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春14日 クーリエ アッシュは甘いのです!

雪の日のあたし、クーのディフェンスをかいくぐり、ヒュー兄にチョコを渡した猛者は少ない。

言っとくですけど、クーのディフェンスを越える力もないくせにヒュー兄にチョコを渡そうとする女は、ただの不届きものですよ!

身の程を知るのです!



今日は花の日。

ヒュー兄が花の日を認識してるとも思えないですけど……

でも、万が一ってこともあります。


「万が一、ヒュー兄に本命がいたらどうしよう……」

「ありえねーだろ」


クーの呟きに即座に返答してくれるのは、アッシュ。

正確にはアシュレイ。クーも本当はクーリエです。

でもヒュー兄はヒュー兄ですよ!

アッシュはクーの双子です。


「そうかなあ。ヒュー兄だってお年頃だし、わからないよ」

「兄貴は鍛冶以外興味ねーだろ。

 工房にいるか、たまにロバんとこに酒飲みにいくくらいじゃねーか。

 僕は嫁が来るかの方が不安だよ」

その時はクーがお嫁さんの代わりになるからいいのです。


でも、ヒュー兄のお嫁さんの座争いは熾烈。

そしてその熾烈な戦いはすでに始まっているのです!

そのことをアッシュはわかっていません。

「アッシュは甘いです!

 クーは昨日工房の土間に飴を落としました。

 今からその飴を見に行ってみましょう」

ヒュー兄は格好いいのです。

イケメンは飴。女は蟻さん。

蟻さんはわずかな隙間からも侵入して、飴に群がるのです!

あれを見ればアッシュもいかに自分の考えが甘いかわかるはずです!


「よくわかんねーけど、落としたらちゃんと片づけろよな。

 僕今からノエルんとこに勉強でわかんねーとこ聞きに行くからパス」

もたもたしてるアッシュを引っ張ってゴーなのです!

「こら!ひっぱんな! つか走るな! また喘息でるぞ!」

後ろでアッシュが「全力でる」とか何とか言ってます。

まだ全力じゃないのです。

お望みとあらば

「全力出します!」

全力で走りますよ!

「スピード上げんな! 話聞けー!!」



「ひゅー……ひゅー……ヒュー兄……遊び来たです……」

ちょっと張り切りすぎました。

肺がゼイゼイして喉がひゅーひゅー言います。

決してヒュー兄を三回読んだわけじゃないです。

「ほら見ろ。たく、しょうがねーなー」

アッシュが背中をさすってくれます。

「あれ? 兄貴いねーじゃん」

ほんとだ、ヒュー兄がいません。

工房でお仕事してると思ったのになあ。

ロバ兄のところでしょうか……それともまさか本命にお菓子を渡しに……!?

喘息のせいか、目に涙がたまってきます。

「落ち着けって。

 ロバに包丁の手入れ頼まれてたはずだから、きっとロバに届けにいったんだよ」

「うぐ……いた、痛いです……っ」

アッシュに袖で目をゴシゴシされます。


「そんなことより、なんか見せたいものがあったんだろ」

そうでした! アッシュに見せたいものが……

「見せたいもの……なんだっけ?」

何だったでしょう。

「知らねーよ……」

アッシュががっくり肩を落としてます。

「なんか、落とした飴がどうとか言ってたぞ。あ、これのことか?」

アッシュが、土間に落ちた溶けかけの飴を指さします。

飴には蟻さんが黒集りになっていて、扉の隙間から蟻さんの行列ができてます。

「で、これがどうしたんだ?」

「さあ?」

「『さあ?』ってお前なぁ……」

「よくわかんないけど、おなかすいた」

蟻さんがごちそうを食べてるのを見てると、なんかね。

「はあー……まったく、しょうがないな……ほら、手出せ」

「なあに?」

両手を出すと、アッシュはクーの右手をひっくり返して、そこにキラキラしたお花を乗っけたのです。

ちょっと甘い香りがします。

「飴だよ」

「食べていいのっ?」

「だから渡したんだろ」

「わーいっ」

ぱくり。

口に入れると甘くて、そして……

「あっひゅ……こえ、ひたひ……(アッシュ、これ痛い)」

「ああ、花の形だから、食べにくいか」


口の中、ごつごつ痛い。でも甘い。

なんとなく、アッシュに似ていると思ったのです。

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