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春26日 アシュレイ 掲示板と村長とボク

村の広場に古い掲示板がある。

村長が、時々掲示物を貼り変えているらしいけど、掲示板を見ている人を、ボクは見たことがない。

誰にも見られない掲示物に、何か意味はあるのか?



夕方、ボクは掲示板の前に立った。

クーと喧嘩したら、癇癪を起したクーが喘息を起こして、ボクが怒られた。

喧嘩の内容とか関係なし。

なんでだよ。

腹が立って家を出てきた。

どーせ母さんはクーの看護で手一杯だし、

じいちゃんと兄貴はまだ帰ってこないし。

つまり、誰もボクの心配とかしてないし。

誰にも顧みられない掲示板とボク。

あ、今の無し。

なんかボク気持ち悪い。


自分の思考がなんか嫌になって、目を逸らすために掲示板を見ると、広い掲示板の右下に、「手洗いうがい」のポスターが貼ってあった。

村長、こんなの貼ってたのか。

お知らせとかじゃないなら、確かに誰も足を止めて見ないよな。

それにしても、せっかく貼るなら、もっと真ん中に貼ればいいのに。

なんでこんな、右下に?

村長バランス感覚悪いのかな。

髪のバランスは、きれいにてっぺんだけ禿げてて、悪くもなさそうだけど。

真ん中に貼り直してやろうかな。暇だし。


ポスターの四隅を止めているピンを外す。

すると、ポスターの下、木造の掲示板そのものに、何かが彫ってあることに気付いた。


『世界でぼくは一人きり

               ブルーノ

 誰がぼくをわかってくれるというのだろう

 いや、誰もぼくのことをわからない

 誰がぼくを見てくれるというのだろう

 いや、誰もぼくのことを見ていない

 ぼくは世界で一人きり

 この、見捨てられた掲示板のよう

 世界でぼくは一人きり』


ボクはポスターをそっと戻した。


「見てしまったようじゃな」

「!?」


いつの間にか背後に村長が立っていた。


「それは、ワシの二番目の息子が彫ったんじゃよ」

聞いてないけど。

「あちこちにな……自分の気持ちを彫るのが好きな子じゃった」

はずかしーやつ。

そういえば、学校の机にも『ブルーノ参上』って書いてあるな。


「三番目の息子が体が弱くてな。

 ブルーノのことはあまり構ってやれんかった。

 寂しい思いをさせてしまった」


村長はボクの頭に手を置いて、くしゃくしゃと撫でた。


「今になって、こうやって面倒をみてもなあ……

 あの子に伝わるわけでもないんだが。

 それでもこうして、この詩を隠す作業があの子を想う気持ちになる気がして、

 やめられんのだ」



その後、「暗くなってきたから帰ろう」と村長が言うまで、ボクと村長は少し話をした。

別れ際、ボクは聞いてみた。

「どうして詩を隠しているのか」と。

そしたら村長は

「だってあの詩、恥ずかしいじゃろ?

 いくらブルーノはすでに村を出て行ったとはいえ、

 人に見られたら恥ずかしいじゃろうと思ってな。

 親心じゃよ」

と言って去っていった。



古い掲示板は、右下以外使われていない。


「取り壊してあげろよと」


と、ボクは強く思った。



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