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春21日 リーン 若人の日と肝試し

「もうすぐ夏ね!」


シュシュさんがジョッキを片手に立ち上がって言います。

今日はミズキちゃんと一緒にロヴァ亭に来ています。


ロヴァ亭は普段はだれでも利用できるのだけど、月に何回か、紳士の日、熟女の日、若人の日があって、その日の夜だけは、その日に合致する人物しか利用することができないの。

例えば、紳士の日ならおじさん、おじいさんしか利用できないって感じに。

とはいっても、「紳士」も「熟女」も「若人」も自己申告制だから、「我こそは若人!!」と思う人なら、おじいさんでも若人の日にロヴァ亭を利用することは可能なのです。

「我こそは熟女!!!!」と、熟女の日に乱入したおじさんは、ボロ雑巾のようになって店の外に転がっていたという話もきいたことあるけど……。

「要するに、同世代の交流の場ってとこかな」と、ロバくんが言ってました。

ちなみにお店を切り盛りするロバくん曰く「熟女の日」が一番疲れるそうです。

ヴァニラちゃんは「どの日もそれぞれ疲れる」って言ってたけど。


さて、そして今日は、若人の日なのです。


「もうすぐ夏ね!」


シュシュさんがジョッキをテーブルにドンして再び言います。

「まだじゃない?」

シュシュさんの恋人のバトさんが店の隅で腕相撲大会に興じているので、ディオくんが相槌を打ってるみたいです。


もうすぐ夏……なのかなぁ……?

春の月が三分の二過ぎたところだけど……。

ん……微妙、かな。


「ホワイトデーの半月後には夏って違和感あるなあ」

と、ミズキちゃん。


ミズキちゃんの世界では、一年は十二ヶ月、春は三ヶ月もあったらしいの。

一年が四ヶ月じゃないなんて、何か不思議な感じです。


「というわけで、肝試ししましょ!」

と、シュシュさん。

……どういうわけなんだろ。

「あいつ、こないだの幽霊騒ぎで自分が幽霊を見れなかったから、幽霊欲が満たされてねーんだよ」

と、ホセくん。

ん……そういうこと……?


「ゆ……ゆゆゆゆ、幽霊は……だ、だだだ……」

「ダダダダー」

「ダメよよよよ……」

「ヨヨヨヨー」


マリーちゃんはなんだかガクガク、サトウくんは……

バックコーラス、かな?よくわからないけど。


「ダメじゃないわ!

 マリー! あんた一人で、幽霊も女装の変態も堪能したんでしょ!

 アタシだって見たいの! そんで拳で語り合いたいの!」


……幽霊と? 拳で?

ん……無理、だよね?

変態さんとだったらいけるかもしれないけど。

シュシュさんの隣でディオくんが「パーでお願いします」って震えてるけど、どうしたんだろ。


「ゆゆゆ幽霊は……ダダダダ……ガクリ」

あ。

「マリーが倒れた」

「もー、しょうがないわねー。じゃあマリーは棄権ってことで。

 サトウ連れて帰って」

「御意」


サトウくんはホセくんと一緒に、マリーちゃんをカゴとかいう乗り物にのせて運んでいった。


「さて、それじゃあ残ったメンバーで肝試し、いこっか!」


うー……本当にやるのかなぁ。

シュシュさん、言い出したら聞かないからなぁ。


「危ないから、ダメ」


ぽつり、とアンシーちゃん。


「夜の森は魔物がでるかもしれない。

 準備が万全じゃないのに、肝試しはダメ」

「ええー」

「ダメ」

「うむむ……わかった……」


シュシュさんが駄々をこねたけど、アンシーちゃんの勝ちっぽい。

「夏になったら、ちゃんと準備してから、やろう」

というアンシーちゃんの言葉に、シュシュさんも少し機嫌を直したみたい。


しばらく雑談していたら、サトウくんとホセくんが帰ってきた。

「肝試し、どうなったんだ?」

と尋ねるホセくんに「なくなったー」とぐったり気味のシュシュさん。

そんなシュシュさんに、


「そんなこともあろうかといい物を用意したでゴザル」


サトウくんが良い笑顔で、カツラを取り出した。




「いい?ルールを確認するわよ」


カツラを片手に、シュシュさんがみんなを見回す。


「このカツラは、ただのカツラではないわ。

 このフサフサ生えた見栄の塊のうち、一本、

 たった一本だけが、村長の頭頂に生えたお宝と繋がっているわ。

 つまり、それがどういうことかわかる……?

 はい、サトウ!」

「その一本を抜けば、実際の村長の頭頂に生えた最後の一本も抜けると言うことでゴザル」


村長、つまりマリーちゃんのお父さんは髪の毛がフサフサ。

だけどそれは偽りの姿で、本当はカツラを被っているの。

これは、村中の公然の秘密です。

まったく髪の毛が生えてないというわけじゃなくて、頭頂部以外には、まだ結構生えています。

ただ、頭頂部だけはツルっとしていて、てっぺんに一本だけ、ちょっと長めの髪の毛が生えているのです。

シュシュさんが手に持っているカツラに生えた髪の毛のうち一本だけが、その村長の髪の毛とリンクしているみたいです。

と、いうことは……


「ここまで聞けば、やるべきことはわかるわね?

 ラスシャ村青年団による『ドキドキ☆小肝試し大会』!

 村長の頭頂の貴重な一本を徴発するのは誰だ!?

 引っこ抜いた人は、後日村長に自分で返しに行ってね!

 肝試しらしくペアを組んではじめるよー!」


肝試しというより、罰ゲーム付のスリルゲームってところかな。

ん……村長の髪は、また生えてくるん、だよ、ね?


「ぃよし! やるわ! やってやるわ!」

お皿をカウンターに片づけに行くと、ヴァニラちゃんがなんだかすごく気合を入れていました。

「すごい気合だね」

「勝負はもう始まってるのよ!」

といいつつ、ヴァニラちゃんは精神統一の体制に入った模様。

ん……たしかに、村長に抜いちゃった髪の毛を返しに行くの、恐いもんね。


「ヴァニラは、誰とペアになるかが大事なのよ」

と、ルリちゃん。

誰とペアになるか、かあ。

ん……運が良さそうな人とがいいかなあ。

あ、でも、一本しかないなら運が良い人の方が引きやすい……?

わたしはあんまり運が良い方じゃないから、運が良い人と足して割ってちょうどいいくらいになったり……?

んー……よくわからなくなってきました……。


「頼りになるのは、自分だけよ」

ルリちゃんは落ち着いてます。

ん、わたしも、なんとかこの戦いを乗り切ろうと思います!


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