春17日 リーン ヴァニラちゃんのセクシー悪女への道のり
手紙を配達しにロヴァ亭に行くと、ヴァニラちゃんが鬼気迫る表情で雑誌をめくっていました。
わたしが来たことには気づいてないのか、雑誌から一瞬も目を離しません。
「ヴァニラちゃん、どうしたの?」
奥から出てきたロバくんに手紙を渡しつつ聞いてみます。
「うん、おれから言えることは、あの雑誌の特集が『これで確殺(はあと)セクシー悪女になる方法』だってことくらいかな」
テーブル席の椅子に座ったヴァニラちゃんの足は、床に届いていません。
わたしも身長は低い方だけど、ヴァニラちゃんはさらに小さいの。
「これ、良かったら食べていって。ヴァニラと一緒に」
そう言って手渡されたのは、プリン。
たしか、ヴァニラちゃんの好物だっけ。
プリンを持ってヴァニラちゃんに近づくと
「は! プリンの気配!!」
ヴァニラちゃんがガバッと顔を上げました。
プリンの匂い、とかじゃなくて気配なんだ……。
ん、たしかに匂いはあんまりしないけど……。
「何々食べていいの!? お兄ちゃんが!?
やたー! お兄ちゃんメタボ!!」
「太っ腹な」
ヴァニラちゃんは大喜びでプリンを頬張り始めます。
口の端にカラメルついてますよ。
机に広げたままの雑誌では、背の高そうなモデルさんが、色っぽい服を着て、真っ赤なルージュを煌めかせて、艶やかに微笑んでいます。
「お兄ちゃんお代わりあるの? ねえねえ!」
「さて、風呂掃除と交換、かな?」
「するする! プリンちょうだい!」
セクシー悪女への道は、どの面からも通そうです。