けるとルリのお母さんは

「あらぁ、洗濯してた靴、持ってきてくれたのねぇ」

と、靴を片方受け取って

「お礼にこれあげるわぁ」

と、おにぎりをくれたの。

お兄ちゃんのご飯もいいけど、こういう素朴なご飯もいいよね!


おにぎりを手に川に戻っていると、ジャンに会った。

木の側に四つん這いになって何かを覗いている。

「何してるの?」

「蝉の穴に、昼飯代落とした……」

この季節、地面には小さな穴がたくさん開くけど、それは蝉の幼虫が出てきた後。

でも、変なの。普通穴って直径一センチ程度で、硬貨が落ち込むような大きさじゃないと思うけどな。

そう思ったけど、確かに地面には直径三センチくらいの穴が開いていた。巨大な蝉がいるみたいね。

ジャンにおにぎりをあげると、

「マジで! 昼飯代浮いたから、騎士道チップス買えるぜ!

 あ、ダブってるからこれやるよ!」

と、キラキラ光る騎士道カードを押し付けられた。

いらない、超いらない。

あれ、でもちょっと待って……?

昨日ルリの家で、ミズキさんに異世界のおとぎ話を聞いたんだけど、似たような話があったような。

ニホンのお話ってことで、王子様じゃなくて村人が主役だったりして、結構楽しかったんだけど。

わ……わ……わたなべしょうしゃ……だったかな。

どんどん物々交換していって、最後には自分の望むものに辿り着くのよね!

てことは、このまま交換していけば、あたしの葉舟を見つけられるかも!?

ジャンに貰った騎士道カードには、「アルフレッド・ヘルファイア」が描かれてる。

燃えるような赤い髪と眼帯がトレードマーク。

女性向けの雑誌にも時々グラビアが乗る人気の騎士なのよね。

これは結構、欲しがる人がいるかも!

でもいったんワタナベはこの辺にして仕事に戻らないとね。

そろそろお昼でお客さんが増える時間!


お店に帰ると、お兄ちゃんに騎士道カードを取り上げられた!

お兄ちゃんは一瞬、すごく嫌そうな顔でカードを見て、ペッとゴミに捨ててしまった。

「いらないなら取り上げないでよ! それか何かと交換してよ!」

と訴えると、プリンをくれた。

ああ……プリン……かあ。

うん、欲しがる人、いると思うよ。

お兄ちゃんのプリン、おいしいもん。

おいしいよね。うん、おいしい。今日もおいしい。

いつの間にかプリンは消え去り、あたしのワタナベは潰えた。


お昼の客足も途絶えたので、再び川へ。

やっぱりワタナベなんて運任せは良くないよ! 自力で探さないとね!

さっきの木の棒を再び拾って、草むらをかき分けつつ探していると、

「野生の王子が飛び出してきた!」

草むらからミズキさんが飛び出してきた。

「……ミズキさん、何してるの?」

「……いや、別に? ヴァニラちゃんは?」

ミズキさんの背後に浮かんだ「行け! コロネ!」という文字は一瞬で消えて、ミズキさんはあたしをさっと上から下まで見た。

そして、

「なっ……それはもしや……『ひのきのぼう』……!?」

と、あたしが持っている棒を指さした。

檜かどうかはわからないけど。

ミズキさんが欲しがったので棒をあげると

「あ、そうそう。これ」

と、ミズキさんはポケットから何かを取り出した。

それは葉舟で……

「さっき拾ったんだ」

まさしく、あたしが探しているものだった。

「ま……まさかのワタナベ……」

「渡辺?」

「ミズキさんが昨日言ってたやつ。ワタナベショウシャ?」

「渡辺勝者……渡辺商社……?」

「川で棒と靴を拾って、靴がおにぎりに、おにぎりがカードに、

 カードがプリンになって、最後に棒があたしの探し物になったの」

ね? ワタナベでしょ?

そこでようやくミズキさんは、合点がいったという顔をした。

「ああ……ああ! わらしべか!

 ん、いやでもそれ……靴からプリンのくだり……」

「……いらないよね」

「……うん」


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