表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/32

27話 夜の会話

 北の山に入ってずいぶん時間が経った。 お日様はすでに地平線の彼方に沈みそうだった。


「まだですか、もう日が暮れてしまいます」

「もう少しだ。 ……いや、向こうから来るみたいだ」


 クリムの一言でロナとラナはあたりを見渡した。 まわりには魔物の姿はなく、草木をかき分ける音もしなかった。

 緊張した空気の中、上からクリムが友と呼ぶ魔物が現れた。 人間を(いぬ)にしたような姿をしており成人男性二人分ぐらいの大きな身体を持っていた。


「久しいな古き友よ」


 クリムは狗の真ん前真で飛んでいった。 狗はきつい目つきをしていたが、クリムの姿を見ると目つきは柔らかいものになった。


「あぁ……本当に久しいな。 それに生まれ変わりをしたのか」

「正確には生まれ変わりではないが、それに似たようなものだ」

「似たようなもの……?」


 それからクリムは自分にあったことと、ラナのことを話した。




「それは災難でしたな、ラナ殿」


 狗は自分の足をバンバン叩きながら笑った。

 話終えた頃にはお日様は沈み、代わりにお月さまが顔を出していた。

 ロナたちは仕方なくここで野宿をすることになった。 ロナはいつ魔物が襲ってくるかまわりに気を配りながら枝を集めてたら、「他の生き物は来んよ」と狗が優しい笑みを浮かべて言った。

 確かにここに来るまで魔物はおろか動物にも会ってない。 他の生き物がこの狗を避けている、ということだろうか。

 ある程度の枝を集めてところで元いた場所に戻ると、ラナがたき火用に石で円を作っていた。 そこに拾ってきた枝を入れて魔法で火をつけてもらった。


 「それで狗、なぜここに来た?」

 

 火がつくなりクリムが狗に問いかけた。 狗はあごをポリポリかきながら、


 「竜の魔力を感じたものでな、来てみた。 おかげで厄介ごとに巻き込まれそうになっただな」

 「厄介ごと?」

 「この先にある町を襲撃するから儂にも手伝えっと言われた」


 狗はフェリスの町がある方角を指差した。


 「何と答えた……」

 「竜なら、何と答える……?」

 「この姉妹の味方になる」


 間を置かずに即答した。 その答えにロナとラナは同時にクリムを見た。 クリムもちらりとロナたちを見て、また狗に視線を戻した。


 「生きるためとはいえ、この姉妹には迷惑をかけた。 それにこっちの娘は私の教え子だ」


 尻尾でラナを指した。 それにつられ狗がラナを見たので、ラナは自然とお辞儀をしてしまった。


 「死なせたくはないのだ。 この二人を」


 ラナは「おぉぉ……」と感心の声を上げた。 狗もそうかと呟き、意を決したように言った。


 「ならば儂は古き友の味方になろう。 死なせたくないしのぉ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ