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2話 いざ、出発!

 これからこの姉妹が行くのはフェリスという、ここ十年でできた町だ。 この町は海に面している所が多くさまざまな海産物が取れ、また貿易のために多くの商人や海産物を求めて訪れる人で、にぎわっている街だ。

 しかし、多くの人が訪れるため用意していた行路だけでは夕方までに町に入れないという問題が発生した。

 そこで、この姉妹の元に「新しい行路を作ってほしい」と依頼の手紙がきた。


 「ラナ、まだですか? 急がないと明るいうちに着きませんよ」

 

 家の玄関の前で、身を包み込むほどの大きなローブを着てゴーグル付きのヘルメットをかぶっている姉が、手をメガホンにして二階で支度しているラナに呼びかける。


 「今行くから!」


 扉が勢いよく開く音が聞こえると、ドタバタと急いで階段を降りてきた。

 ラナも姉と同様な恰好で身を包んでいる。


 「お待たせ」

 「次からはもっと急いでくださいよ」


 二人は玄関に置いてあるランタンに火を灯すと外に出た。 外はまだ朝を迎えまいと雲が広がり、灯は何一つなかった。


 「お姉ちゃん、ちょっと持ってて」


 姉にランタンを渡すと、家の地面を手で払いのけた。 すると、土汚れた紙の一部が顔を覗かせた。 ラナはその紙に手をかざして何かを呟くと、また紙を土で隠した。


 「ありがと、お姉ちゃん。 行こ!」


 ランタンを受け取り、暗い夜の道をランタンの明かりを頼りに進む。

 基本的に舗装された道の上を歩く。 これは自分の身を守ることにもつながってくる。

 舗装された道というのは、このあたりに魔物はいないことを意味している。 逆に舗装されてない道は魔物がいることを意味している。

 だから、人々は舗装された道だけを歩きそれ以外の道は極力入らない、という決まり事が共通認識として存在し、夕方になったら町の外に出ないという裏の決まりもあった。

 人間は朝に起きて、夜に寝るという生活サイクルを持っている。 この生活サイクルというものは生きている者、全員が持つものである。 虫や動物そして、魔物もそうだ。 魔物の場合は夕方に起きて、朝に寝るという人間とは真逆の生活サイクルを持っている。 例外な魔物もいるが、大抵の魔物はこのサイクルに従って行動している。

 魔物が寝ている朝や昼ならば、行動範囲も極端に狭まり安全だが、夜になるとその行動範囲が広がり舗装された道周辺でさえ魔物は現れるようになる。

 だから、この世界ではお日様があるうちは人間の時間となり、お月様が出ると魔物の時間になる。

 しかしラナとその姉は、そんな魔物の時間を歩いている。

 いくら舗装された道であっても一概に安全と言えない時間帯だが、この道の付近に魔物がいないのは確かだ。 それに無闇に歩くよりは、よっぽど安全と言える。 エサを探してここまで来なければ、まず魔物に会うことはない。


 「そういえば、フェリスってどこにあるの?」

 「ここからずっと西に行ったところにあるみたいです。 馬もないので到着には時間がかかりますが、四日後にはフェリスに着く予定でいます」

 

 地図をランタンで照らしながらフェリスの町までの行路を確認した。フェリスに着くまでに二、三回別の町に寄って、最終目的地であるフェリスを目指すのが今回の旅だ。


 「最初の町はどれぐらいで着く?」

 「そうですね……、このまま何事もなければおやつの時間ぐらいだと思いますよ」

 「おやつかぁ……、何かおいしいものがあるといいなぁ」


 顔をほころばせてたラナと笑い合って夜道を進む。




 空が白んできた時に、一匹の鳥類の魔物と鉢合わせた。 おそらく巣に戻るところだったのだろうが、その時に運悪くこの姉妹が通りかかってしまった。

 魔物は口を大きく開けて威嚇し地面を蹴っていた。


 「これまでノーミスで来たのに、なんか癪に障りますね……」

 「お姉ちゃん、遊びじゃないんだからさ……」


 いつしか『魔物と出会わないように朝を迎える』というゲームを勝手に始めていた姉に呆れを覚えるラナを尻目に姉は、ローブで隠してあった剣を抜こうとした。

 それを見たラナは、慌てて姉の前に躍り出た。


 「向こうも、もう寝る頃だしここは私が穏便に!」


 ローブで見えないが、腰に巻いてあったポーチから饅頭ぐらいの白い玉を出すと大きく開かれている口に目掛けて思いっきり投げた。

 狙い通りに口の中に入ると、魔物は驚きそれを飲み下した。

 すると魔物の身体が痙攣し始めた。


 「何を食べさせたのですか?」

 「健康サプリ兼シビレ薬」


 ポーチの中からもう一粒取り出して姉に見せると、ため息をついた。


 「また作っていたのですか……。 栄養は食事で摂るのが一番です」

 「そ、そうだけどさ……忙しい時には便利なんだよ……」

 「口答えしないでちゃんと食事を摂ること、いいですね!」

 「はぁい……」


 しゅんと肩を縮めて反省するラナにさらに姉はたたみかける。 


 「それとシビレ薬とは、どういう意味ですか?」

 「それは、調合を間違えて……」


 目を合わせず、ごみょごみょと言い淀んでいるラナに再度ため息をついた。


 「それでどのぐらいシビれていたのですか?」

 「小一時間ぐらい……かな」

 「だとすると、魔物に効くのは半分ぐらいですか。 それだけ効けば十分ですね、さっさと行きましょうか」

 

 気持ち早めに歩きその場を後にする。

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