春21日 ミズキ 小肝試し大会の行方
リーンが
「今日は若人の日だからロヴァ亭に行こ」
と言うので、夜、ロヴァ亭にやってきた。
リーンって大人しそうな外見だし、実際大人しいんだけど、結構社交的なんだよね。
郵便配達やってて、結構人と交流あるせいかな。
というわけで、若人の日のロヴァ亭にやってきたわけだが……
「ラスシャ村青年団による『ドキドキ☆小肝試し大会』!
村長の頭頂の貴重な一本を徴発するのは誰だ!?」
何からつっこもう。
大会だけど小。小肝試し。
韻を踏んでるのはまあいいや。
そんなことより、校長先生のカツラを狙う高校生みたいなこと、いい歳した大人がやってていいのかね!?
いや、ここの人たちは見た目イコール年齢じゃないみたいだけどさ!
でもだいたいの場合は、その見た目以上の年数生きてるんだよね!?
私は女子校だったけど、妹が話してた共学高校と同じノリだよこれ!
しかしペアかあ。
王子、どっちの枠に入ればいいんだろ。
あ、そういえばね、話は逸れるけど、前の世界で女子校に通ってた頃に見た夢の話でね。
何故か自分が共学校に通ってて「男女ペアになってー」って時に、男子の人数が足りなくて、当然のように私が男子側に行くって夢を、何度か見たことあるのさ。
女の子たちが喜んでて、私はそれなりに満足だった。
別に男子と組みたいとも思わなかったし。
でもまあ、所詮それは夢の話で、今現在、小学校卒業以来初の「男女ペアになって」状態なんだけど、王子どっちに入ればいいんだろう。
とか考えてたら、ホセがくじの箱を二つ持ってやってきた。
「こっちから一枚ひきな。番号書いてあるから」
「お、おう」
顎でしゃくって左の箱を示されたので、大人しく従う。
くじには『3』と書かれていた。
「わたしは5番です」
リーンも同じ箱から引いたみたい。
てことは、私、女子枠なのかな。
うーむ……肝試しにおける女子の役割って、
「きゃっこわーい☆」
とかやって、男子の気分を盛り上げることなんじゃ(偏見)。
王子には……無理だぞ……?
せめて武装、スカートが必要だ……!
リーンのスカートをじーっと見ていたら、リーンに「どうかした?」と小首を傾げられた。
女子っぽい!
真似して首を傾げてみたが
「どうした? 四十肩か?」
とホセに心配されただけだった。
十代じゃい。
ペアの相手はロバートさんだった。
この人、金髪碧眼だし王子の一番のライバルな気がするんだけど、リーンに聞いた話だと、この村で一番モテるのはヒューさんらしいんだよね。
優男より硬派、もしくはワイルド系が人気ってことなのかな?
まあだからと言って、こちらのロバートさんがモテないわけでもないんだろうけど。
とか考えてたら、
「よろしくね」
って、ロバートさんに爽やかスマイルされた。
お、おう……先手を打たれた!
が、こっちも負けん!
「よろしく☆」
王子スマイルを返しておいた。
(ちょっと力が入りすぎてしまったあたりが☆に表れている)
「……っ」
そしたらなんか笑われたようだ。
口元隠してそっぽ向かれたけど、これ、笑われてるな。
なんかちょっと見透かされてるようで、不愉快ってほどじゃないけど微妙な気分だ。
ていうか私、年上ってちょっと苦手なんだよね。
王子として周りを甘やかすキャラをやることが多かったからさ。
部活の先輩なら上下関係がはっきりしてるからいいんだけど。
「では一番手! どうぞ!」
最初はルリちゃんとホセのペア。
「カツラの隅っこのにして」
というルリちゃんの指示でホセがカツラから毛を抜く。
プツリ。
「セーフ!!」
ちなみに、どうやってセーフかどうか判断しているかというと、お店に壁には自室のベッドですやすやと眠る村長の姿が映し出されている。
サトウが村長の寝室に置いてきた媒体から送られてきた情報を、リーンが魔法で壁に映し出してるらしい。
この世界、魔法とか聖水とかファンタジックなものもあるし、馬車とかいまだに使ってたりもするけど、冷蔵庫やテレビっぽいものもあったりして、文明は結構進んでるんだよね。
それにしてもこれ、ナミヘイが抜けたら、村長は痛みを感じで跳び起きるのかな。
いいのか? こんな遊びして。
人道的にダメじゃないか?
次のペアはアンシーさんとディオさん。
二人は無言で出てきて、アンシーさんが無言で毛を抜く。
物言いたげな目をしたディオさんをつれて、アンシーさんは下がっていった。
「セーフ!!」
あれ、なんか別に女子の役目って「きゃっコワーイ☆」じゃなくていいのかな?
「次のペアー」
次は3番手の私たちだ。
そういえば私、結構当たる女なんだよね。
演劇に目覚めたきっかけも、小学生の時にクラス劇の主役にくじ引きで選ばれたことだったし。
商店街の福引で、特賞と1等を続けて当てたこともあるし。
でも今回は当てたくないなあ。
校長先生のカツラを吹っ飛ばすならまだしも、唯一の毛を抜いちゃうなんて……。
しかもここの村長恐いんだよ……!
この世界に来た初日に村長さんの家にお世話になったけど、村長さん、めっちゃ厳めしい顔のおじさんなんだよ。
ロバートさんと一緒に、カツラの前に立つ。
「どうぞ」
と、ロバートさんが私を促した。
わ……私が抜くのか~……。
「い、いや……私は……」
当たりやすい奴なんでやめといたほうがいいかと。
「もし引っこ抜いちゃっても、おれが謝りに行くからだいじょうぶだよ」
そう言ってロバートさんは私の背中を軽くポンポンと叩いた。
よ、よし……。
あんまり尻込みしてたら王子が廃る!
「死ぬときは村長の毛根と一緒だ!」
てぇい! プツリ。
壁に映る村長は、昼間の厳めしさとは似ても似つかない安らかな寝顔を見せている。
「セーフ!!!」
見事セーフをもぎ取って観客席に戻る最中、
「……っ。もっと良い物と一緒に死になよ」
と、ロバートさんに笑われた。
「次のペアー」
そして四番手、ヴァニラちゃんとヒューさんだ。
「ひゃいっ」
ヴァニラちゃんも緊張してるっぽい。
やっぱ村長恐いもんね。
ヒューさんの横を、ヴァニラちゃんがロボットのような動きで歩いてくる。
カツラの前に立つと、ヒューさんが「どうする?」という感じにヴァニラちゃんを見た。
けど、ヴァニラちゃんは硬直して前しか見ていない。
「は、はははは、はじめての共同作業です!!」
そしてヴァニラちゃんが宣誓。
私の隣ではお兄さんがまた笑いを堪えている。
ヴァニラちゃんがカツラに手を伸ばし「共同作業」と聞いたからか、ヒューさんもカツラに手を伸ばした。
当然、カツラのそばで二人の手がふれあい……
「みぎゃーーーーー!!」
緊張が限界に達したらしい(?)ヴァニラちゃんが、カツラの頂上あたりをガシッとつかみ、ブチッと大量の毛をむしり取った。
壁の村長に目をやると、目をさまし、目じりに涙をためている。
でも、それも一瞬。すぐに昼の厳めし顔に変貌する。
村長は寝室を飛び出していき、壁に映るのは誰もいない寝室になった。
「こ……これは……」
だれかがごくりと唾をのむ音が聞こえた気がした。
「解散! 解散! さんかーい!!」
シュシュさんの号令を皮切りに、みんながお店のドアから窓から外に逃げていく。
「ミズキちゃん早く! 村長がここにくるから逃げないと!」
と、リーンに促され、私も外に出る。
ドアを出る時後ろを振り返ってみると、
ヴァニラちゃんは毛束を持ったまま未だにフリーズしていて、
ヒューさんはその横でオロオロしていて、
ロバートさんは素知らぬ顔で後片付けを始めていた。
その夜、ラスシャ村に「コラー!!!!」という村長の怒声が響き渡った。




