21話 甲殻類の魔物って……
翌日、三人は役所に来ていた。
ロナとラナは、昨日頼んでおいた周辺の魔物の分布図を取りに、ヴァンス薬の見分け方の講義の準備をしに来た。
ロナたちは、地図を受け取るとすぐに外に出た。
さっそく中継ポイントになるところを探しにいく。
山は無理でしょうね。 となると西の崖になりますか。 少し整備すればいけるでしょう。
「西の海岸に中継地点を作りますが、ラナはどうです?」
「それでいいんじゃない。 魔物も一種類しかいないみたいだし、楽でいいと思う。 それにうまそうだし」
ロナの横から地図を見ていたラナが口角をあげてほくそ笑む。 地図の西には、六本脚と大きな鋏を持ち、横にしか動けない甲殻類の魔物の絵が書いてあった。 この甲殻類はとりあえず美味で、大勢の人を虜にしてきた。 しかし、それは魔物ではない甲殻類のことで魔物の方は美味なのかどうかわからない。 おいしそうではあるが、魔物を食べたことがないのでなんとも言えない。
「……食べられると思います?」
「あの姿してるんだし、イケるでしょ! イケなきゃ怒る!」
鼻から盛大に空気を吐き出して、への字に口を曲げる。 アレも買うとなると高くてなかなか手が出せないから、魔物を倒してそのついでにタダで食べたいのだろう。
魔物も倒せて食べることもできる、まさに一石二鳥。
「お姉ちゃん、早く行こ!」
居ても立っても居られない様子だったラナが、ロナの手を取って駆け足で西の海岸に向かって走っていった。