夏6日 ヴァニラ 合宿開始とレクレーション
今日は合宿!
最初は行く気なかったんだけど、ヒューさんに会えるこの機会、逃すわけにはいかないよね!
ちなみに、謝罪のお手紙はちゃんと渡せました。
手紙を読んだヒューさんは、「気にするな」って言ってくれたの!
ヒューさん大人! 素敵!
もうあたしの中で「気にするな」エンドレスリピート!!
「気にするな」……「気にするな」……「気にするな」……∞
「ヴァニラ、そこの床水こぼれてるから拭いとけよ」
「気にするな」
「あ゛?」
あ、すみませんお兄様、ちゃんとやります。
お昼の営業を終えて、いざ合宿に出発です。
「それでは今から、『ミズキ王子を囲む会』を始めるよ!
僕が引率の先生だからね! ちゃんと言うこと聞いてね!」
青年団の行事ってシュシュがまとめ役のことが多いんだけど、今回は言い出しっぺのノエルがリーダーみたいね。
「今日は、五時までレクレーション、それからみんなで夕食を作るよ。
夕食の後は順番にお風呂に入って、その後庭で花火、就寝だよ!」
「ノエル」
ノエルが今日のスケジュールを説明すると、お兄ちゃんが口をはさんだ。
「先生って呼んでおくれよ」
ノエルは不服そう。あきらめたらいいのに。
「夕飯を作る時間を四時からにしてくれ」
カレーの材料を仕入れたお兄ちゃんは、ここ数日カレーの試作を繰り返してた。
おかげで昨日もカレー、一昨日もカレー。さっきのお昼もカレーだったのよ。
おいしいけど……おいしいけどさあ……。
お兄ちゃんの見立てだと、合宿参加者の腕では調理に三時間は欲しいみたい。
「では、夕飯作りは四時からに変えよう。レクレーションはシュシュが考えてるんだよね?」
「もち!」
シュシュは結構この合宿に乗り気みたい。村長の髪の毛が関係ないレクレーションだといいなあ。
「いろいろ考えたわ。それこそ、この一週間、不眠不休で考えたわ」
合宿が決まったのは四日前だけどね!
「色鬼、中あて、ドロケー、etc……。
アタシとしては、ドロケーで鬼看守として泥棒をいびるのが楽しそうだと思ったんだけど」
そう言いながら、シュシュがチラリと横に置かれた荷物を見た。
あれは……ムチとロウソク……!?
危険な香りがするよ!
具体的に言うとSMな香り!
「勘弁してください」
「と、ディオが言うので、今回はやめておいたわ」
げっそりしているディオと、「次回にこうご期待ね」とすごく残念そうなシュシュ。
シュシュを止めるなんて、ディオ頑張ったじゃん。
「奥の森で魔物狩りっていうのも考えたけど、今回は非戦闘員も多いしね」
そういう危ないのは、アンシーが止めそう。
今回の合宿の参加者のうち戦うのが苦手なのは、あたし、お兄ちゃん、ルリ、ヒューさん、アッシュとクー、マリー、ノエル、あとミズキさんもかな? 自警団員じゃないけど、ホセ、サトウ、リーン、ジャンは結構戦えるのよね。
「仕方ないから借り物競争にしたわ。
レクレーションの時間も短くなったし、結果的にちょうど良かったけど」
借り物競争かあ。お題が「好きな人」だったらどうしよう! 気にするな!
そして始まった借り物競争!
お題の入った箱から、一枚紙を取り出す。
書かれていたのは、『大男の汗』……?
これは、バトレイに汗を貰えってこと……? 変、なの。
バトレイを探してみるけど、すでにお題の品を借りにどこかへ行っちゃったみたい。
まあバトレイがいてもね、もらう気にはなれないんだけどね!
どうしようこれ、ヒューさんの……とかじゃダメなのかな!?
でもでも、「汗ください!」なんて変な子だと思われちゃいそうだし!
どうしようどうしよう。あっでももしかしたら、また「気にするな」って言ってもらうチャンスかも!? きゃー!
気が付けば、いつの間にか、一歩も動かないまま、借り物競争は時間切れで終わっていました。
優勝は、「村長の帽子」がお題だったバトレイ。
それ以外のお題は、「エメリアさんが割った皿」「熟女のキスマーク」「村長の草」「騎士道カードのSR」「体長十五センチ以上のザリガニ」とかだったみたい。
難易度にバラつきがある気がする! あと、村長絡みが二件入ってるのは、もはや伝統だね!
「まったく、ヴァニラもミズキもちょっとは探しにいきなさいよね!」
と、シュシュに怒られるあたしとミズキさん。
あれ? あたしはともかく、ミズキさんもここから動かなかったのかな?
「ミズキさんのお題、なんだったの?」
「ああ、これだよ」
ミズキさんが見せてくれた紙に書かれていたのは、「燃えない焦ヒゲのヒゲ」。
「これ何て火鼠の皮衣……」
と、よくわからないけど、遠い目をするミズキさん。
それから、あたしのお題はホセの書き間違いだったみたい。本当は「山男の汗」でした。びっくりした!
さて、合宿はまだまだこれから! 次は夕飯作り!
ヒューさんと同じ班になっていいとこ見せたいあたしです! 野菜の皮むきはお手の物なんだから!
「きみの剥いた野菜を毎日食べたい」とか言われちゃったりしてー!!
ハッ……れ、冷静にね。気を引き締めて、残りのスケジュールをこなす所存です!




