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9話 魔法

  「ラナ、大丈夫ですか!」


  列からだいぶ離れた場所にラナを座らせる。 道中、ラナに薬を飲ませたがあまり効果が見えない。

  それでも、ロナを心配させないように笑顔を作った。


  「大丈夫だよ、お姉ちゃん。 もう、慣れっこだよ」

  「変な気を使わなくていいです。 横になった方がいいですか?」


  ロナのローブを丸めて枕にすると、ラナを横たえた。


  「うん、さっきよりは、楽になったよ」

  「そうですか……」


  楽になったと言っても、断続的に咳をしている。

  こんなとき自分が代われたら、と何度思ったことか……。

  何故、ラナは苦しまなくてはいけないのか。

  何故、私にならなかったのか。

  何故、ラナは笑顔を作れるのか。

  苦しいはずなのに、つらいはずなのに

  どうして私はラナになにもできないのか。

  大切な妹のためになにもできない歯がゆいさに、苛立ちすら覚える。

  私はそばにいるぐらいしかできない。

  こんな姉を許してください。


  「……お姉ちゃん。 怒ら、ないの?」

  「何をですか?」

  「魔法、使ったこと……」

  「後でしっっっっかり説教しますから、今は治すことを考えなさい」


  二人して少し笑った。


  「もう少し落ち着いたら、寝なさい。 早く治してしまいましょう」


  「そうだね」とラナは答えて目を閉じた。





  足音が聞こえた。 正確には草を踏み鳴らす音だ。

  まだ空は暗く近くに魔物が来ているのかもしれない。

  せっかく、ラナも眠りにつけたというのに……。

  相手に悟られないように腰を屈めて忍び足で、音のする方に進む。

  幸い、ここは背の高い草で身を隠すにはもってこいの場所だ。 相手に気づかれずに一撃で沈めることもできる。

  音を出さないように草を掻き分け進むと、音が次第に大きくなった。

  近いですね。

  柄に手をかけて草の間から相手を確認する。

  大きな黒い影が見えた。

  二足歩行しているところを見ると、熊の魔物ですか。

  向こうはあたりを見渡して、何かを探しているようだった。

  こっちには気づいてないようですが、このあたりをうろつかれたら困ります。

 

  「確かにこっちに行ったと思うんだけどなぁ……」


  今、言葉を使いましたか!

  まさか、人?

  首を伸ばして顔だけを出してよく確認してみると、なるほど人だ。 しかもさっき狼の魔物と闘ってた男の一人だった。


  「私たちになにか用ですか?」


  草むりから姿を現して、男に話しかけた。

  男はすぐにロナに気づき、人当たりの良さそうな笑顔を作った。


  「君の連れが魔法を使っただろ? 心配で様子を見に来たんだよ」

  「馬鹿にしに来た、の間違いては」

  「何故そんなことを?」

  「あなただって知ってるでしょう。 魔法が使えるのは死が近づいてる人だけだってことに」

  「あぁ……、知ってるよ。 痛いほど……」


  何か思い出したくないことでもあったのか、渋い顔をした。

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