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6話 野宿

  道中、特に問題は起こらず予定通りフェリスの町に着いたが、荷物検査の列を見て愕然とした。

  危険物を町の中に持ち込ませないため、この検査は重要である。 ましてや貿易が盛んに行われるフェリスでは、検査の重要度も上がってくる。

  それにしても、すごい行列だ。 一番前の荷車が、手のひらサイズに見える。


  「これは……、今日中に入れそうにないですね……」

  「それっぽいね……」


  馬から降りて列に加わる。


  「少し薪を取ってくるので、この子をお願いします」


  ロナが乗ってきた馬の手綱をラナに渡して、近くの山に入っていった。

 

  「魔物に会ってもお姉ちゃんなら、大丈夫だよね……」


  ロナから受け取った馬を撫でながら、小さく呟いた。




  日が完全に落ちる前に、ロナが手に一杯の薪を抱えて帰ってきた。


  「お姉ちゃん、大丈夫だった!!」


  すぐにロナの元に駆けつけて怪我がないか確かめたいが、馬も見てないといけないうえに、この列から抜けては元も子もない。

  できるのは精々早く来るように手招きをするだけだった。


  「そんなに慌ててどうしたのですか」


  クスクス笑いながら小走りでラナの元に行くと、身体のあちこちを触られて怪我がないことを確かめるとホッと息をついた。


  「あまり進んでないみたいですね」

  「半分も動いてないよ」


  ため息混じりにラナが言う。

  余程、検査に時間がかかるようだ。

  この列に並んでいるほとんどが、大きな馬車にいっぱいの商売品を積んでいるのだから時間がかかるのはしょうがない。

  だが、それで安全な町に入れないのから話は変わってくる。

  こんなところでほったらかしにされたら、生きた心地がしないだろう。

  現にロナたちの後ろに並んでいる男は、ソワソワと周りを見て落ち着きがない。

  無理もない、もう日が落ちる頃合いだ。 人の時間ではなく、魔物の時間になる。




  門が閉められた。

  また外に何人もの人が残されている。 その中にはロナのラナも含まれていた。

  予想はしてたものの実際に起こると、がっかりするが仕方ないとわりきり野宿の準備をする。

  仕事柄、野宿には慣れている二人はささっと夕飯のスープを作る。

  ロナが集めた薪に火打ち石で火を付け、小さな三脚と鍋を出した。

  その中に水筒の水を入れ、ラナが作った鶏ガラスープの素を入れ沸騰するまで煮詰めて完成。

  二人はポーチに取り付けていたコップを取り外して、スープを注ぐ。


  「暖まるねぇ」


  一口スープを飲んだラナが目を細めながら息を吐く。

  熱い息が外気に触れて白く見える。

  ロナも同じようにスープを飲んでから息を吐くと、息が白くなるのが見えた。


  「はい、お姉ちゃんこれ!」


  ラナの手のひらに白い饅頭が二つ乗っていた。

  若干眉を潜めながら一つ取りにおいを嗅ぐが、なにも変なにおいはしなかった。

  「栄養満点饅頭」と言ってラナは一口で饅頭を食べた。

  美味しそうに口を動かして飲み込む様子を見てからロナも饅頭を少しかじる。

  中にはつ、ぶあんが入っていて甘く普通に美味しかった。

  これのどこが栄養満点なのか疑問に思ったが、成分を聞くのが怖くて黙って残りも口に入れスープで流し込んだ。

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