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夏5日 リーン ローザさんの悩み

月に二回、一泊二日で、隣町からローザさんが村にやってきます。

わたしはちょっと、ローザさんが気になっています。

仲良くなれないかなって。

前に一度ぶつかってしまった時に、優しくしてくれたから。

村にはいないような派手な美貌の女の人だけど、本当は普通に良い人なんじゃないかな。


と思っていたら、ミズキちゃんがローザさんを連れて帰ってきました。

「こちら、ローザさん。リーンに相談があるんだって」

ローザさんがわたしに相談……? なんだろ。

自分で言うのも悲しくなるけど、わたしはあんまり頼りになる方じゃありません。よく言葉も間違えちゃうし……。人に相談されるなんて、責任重大です!


お茶を入れて、コの字に並んだソファーにそれぞれ腰かけます。

わたしの向かいにローザさん。左隣にミズキちゃんが座っています。

ん、なんだろ……。さっきから、ミズキちゃんのうしろに「バイーン!」って書かれているのが気になります。


お茶を一口飲んだ後、ローザさんが口を開きました。

「あの……私のこと、どう思いますか?」

ん……どういう意味だろ。

おきれいですね、とか、実は優しそうだと思います、とか言えばいいのかな。

でも、「実は優しそう」って、失礼な気がする。

困ってチラッとミズキちゃんを見てみると、ミズキちゃんは真直ぐにローザさんを見ていました。

そして、

「すっごく美人ですね!」

と、力強く答えました。

そんなミズキちゃんの背後には、迫力のある文字で「おっぱい!」と書かれています。

これってやっぱり、ミズキちゃんの心の声なのかな。

「そうですよね……やはり、この胸が目立ちますよね」

ローザさんはため息をついて、胸の前で腕を組みます。すると、腕に押されてくっきりとした谷間ができました。

もしかして悩みって、胸が大きなことなのかな。何かフォローしたいけど、何ていえばいいんだろ。

「えっと……そんなことないと思います……」

うぅ……こんなあからさまなフォローじゃ意味ないです。

「そうですよ! そんなことはありませんよ! 睫毛も長いし口元のホクロも素敵だし!」

そう被せてフォローしてくれるミズキちゃんの背後では

「おっぱい! おっぱい! わっしょい! おっぱい!」

と、文字が躍っています。

ミズキちゃん……怒るよ?


「私、自分の容姿が派手なことが悩みなんです。

 こんな派手な服装していて何を言うのかと思うでしょう?」

確かにローザさんは、胸元が大きく開いていてウエストや腰のラインもよくわかるような、色っぽい服装をしています。

「私も、もっと清楚な服が着たいのよ。着てみたこともあるの。

 でもね……壊滅的に似合わなかったのよ……」

ローザさんは胸から腕を下ろし、がっくりと項垂れました。

ミズキちゃんの後ろに「たゆん」という文字が見えたけど、知りません。


「たしかに、きょぬーは服を選ばないと、太って見えたりするからなあ。

 私のいた世界でさ、きょぬーの友達が

 『世の服はひんぬーのためのデザインなのよ!』って言ったし。

 ウエストは入るのに胸が入らない服が多かったらしいし」

あ、ようやくミズキちゃんの背後から文字が消えました。


「この胸がもっと小さければ、普通の服も着れると思うの。

 ねえ、あなた魔法使いなんでしょう? 私のこの脂肪、取り除けないかしら?」

ローザさんが身を乗り出してわたしを見つめます。

ん……できたら力になってあげたいです。

わたしが覚えている魔法の中には良さそうなものはないけど、でも、調べれば良い魔法があるかもしれません。

ただ、わたしは対人魔法の資格を持ってないから、人に対して魔法を使うことはできないんだよね。


「それを捨てるなんてとんでもない!」


突然、ミズキちゃんがソファから立ち上がりました。


「要は貴女に似合う清楚なイメージの服があれば済む話!

 きょぬーは母性の象徴!

 ポケットが無いときに物を仕舞えて超便利!

 溺れた時も浮き輪になってマンボーいらず!

 人生の! いや、人類の宝ですぞ!」


ミズキちゃんはローテーブルに拳を打ち付けて主張。

言ってることはほとんど理解できないけど、たしかに魔法で何とかする前に出来ることがありそうです。


結局、ミズキちゃんがローザさんへ服を作ってあげることになりました。

ミズキちゃんはローザさんの採寸中です。

「事故に見せかけて触ってもいいですか!」なんて冗談も交えつつ、なんだか二人とも楽しそうです。

魔法使いであるわたしに相談しにきてくれたのに、わたしはちっともお役に立てなかったみたい。

ローザさんとも、ミズキちゃんの方が仲良くなったみたいだし。

ミズキちゃんはすごいからわたしと比べても仕方ないのだけど、でも、ちょっと悔しいです。

わたしももっと、人の役に立てるような、みんなと仲良くなれるような自分になりたい。

わたしの取り柄は魔法しかないから、もっと勉強を頑張ろう思うのでした。


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