3話 行路師
魔物をすぐに対処したおかげで、予定していた時間通りに最初の町に着いた。
おやつの時間もあってか、町には甘い香りがそこらじゅうに漂っていた。
「お姉ちゃん、ドーナツの焼けるおいしいにおいがするよぉ……。 あっ! あっちでアップルパイ焼いてるよぉ……」
歩き疲れてぐったりしているラナが、さっそく甘いにおいや物につられフラフラしている。 このままだと、どこかに行ってしまいそうなので姉は咄嗟にラナの手を握り、引きづりながら歩いた。
「まずは宿を探すのが先です。 おやつはその後でいただきましょう」
「ええええー!! そんなああああああああ!!」
まずは身体を休める宿屋を探すことから始めないといけない。 野宿だけはしたくないし、なによりまだ歩かないといけない。 そのためにも堅い地面で寝るよりも、フカフカのベットで寝た方が体力と英気を取り戻せるだろう。
それにシャワーも浴びたい。
ほどなく町の中をさまよっていると宿屋の看板を見つけた。 レンガで作られたオシャレな建物で宿泊費が心配になるほど立派で美しい建物だった。
ドアを開け、中に入ると奥に受付のカウンターがあった。 その中で黒の制服を着こなした白髪の老人がニッコリ立って待っていた。
「いらっしゃいませ。 本日はどのような部屋をお希望ですか?」
「シャワー付のツインロームを一晩お借りしたいのですが、空いてますか?」
「少々、お待ちを」
老眼鏡をかけて名簿をすばやくチャックしていく。 きっとこの道のプロなのだろう、 十秒もしないうちにチェックし終わると書類を引き出しから出して姉妹に見せた。
「お部屋を一晩お借りしたい、とのことですので一五〇〇ペルいただきますがよろしいでしょうか?」
「問題ありません。 ここにサインすればいいのですね」
老人の返事を聞く前にペン立てからペンを引き抜いて、ラナの分も名前を書いてしまう。 書き終わるのを見計らって書類を受け取り、名前を確認する。
「お疲れ様でした、 ロナ・フェーリエ様、ラナ・フェーリエ様。 私がお部屋までご案内いたします」
鍵がしまってある棚から一つの鍵を取り出し、カウンターから出た。
「お二人のご様子から旅をなさっていると拝見できますが、どのようなお仕事をしておいでなのでしょうか?」
「私たちは、行路を作る行路師です」
「ほほぅ、その歳で役人ですか」
道なき道を歩き新たな道を作る、それが行路師の仕事である。
行路師は町の役職であるため、基本的には町の活性化のために働くことが多い。
その一環として、町から町への道を作ったり、周りの魔物の分布や討伐などもやっている。 一昔までは傭兵の仕事であったのだが、傭兵をずっと武力として雇用していると金銭的な問題が発生した。
傭兵は、一仕事ごとに金を要求するためすぐに予算は底をついた。 そのため「傭兵」を「行路師」と改名して役人として雇用した。 役人となれば月に一定の給料を支払うだけで済むため金銭面は解決したが、元が金に目がない傭兵であったため、次々に辞めていった。
おかげさまで、行路師はいつでも人材不足であるためいろんな町に出張をしては帰って、また出張してはの繰り返しで休む暇がないほど忙しく働いてる。
それなのに、給料がちっとも増えないのは納得がいかない……。
しかしそんな行路師でもやっててよかったと思える一面もある。
ロナとラナも今までいろんな町に出張して道を作り、町の活性化に協力した。 そのたびに町の人からお礼を言われたり、ご飯をごちそうになったりとうれしい一面もあるが、一番は新しい町に行くのが楽しくてしょうがないことだ。
今回の出張先であるフェリスもどのような町なのか、どのような人がいて、どんなに活気があるのだろうか、そんなことを考えていると心がそわそわしてくる。
これだから行路師は辞められない。
「お仕事は楽しいですかな?」
老親が優しい笑顔を見せながら聞いていた。 ロナとラナは声を合わせて言った。
「はい、楽しいです!」




