夏2日 アシュレイ 合宿なんて冗談じゃない!
ミズキが余計なことをノエルに吹き込んだ。
「合宿……!」
ノエルは目をキラキラさせている。
「ボクは参加しないぞ」
「クーは参加するー!」
「クーもしない!」
こういうのは先に断わっておかないと。
だいたいミズキの説明によると、合宿って同じ目標を持って活動しているグループが、目標達成のために泊まり込みで活動することだろ? この村で合宿できそうな集まりって、自警団くらいじゃん。
あとは……うーん……、うちの母さんも合宿できるかもな。
「恋を切らせて愛を断つ」応援会。
でもこの会は、主に熟女の日で完全燃焼できるくらい活動できてるらしいから、合宿は不要だと思う。
そういえばこのドラマのタイトル、今までこれといった略称がなかったんだけど、この前の熟女の会で「恋愛切断」っていう略称に、満場一致で決まったらしい。
切断って言葉……聞くとなんか背筋がうぞうぞするよな。
「僕は合宿したいな。
そうだ! 別に今の生徒じゃなくても、マリーやロバートたちと合宿してもいいよね!」
だからそれ、何の合宿なんだよ。ただのお泊り会なんじゃ。
でも、ノエルって言い出すと結構強引だからなあ。
ボクが合宿もどきに参加しなくてすむようになるなら、マリーたちで合宿するのを勧めてもいいな。
「では、参加者未定の合宿プランを考えたいと思います」
ミズキが議長で話し合いが始まる。
これは先手必勝かな。
「はい」
「はい、アッシュくん」
手を上げて、許可を受けたら立ち上がる。
「合宿の目的は『王子ミズキとの交流を深めること』。参加者は『若人の日に集まる面子』」
ミズキは王子としてちやほやしておけば間違いないだろう。
「よし、採用」
ほらね。
「引率は『ノエル』がいいと思います」
若人の日は、ノエルは基本参加しない。
だから引率としてノエルを組み込めば、ノエルも満足するだろう。
「いいね!」
ほらね。
まあ、しょせんミズキとノエル。ボクの敵じゃなかったみたいだね。
結局、青年団の面々でノエルの家の屋敷を使い、合宿と言う名のお泊り会をすることに決まった。
ボクは当然不参加。
巻き込まれなくて良かった。
その日の夕食時、クーが合宿の話題を出した。
「あら、その日はお母さん、恋愛切断応援会のみんなと旅行に行くのよ。
恋愛切断のロケ地巡りよ! 楽しみだわー」
え、なんか嫌な予感がするんだけど。
「お兄ちゃん、合宿に参加するのよね?」
「多分」
青年団の面々には、当然兄貴も入っている。
ボクは合宿なんてごめんだけど、兄貴はもうちょっと人と交流持った方がいいと思ったんだけど……。
「アッシュとクーも連れて行ってちょうだい。
お父さんは一人の方がいいと思うから」
「わかった」
え、ちょっと。
「クーも合宿いけるのっ?」
「ああ」
嬉しそうなクーに、兄貴が頷く。
何のために青年団で合宿するように勧めたと思ってるんだよ……!
ボクはお泊り会なんて子どもっぽいもの嫌なんだよ!
ボクだけ家で留守番させてくれないかなあ……。
「母さん、ボク家で留守ば……」
「お兄ちゃんの言うこと、よく聞くのよ?」
「……はい」
はあ…………敵はノエルじゃなくて、母さんだったみたいだ。




