夏8日 リーン ゆらゆらゆれる
ロバくんに告白されて一晩経ちました。
全然実感はありません。
何かの間違いだったんじゃないかな……とか、罰ゲームじゃないかな……とか。
……ロバくんが罰ゲームでそんなデリカシーのないことをする可能性の方が低いです。
ミズキちゃんには「なんか危なっかしいから、今日はゆっくり低空飛行で!」って言われたけど、まだ赤いような気がする顔を人に見られたくなくて、いつもより高い位置を飛びながら配達をすませます。
残る配達先は二カ所。
ホセくんのところとロヴァ亭です。
どっちも行き辛いです。
今朝は混乱していて、ホセくんのところに寄るのも忘れちゃったし。
花火の前のホセくんのあの質問、ホセくんは事情を知ってるってことだよね。
ん……でもお仕事なのです。
「おう、仕事終わったのか?」
雑貨屋のドアをあけると、ホセくんは新聞を読んでいました。
「まだ……配達中……です。これ、ホセくん宛のお手紙」
「おう、おつかれさん。……あー……まあちょっと、そこ座れ」
「別にロバートのこと嫌いってわけじゃねーんだろ?」
「うん……」
「ロバートと付き合うの、嫌か?」
「実感わかなくてよくわからないけど……嫌じゃ、ない……と、思う」
ホセくんにお茶を入れてもらって、相談中です。
まだお仕事終わってないけど、あと一カ所だからたぶん大丈夫です。
「じゃあ特に問題ねーんじゃねーか?」
「ん……」
そうなのかな……問題、ないのかなあ。
「なんか気になることがあんならさ、見ておけばいいだろ。
今すぐ返事しろって言われたわけじゃねーんだし、
付き合ってもいいかどうか、しばらくロバートのこと、よく見とけよ」
「うん……」
雑貨屋を出ると、すぐロヴァ亭の裏口があります。
裏口に配達に行くこともあるのだけど、今日はなんとなく、表まで歩きました。
「こ……こんにちわー」
ドキドキしながらお店のドアを開けます。
ヴァニラちゃんにサッと渡して帰ることもできるけど、それは変だし、失礼だし、でもだからっていつも通り軽くお話ししてっていうのも、できるかというと難しいような……。
「……!? リ……リリリリーン……! ええっと、あの、えっと……」
ドアのすぐそばに、盛大に動揺しているヴァニラちゃんがいました。
すごい勢いでわたしとロバくんを交互に見ています。
首がとれそうです。
「ごごご、ごゆっくりどうぞ……!」
そしてなぜか、ソースを渡されました。
「ヴァニラちゃん……落ちついて」
ヴァニラちゃんに、ソースを返します。
なんだか、わたしの方が落ち着いてきました。
「いらっしゃい。配達?」
ロバくんと目が合うと、ロバくんはいつも通りニコッとしてくれました。
そのいつも通りの様子に、ちょっとほっとします。
「うん、郵便です」
「さんきゅ」
その、わたしがほっとした様子が伝わったのか、ロバくんの笑顔がちょっと苦笑いになったような気がしました。
ん……いつも通りだけど、いつも通りじゃないんだよね。
今までと違う状況になりたいからこそ、ロバくんは告白してくれたんだから。
「……ロバくんのこと……ちゃんと……考えてみるね」
動揺して思考停止するんじゃなくて、ほっとして今まで通り過ごすのでもなくて、わたしはロバくんとどうありたいのか、どうなりたいのか、冷静に、真剣に、考えてみよう。
わたしの返事に、ロバくんは柔らかい声で「うん」と頷きました。
「お、おおお、お兄ちゃん! あた、あたし!
今から! ルルルリのところにととと泊まってくるから!
ご、ごゆっくり……どうぞ!」
一人、落ち着きを取り戻さないヴァニラちゃんに
「落ち着いて」「仕事しろ」
わたしとロバくんの声が重なって、それがなんだか心地好く感じました。




