夏6日 ロバート 夕飯を無事に作るには
夕飯作りが始まった。
カレーについて詳しく調べたところ、カレーの種類にも羊肉のもの、鶏肉のもの、野菜がメインのものなど色々あった。
そこで一昨日ミズキちゃんにどれが良いか聞いてみることにしたのだが、「カレーライス! 肉は豚か牛が良い!」と予想外のことを言われた。
ミズキちゃんにカレーライスの詳細を聞くとおれがイメージしていたカレーとは別物だったが、むしろおれがイメージしていたカレーより簡単な代物ようだった。
炒めた肉と野菜にカレースパイスを入れてさらに炒め、だし汁で煮込み、具材が煮えたらブラウンソースを入れてとろみをつけてカレーは完成。
おれはプロだから商品としての料理には手を抜かないけど、商品じゃないならば抜ける手は抜いていいと思っている。ましてやプロじゃなく料理素人が作るなら、合成調味料でもなんでも使うべきだ。そういうわけで、今日はカレーのスパイスは合わせ済みのものを用意している。
別途米を炊く必要があるけど、釜でナンを焼く必要がなくなったのは助かった。
ミズキちゃんの説明によると、カレーライスは料理素人でも失敗が少なく、嫌いな人が滅多にいないという優秀なメニューなのだそうだ。
料理素人でも失敗が少ないというところがありがたい。このメンツ、料理出来ないやつ、結構多いからな。
ヴァニラは野菜の皮むきだけは、いつも手伝わせてるから問題なく出来る。あとのことは出来ない。
アンシーは自炊しているらしいので、たぶん問題ないだろう。
ホセも結構自炊してたはずだ。
ヒューは包丁は打つものだと思ってそうだ。アッシュたちはよくわからないな。
ルリちゃんは、エメリアさんが危なっかしそうだから、たぶん料理してると思う。
マリーはたしか、菓子は作るけれど料理は作らないタイプだ。サトウは料理はできなかったはずだし、村長が炊事担当なのかな。
ミズキちゃんは「調理実習レベルだな!」と言っていた。
リーンはユズさんに料理を習っていた。八年前は包丁を持ったこともないという子だったから、彼女が料理が出来るというのはなんだか感慨深い。
残りのメンバーはいつもうちの店の飯を食いに来るから、料理できないと見ていいだろう。
さて、こいつらを四チームにわけなければならない。
料理できるやつとできないやつを組み合わせるのがポイントだ。
料理が出来るのは、リーン、アンシー、ルリちゃん、ホセ、おれ。
若干期待できるのが、ヴァニラ、ミズキちゃん、マリー。
出来ないのが、ヒュー、ジャン、ディオ、シュシュ、バトレイ、サトウ、ノエル。
わからないのがアッシュとクーリエちゃん。
Aチームのリーダーはおれ、Bチームはリーン、Cチームはアンシー、Dチームはルリちゃんとホセって感じにしておこう。
Dチームのメンバーにヒューも入れとくか。ホセが面倒見てくれるだろ。
ヴァニラは……ヒューと同じチームに入れると厄介だからな。
Cチーム、アンシーのところにでも入れておくか。
ミズキちゃんはリーンのBチームに入れるとして。
おれのチームで、ヤバそうなやつは受け持とう。
ジャン、シュシュ、バトレイはAチームだな。
マリーとサトウ、アッシュとクーリエちゃんはまとめた方が御しやすいか。
リーンのところにマリーとサトウを……いや、アッシュとクーリエちゃんを入れておこう。
アンシーのところにマリーとサトウかな。
あとはノエルとディオだけど、ディオをホセたちのチームに入れて、
ノエルは引率だから見学でいいだろ(投げた)。
Aチーム、おれ、ジャン、シュシュ、バトレイ。
Bチーム、リーン、ミズキ、クーリエ、アッシュ。
Cチーム、アンシー、ヴァニラ、マリー、サトウ。
Dチーム、ルリ、ホセ、ヒュー、ディオ。
結構うまく分けられたんじゃないか? なんとかなりそうな気がする。
結果、夕食作りは概ね順調に進んだ。
リーンのチームは、全員リーダーの言うことを聞く、良い子たちだった。
アンシーのチームは、野菜を飾り切りしたりして、楽しそうだった。
ホセのチームは、ルリちゃんがいるにも関わらず、大雑把な男の料理になっていた。
そう、和やかに、穏やかに進んだ。
おれのチーム以外は。
バトレイに米とぎを頼んだところ、米の量が半分になった。
バトレイの握力と腕力により(米とぎにそんなものは必要ない)、米は砕けてザルの目から零れていったらしい。
シュシュに玉ねぎを切らせたところ、玉ねぎがなくなった。
玉ねぎが目に染みたシュシュが涙をこぼしたため、それに動揺したバトレイが諸悪の根源とばかりに玉ねぎを握りつぶしたらしい。
ジャンに人参を切るのを頼んだところ、人参がなくなり肉が増えていた。
何があったのかは、まったくわからない。
「全部おれがやるんなら楽なんだけどな……」
いつの間にかカレー粉も消え失せている事態に、ついボヤキが漏れてしまう。
店から追加の材料を持ってこようか考えていると、
「まあ、このうまくいかなさが合宿の醍醐味だからな」
と、ミズキちゃんがそばに来て言った。
手には小ぶりな鍋を持っている。
「これ、リーンが持って行けって」
差し出された鍋の中には、完成したカレーが入っている。
「ロバートさんがあの三人を担当してくれて助かった的なことを言ってたぞ。言い方は違ったけどな」
「そっか」
ならなんか、全部いいかな。
自然と口元が緩む。
「うむ。笑った方がいいぞ。せっかくの金髪碧眼なんだからな!」
ミズキちゃんは、「こうだぞ!」とキラリと笑って、リーンのところへ戻っていった。
「お兄ちゃんおすそわけー!」
入れ替わるようにヴァニラが来て、同様にカレーを分けてくれた。
「マリーたちと人参をお花型に切るの楽しかった!
でも次の機会があったらヒューさんと組ませてよね!」
いや、お前のためにも、ヒューとは組まない方がいいと思うよ。
使った道具を片づけていたら、今度はホセが鍋を持ってきた。
「よお、災難だったな。ま、たまには素人飯で我慢しろ。要るだけ自分の鍋に移せよ」
と、玉杓子を渡される。
「さんきゅ」
ホセの鍋には、大きく切られた人参がゴロゴロ入っていた。
いかにもホセが作った料理っぽい。
こういうざっくりとした料理って、なんか落ち着くよな。
食事中、
「おかしい……ジャンから人参とりあげたはずなのに……」
ノエルが何やら呟いていた。




