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夏4日 ミズキ 夏服は保護者との戦い!

制服にも季節が存在する。

軽やかな夏服、重厚なデザインの冬服、どちらも良い!

冬服のスカートにカッターシャツとリボンをしただけの中間服と言うのも、なかなか乙である。

先日、お嬢さんたちの生足半袖を期待して暑い中外に繰り出してみれば、出会うお嬢さんみんな長袖にロングスカートで、王子は愕然とした。

リーンは魔法で日焼けを防げるらしく(うらやま)、長袖ロングスカートではなく春と変わらない格好をしているが。


ここに王子は衣替えを所望する!!


ぶっちゃけリーンの春の服は、中が見えちゃう事件のせいでいまひとつ可愛くない仕上がりになってしまった。サブカル上等の異世界出身者としては当然認められない出来だった。残念なことだ。

でも王子はお姫様の愛で不死鳥のように何度でも蘇るもの!

現状ヒロインがいないので、セルフで何度でも蘇るさ!

夏に向けて、中が見えなくて可愛い魔女っ子服をせっせこ作っていたのである。

サブカルの極み、オタク系演劇部の平部員(王子だけど平だった)、いざ参る!



リーンと私の家には姿見が無い。

雑貨屋に大きな鏡があったことを思い出し、そこで試着してもらうことにした。

まあなんていうか、私も目を潰されたくないからさ、先に保護者様(ホセ)に見せて、許可をもらっておこうかなってのもある。

雑貨屋に行くとヴァニラちゃんが遊びに来ていた。

買い物かと思えば、サボりらしい。ほぼ毎日来ているとのことだ。

ヴァニラちゃんみたいな可愛い子が毎日遊びに来てくれるなんて、雑貨屋って良い商売だな。

ホセは今日はもう熱も下がったらしく、いつもどおりの軽ヤンキーっぷりだ。


「えっと……これを……着るの……?」


新しい服を手渡すと、リーンが困った様な顔でこちらを見てきた。

「うむ」

それはそれで可愛いが、だがしかし、容赦はせぬ!

まあ……あんまり無理強いするとPTA(ホセ)に怒られるから、さじ加減には注意するけど。


「なんか、奇抜な服……だね?」

「私の世界の魔女っ娘のスタンダードだ」


渡したのはカボチャパンツに先が反り返ったトンガリブーツ。付け襟付の丈の短いノースリーブに、付け袖だ。

ポイントはヘソというよりも、腹だしというところだ。

私の趣味だが、何か?

人は喉元をすぎれば熱さを忘れるものである。

ちなみに、着てくれるなら猫耳バージョンも作るぞ。


「お……おなか……でてるよ……?」

「うむ」


ヘソだしじゃなくて腹だしがコンセプトだからね。

さあ、その日焼け知らずの白いおなかを白日の下に晒すがいい!


「ヘソだしなの!? さっすがミズキさん! 流行の最先端!」


ヴァニラちゃんが賞賛の眼差しを私に向ける。

そうだろう、そうだろう。夏のファッションリーダー目指してるからね!

でも、ヘソだしじゃなくて腹だしだからね?


「流行ってるの……? 見たことないよ……?」

しかしリーンは納得いかない様子だ。

まずいなあ、この様子だとそろそろ保護者のストップが入っちゃうぞ。

「うちは田舎だからいないけど、おへそを見せるのが今年のブームって、雑誌に載ってたよ!」

おお、ヴァニラちゃん、ナイス援護!


「ん……、ミズキちゃんの世界では、郵便配達員はこれを着て空を飛ぶんだよね?」

「そうだね」

郵便配達員じゃなくて魔女っ子が、だけど。

一瞬配達員のおじさんが、腹だしカボパンで空を飛んでいるところを想像してしまった。

カオス。

だけどここは異世界で着るのはリーンだから、ビジュアル的には許されるはずだ!


「そっか。ん、着てみるね。ミズキちゃんの世界のこと、もっと知りたいもん」

ぐはっ……なんだろう、この罪悪感。

リーンは着替えのために店の奥に入っていった。

「おい」

「何も言うな」

やめろホセ、そんな目で見るな。

喉元過ぎた熱いものが胃からせりあがってくるだろ!



リーンが着替えている間に、ヴァニラちゃんはロヴァ亭に帰ってしまった。

曰く「そろそろ戻らないとお兄ちゃんに怒られる」とのこと。サボりだからね。


「ミズキちゃん……これ……やっぱり恥ずかしい」

着替え終わったらしいリーンが、店の奥から出てこない。

来ないのならば、私から行こう!

恥ずかしがるお嬢さんには王子のエスコートが必要だね☆

と、リーンの手をやや強めに引っ張って姿見の前まで連れてきた。

結論から言うと、すごく良く似合っている。

そりゃ、私がリーンのためにデザインした魔女っ子服だから当然なのだが、予想以上に似合っている。

これを着ないなんて勿体ない! というレベルで。


「ホセ、似合ってるよな?」

これはどうしても保護者に許可を貰わなくては!

「…………」

だがしかし、ホセにはすぃっと目を逸らされた。

心なしか顔が赤い。

さてはこの純情ヤンキー、照れているな。

「ホセくん、やっぱり、おかしい?」

リーンが不安げに上目づかいでホセを見つめる。

あざとい。さすがリーン、あざとい。

「いや、変じゃねーよ。ねーけど……」

それにしてもリーンのおなか、いいな。おなかのモデルになれそうだ。

「おい、ミズキ」

「あ、はい」

あ、ホセが保護者の顔に戻ってる。

「お前も出せ」

「は?」

「お前も腹を出せ」

王子、純情ヤンキーにセクハラされるという稀有な体験をしました!

まあ、どうもこの世界の人、露出に慣れてないみたいだしな。

異世界と言えばビキニアーマーだと思っていたのに、この世界にはなさそうだし。

リーンひとりに腹だしさせるのは、さすがに可哀想か。

「いいよ」

腹だしな王子衣装かあ。男性アイドルグループの衣装あたりを参考に思い出しつつ作ろうかね。

腹筋割れてないのが残念だけど、仕方ない。

「ん……、ミズキちゃんとおそろいなら……」

リーンも一人じゃないならいいみたいだしね!



ヴァニラちゃんに、「着替えたら店に見せにきてー」と言われていたので、雑貨屋を出たあとロヴァ亭に寄った。


「わ、これがヘソ出しかあ。雑誌で見るより、実際見ると結構だいたん……」

「んっ」

ヴァニラちゃんが感想を言い終わる前に、リーンは頭から白い布に包まれた。

ロバートさんがテーブルクロスを一枚、つかんで投げたらしい。

「お兄ちゃん!?」

「ロバくん……?」

布とはいえ物を投げてくるなんて、ちょっと彼のイメージじゃない。

ヴァニラちゃんもリーンも驚いているみたいだ。

驚いていると、ロバートさんが目を合わさずに言った。


「ごめん。でも、それは駄目だ」


あれ……もしかして、保護者増えてる!?

ロバートさんの反対があって、私渾身の夏の魔女っ子服は、またしても没になったのだった。


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