8話 ラナの容態
ラナがロナのいるところを指差し、狐みたいな生き物に指示する。
「お姉ちゃんを助けて!」
「きゅっ!」と短く鳴いて、前脚を地面に付けて駆け出す。
魔物は絶えず尻尾をふるって、ロナを叩き続けている。
ロナもなんとかこの状況から抜け出そうとするが、打たれる度に身体が硬直してうまく動けないでいた。
魔物はいち早くラナの出した狐に気づき、最後に強くロナを叩き後ろに距離を取った。
身体のあちこちに傷をつくったロナの前に狐が躍り出て、魔物と対峙する。
「これは……、やってしまったのですか」
ちらっとラナの方に目を向けると、青白い光が見えた。
「早く終わらせないといけませんね」
また魔物に目を戻す。 低く唸ってロナたちを威嚇している。
狐も同じように威嚇する。
先に動いたのはラナの出した狐だった。
普通の動物では考えられない跳躍力を見せて、尻尾のコブを使って襲い掛かるがバックステップしてかわされ、代わりに地面に穴が空いた。
あんなのまともに喰らったら、だるま落としのように身体の一部が飛んでいきそうだ。
私の身体で想像してみたらぞっとした……。
おっと、私も攻めないと!
剣を強くにぎて、魔物の後ろに回り込む。
狐と目で会話して、後ろから斬りかかる。
魔物は絶えず顔を後ろにムケテ、尻尾をふるう。
「ワンパターンですね!」
また剣を盾にすると、尻尾が剣に巻き付く。
しかし、尻尾がロナの身体を打つ前に身体を沈めて回避する。
そのため剣にぐるぐる尻尾が絡まり、魔物の動きに隙ができた。
それを見逃さずに狐が魔物に接近して、コブを顔に叩きつけた。
鈍い音が鳴り、魔物が倒れた。
私の想像では頭がポォーンと飛んでいくのを想像したけど、普通でしたね。 もしくは魔物が頑丈なのか、手加減したのか……。
そんなことより……
「ラナは!」
ラナの方を見ると身体をくの字に曲げて咳き込んでるようだった。
「ラナ!」
ラナの手から羊皮紙が滑り落ちて、青白い光が消えた。 すると、狐の身体が砂のように散って消えてしまった。
すぐにラナの元に駆け寄って背中を撫でてやる。
「魔法だ……」
「じゃあ、あの娘は……」
「不治の病に……」
馬車の影から顔だけ出して、ぼそぼそと商人たちが口にする。
キッと商人たちを睨み付ける。 商人たちは慌てて顔を引っ込めた。
ラナの肩を出して、ゆっくり列から外れる。
「だから、なにもしないでって言ったのですよ……」
声に出さずに心の中で愚痴をこぼした。