表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/100

春24日 ディオ キュウジツはどこへ消えた?

マリーに呼ばれて今日は学校の手伝いにやって来た。

教師はノエルなんだけど、学用品の在庫の管理とか、資料の整理とか、事務的なことはどうもマリーがやってるっぽいんだよね。

ハア……せっかくの休日だし、女の子と遊びたかったんだけどな。

ま、デートの予定はなかったけどさ。


ミズキが来てから、オレと仲が良かった女の子の一部がミズキ派になったらしい。

ハア……ただの手軽に遊べる男より、暇人同性王子の方が、さらに後腐れも危険もなく疑似恋愛を楽しめて良いってことかね。

田舎の女の子が保守的だとは思わないけどさ、それでも都会に比べると女の子の人口が全然違うから、相対的にこの村、火遊びしたがる子って少ないんだよね。

ちょっと、都会に戻りたいかも……。



「あとはその箱をそっちの棚に戻してちょうだい」

「りょーかい」


マリーの指示で、歴史の資料が詰まった箱を棚に戻す。

サトウは今日は有休だそうだ。

オレだって休みなんだけど。


「これでよしっと。

 その箱、時々勝手に蓋が開いて、パッカンパッカンうるさかったのよ。

 これで静かになるわ。ありがと」

え、それポルターガイスト的な話じゃなくて?

まあいいや、マリーお得意の気絶を披露されたら面倒だし、言わないでおこう。


そういえば、どうやらマリーはこの前の女装男がオレだとは気付いていないらしい。

変態とかいう不本意な目で見られ続けることはなさそうだ。良かった。



この村の学校は、学校と言っても教室が三つあるだけの建物だ。

ひとつは資料室という名の倉庫、ひとつは空き教室で、実際に生徒が授業を受ける教室は一つだけ。

三つの教室は廊下に沿う形で並んでいる。


資料室を出て廊下を歩いていると、授業中の教室の中に、子どもに混じって授業を受ける、ミズキの姿が見えた。

学校行ってたのか。まるっきり暇人ってわけじゃなかったみたいだ。

「寄っていく?」

とマリーが言うので、なんとなく頷く。


授業といっても、生徒ごとに進捗が違うから、だいたいは自習だ。

わからない時は手を上げてノエルに聞く感じ。


教室に入ると子どもたちは一瞬顔を上げてこちらを見たけど、すぐに自分のテキストに視線を戻した。

学校の勉強より興味を持たれないオレ……ハア……。

いや、ノエルと違ってオレは子どもには興味ないけどさ。


オレたちが教室に入っても、ミズキは顔を上げなかった。

集中してるのかな。

彼女の後ろから机の上を覗く。どうやら読み書きの勉強中らしい。

書く勉強の方かな?

どれどれ。ふむ、以下の文を真似して書いてみよう、か。


『こんにちは』

『さようなら』

『これはペンです』

『わたしはペンです』

『あなたはペンです』


最初の挨拶はともかく、ペンから離れるべきだと思う。

ていうか、この使い道なさそうな例文はどうなんだろう。


「あ゛ー……わからん……」


とか考えていたら、ミズキが机に突っ伏した。


「こんな、『I am a pen.』みたいな例文、書けるようになって何になるのかわからん。

 っていうか、言葉は日本語に聞こえるし自分も日本語喋ってる気分なのに

 実は日本語喋ってないとか、この状況がもうマジ意味わからん。

 読めるんだから文字さえ覚えれば書けるんじゃないかと思ってたのに、

 いざ書こうと思うと文法とかなんとかさっぱりわからない感じなのも……

 なんなんだ言葉って超難しい……」

ミズキは何やらぶつぶつ呻いている。


「よくわからないけど、もうちょっと身近な例文で覚えた方がいいんじゃない?」

なんだか不憫でつい声をかけてしまったところ、ミズキはようやくこっちに気が付き振り向いた。

「あ、チャラ……ディオさん」

チャラ……なんだって?


「こんにちは。いやなんか、『わたしはペンです』って例文が受け付けなくて。

 昔英語を放棄した時のトラウマがよみがえってくるんです」


よくわかんないけど、昔もそういう意味のわからない例文に悩まされたことがあるのかな。

身近な例文かあ……。ノエルに作れって言っても結構厳しそうだよね。

ノエルって、世間知らずってだけじゃなくて、なんか変だし。


「ミズキさんが最近興味持ってることってなにかな?

 できればこの世界のことで」


今日はまあ予定もないし、出来そうならオレが例文作ってみようかな。

ミズキはちょっと考え込んだ後、口を開いた。


「もしかして例文を作ってくれるつもりですか?」

「うん、まあ。うまく出来るかはわからないけどね。

 でも、『わたしはペンです』よりはマシなのが出来ると思うよ」

それ以下の例文を考える方が、たぶんきっと難しいだろうし。


「そうか……だとしたら……アニメの英語放送を見ていたら

 英語を覚えたという話もあるし……」


ミズキはまた何やら考え込んでいる。

顎に拳を当ててちょっと芝居っぽい。

女の子たちからすれば「王子の憂い顔! 素敵!」とかになるのかな。ハア……。


「では、『恋を切らせて愛を断つ』の台詞を例文にしてくれさい」


くれさい?

やっぱ異世界から来たばかりだから、喋る方もちょっと怪しいのかな。


しかし、『恋を切らせて愛を断つ』か……。

興味を持っていることがまさかの昼ドラ!

実はこの子、王子の皮を被った熟女なんじゃ……。



学校を後にしたオレは、ヒューのおふくろさんのサーシャさんに昼ドラの録画を借りに行き、サーシャさんの歴代昼ドラの感想を延々と聞かされて一日を終えた。

奇しくもサーシャさんと半日家デートとなったわけだが、


オレ、熟女は対象外です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ