春30日 ヴァニラ 訂正無しは一文だけ……
水着よし! パットよし!
さあ来い夏!
恋夏!
と、言いたいところだけど、最近のあたしは良いとこない。
肝試しでヒューさんとペアになるのに、あたしの運全部使っちゃったのかも。
あの日迷惑かけちゃったこと、ヒューさんに謝れてないし。
ていうか、謝る以前に会えてないし。
昨日は、結局お兄ちゃんに怒られるし。
しかもその噂でヒューさんも巻き込んじゃってるし!
相談(愚痴ともいう)をしにホセのところに行こうにも、ホセも巻き込んじゃってるからなー。
ルリに相談したら、「さっさと謝れば?」って。
それが出来たら苦労しないよ!
昨日のうちにホセには謝ったし、お兄ちゃんにも謝ったけど、やっぱりヒューさんには会えないから謝れてない!
何か良い方法ないかなー。
夕方、仕事を終えたリーンがうちに来た。
お兄ちゃんの具合を見にきたみたい。
お兄ちゃんなら今朝からまたバリバリ働いてるよ!
もうちょっと休んだ方がいいと思うんだけど、「どうせ今日はまだ客も少ないだろうし、平気だよ」だって。
そうかもしれないけど! お客少なくてごめんね!
「お手紙を出したらどうかな?」
藁にもすがる思いでリーンに相談してみたら、そんな返事が返ってきた。
お手紙かあ。あたし、自信あるんだよね。
謝罪のお手紙を書いていたはずが、ラブレターを書いちゃう自信。
そんな自信、いらなかったけど!
それにさ……
「手紙は、クーが防衛してて届かないでしょ?」
ヒューさん宛の手紙は全部クーがチェックしてるって、有名だもん。
「ん……わたし経由だとクーちゃんが見ちゃうけど、
ロバくんに頼んで、直にヒューくんに渡してもらったらどうかな?」
そっか! それならたしかにいけるかも!
「お兄ちゃん聞いてた!? 手紙届けてくれる!?」
と、思ったんだけど、お兄ちゃんは渋い顔。
「おれがヒューに手紙……いや、今はちょっと……」
あ、お兄ちゃん、今絶賛ヒューさんと噂中なんだった。
そんなお兄ちゃんがヒューさんに手紙なんて渡したら、次はなんて噂されるか……。
「あ、そういえば、ロバくんとヒューくんってそうなんだっけ。
あれ? じゃあヴァニラちゃんとロバくんはライバルなの?
ん……なんか変なこと言ってごめんね」
リーンは噂のことを思い出したみたい。
ていうかこれ、噂信じてるよ!
「リーン、違うから」
お兄ちゃんはなんだか微妙な表情。
「そうなの?」
「違うから」
ちょっと必死……かな?
「そっか」
リーンは納得したみたい。
よくわかんないけど、お兄ちゃんの眉間の皺がとれて良かった。
機嫌の悪いお兄ちゃん、恐いもん。
「そんなに心配しなくても、今日は若人の日だから、ヒューも来るんじゃないか?」
そっか、今日若人の日だ!
よし、直接謝るつもりだけど、緊張してうまく話せないときのためにお手紙も書いておこう!
空いているテーブル席で手紙をしたためていると、ノエルが早めの夕食をとりに入ってきた。
「手紙を書いているのかい? 添削しようか?」
「そうだよ。添削はいいから。もー、見ないでよね」
学校の作文じゃないんだから、添削とかやめてよね。
ええっと……『本当にごめんなさい』っと。
一応できたけど、これだけじゃなんだか寂しいよね。
もうちょっと何か書こうかなあ。
とか考えているうちにお客さんが増えてきた。
お手紙は後にして働きますかね!
まだ夕方なのにお客さんが多いなあと思ったら、若人の日で夜は入れないから早めに来たんだって。
二日間こなかったから、今日はどうしてもうちでご飯が食べたかったみたい。
そういう風に言ってもらえると、お店もやりがいがあるよね!
この様子だと、お兄ちゃんの噂もすぐに落ち着くかな?
「ヴァニラちゃん注文ー!」
陽気なおじさんの声に呼ばれて、あたしは注文を取りに行った。
午後六時半、七時からの若人の日営業に向けて、いったんCLOSED。
奥に一席だけあるクロスがかかった席のクロスは外して、全部のテーブルを改めて拭いて回る。
あ、あたし手紙だしっぱじゃん。
テーブルに出しっぱなしの手紙を見ると、所々に朱が入っていた。
『ヒューさんえ
※ヒューさんへ
若人の日の迷惑、ごめんなさいでした。
※この前の若人の日では迷惑をかけちゃってごめんなさい。
嬉しかったのでテンパリMAXでした。
※ヒューさんとペアになったのが嬉しくて、テンパっちゃいました。
次はしっかりします。
※もしまたペアになれたら、今度はしっかりしますので、
よろしくです。
※どうか今後もよろしくお願いします!
お兄ちゃんとのラブラブ話もごめんなさいでした。
※それから、お兄ちゃんとホセとの噂のことも、ごめんなさい。
ヒューさんとお兄ちゃん、怪しいなって。
※ヒューさんとお兄ちゃんがあんまり仲がいいので、ちょっと疑っちゃった私のせいです。
誤解とくの頑張る。
※誤解がとけるように頑張ります。
本当にごめんなさい。
※この後に決して変なポエムや恋文を書かないこと!!』
……て、添削されてる。




