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春25日 マリエッタ あたくしのお友達

異世界からいらしたミズキさん、この村に馴染めているのかしら。

べっ別に心配してるわけじゃないわ!

ただ、あたくしは村長の娘として!

彼女が村の調和を乱す異分子になっていないか気になるだけで!

村の調和を乱さないために、あたくしがいろいろと面倒をみるのは当然だし?

若人の日にでも様子を見れればと思ったのに、あたくしったら、いつの間にか家に帰ってきてしまっていましたし……。

ミズキさんは数日前から学校にいらしていて、子どもたちとは上手くやっているみたいだけど。

……噂ではよく、村中をふらふらしているらしいわ。

暇ならうちにお茶でも飲みに来ればいいのに……。

ミズキさんがこちらにいらした最初の日に、我が家に泊まったらしいのだけど、その日はちょうど隣町に出かけていて、あたくし留守にしていたのよね。

まったく、間が悪いったらないわ。




今日はアンシーがあたくしの家に遊びに来ている。

最近だと、アンシーとアシュレイ、クーリエくらいしか、うちに遊びに来ないわね。

昔はよくディオも遊びに来ていたけど、ディオは一度都会に出て戻ってきてからは、パタッと来なくなったわ。薄情よね。

それにしても、どうして人が寄りつかないのかしら。


「はっ……まさか……あたくしが知らないだけで、

 あたくしの家、幽霊が出るとか言われてるんじゃないかしら。

 だからみんな怖がって、ここに遊びに来ないのね!

 誤解よ! うちに幽霊なんていないわ!」


思わず椅子から立ち上がると、アンシーが無表情のままこちらをチラリと見た。


「それこそ誤解だよ。

 単純に、マリーのお父さんが恐いからみんな遊びにこないんだよ」


お父様、恐いかしら?

確かにちょっと、頭に草を生やしているところは狂気を感じるけど。


「みんな、村長の髪を抜いて育ってきたからね」

「そう……なの?」


もしかして、お父様の禿頭の原因をみんなが作ってきたということ?

大変! あたくし、お父様は村長として慕われていると思っていたのに、ずっと嫌がらせを受け続けるほど嫌われていたの?


「村長の禿は自前だよ。

 あと、みんな村長が好きすぎて髪を引っこ抜いちゃうだけだから、安心して」

「そう……なの」


何だかよくわからないわ。

愛と憎しみは表裏一体とか、そういう感じなのかしら。



「そんなことより、ミズキさんと仲良くなりたいんでしょ?」

「まあ……そう言えなくもないわね」


仕方ないし。気になるし。


「あの人、マリーの髪がちょっと気になってるみたいだよ。

 あの人、人と話すのは得意みたいだし、マリーの方から話しかければ、

 あとの会話はリードしてくれるんじゃない?」


あたくしの……髪?

お父様に続いて、あたくしも髪?


「もしかして、引っこ抜かれるのかしら……」

「それは多分ないと思うよ」




万が一にも引っこ抜かれないように、いつもよりもきつめに巻いて出陣よ!

そんなことで毛根の強度が上がるとは思わないけど、でもほら、きつく巻いてた方が強そうでしょう?

それでももし引っこ抜かれそうになったら、サトウになんとかしてもらいましょ。


「今日は日曜だし、食堂にいるかも」

というアンシーの助言を受けて、ロヴァ亭にやってきたわ。

予想通り、ミズキさんはリーンとテーブルでお茶をしている。


あたくしから声をかければ大丈夫。あたくしから声をかければ大丈夫。


「こ、こんにちは。ミズキさん」


あたくしから声をかければ大丈夫……!


「こんにちは。マリエッタさ……マリーさん」


挨拶返してくれたわ!しかもマリーって呼んでくれたわ!

ふふふっ、これはもう仲良しと思ってもいいんじゃないかしら。


「えっと……素敵な髪型ですね」

「え、ええ。いつもよりきつめに巻いていますの」


ほ、本当に髪の話題を振ってきたわ。

アンシー、さすがあたくしの親友。やりますわね。


「きつめに……あの、触ってもいいですか?」

「ど、どうぞっ。どうぞ存分に? 引っこ抜いてもいいですわ!」


となりでアンシーが物言いたげな目で見てくるけど、

ええ、もう、引っこ抜かれても構わないわ!

友情を前に、毛根なんて無価値よ!


「おお……すごい……」


ミズキさん……いいえ、ミズキは関心したように、あたくしの髪をもふもふしています。

しばらくしてミズキはあたくしの髪から手を放すと

「あの……えっと……」

と、所在無げに視線を彷徨わせ始めたの。


「何かしら? 別に取って食ったりはしないわ。はっきり言ってちょうだい」

あたくしとミズキはもうお友だちだもの。

気を使う必要なんてないわ。


「えっと、じゃあ……縦ロールの穴に指を入れてもいいですか?」

「ど、どうぞ……」


なんだか不思議な要求をされたわ。

でも、ミズキったらとっても嬉しそう。

髪の毛きつく巻いてきてよかったわ。

さあ、思う存分指を入れなさい!


「痛っ」

と思っていたら、ミズキが突然指を引っ込めたの。


「どうしたの?」

「なんか……なんだろう……齧られた?」


齧られた? あたくしの髪に?


「マリー、取って食ったりしないんじゃなかったの」

アンシーが訝しむ目であたくしを見てくるけど、あたくし何も知らないわ!

あ……あたくしの髪……どうかなってるって言うの……?


自分で自分の髪を持ち上げてみる。

あら? 何かしら、ちょっと重い気がするわ。

疑問に思いながら巻きの空洞を覗く……と、


「ピヨ」


黒い円らな瞳と目があった。




犯人は、サトウだったわ。

いつの間にあたくしの髪にヒヨコなんて忍ばせたのかしら。

ヒヨコも迷惑なら迷惑と、はっきり言わないとダメじゃない。

「動物入店禁止」ってことで、ロヴァ亭からは追い出されちゃうし。


でも……


「本当にうちで飼っていいの?」

「うん、ちゃんとお世話してね」


あたくしの家で、ミズキとリーンがヒヨコを囲んで盛り上がっている。


「するする! マリーさんありがとう、大事にするね!」


出自不明のヒヨコは、ミズキにあげることにしたの。

なんだかさらに仲良くなれたような気がするわ。


「名前はどうするの?」

アンシーに聞かれて、ミズキは「うーん……」と顎に拳をあてて考えている。

そしてヒヨコと、あたくし……ではなく、あたくしの髪を交互に見た。


「コロネ……かな」

「ころね?」

「私の元いた世界では、縦ロールのことをコロネって呼ぶことがあるんだ」

「そうなの」


ミズキの世界の言語で、あたくしの髪型を表現した言葉を名前に……。

なんだかちょっとくすぐったいわ。


「コロネ、時々見せに来るね」

といって、ミズキはリーンと一緒に帰っていった。


「ふふふっ」

なんだか自然と笑い声がでちゃうわ。

「よかったね」

と言うアンシーに、あたくしはトンッと体を寄せた。


「さすがアンシー! あたくしの親友! ね!」


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