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18話 現状

 「恥ずかしい話、予算がないのです。 この町は海に面しているため多くの商人が寄ってきます。 それは町に活気が出てこちらとしてもうれしいことなのですが……」


 メルクは少し言いにくいような素振りを見せた。 町の管理を預かる役人であるのだから、町の悪い点は言いたくないのだろうか。

 ロナもラナも同じ役人であるため、メルクの気持ちは分かる。

 けど、それを見てみないふりをするのは間違っていると思う。

 人間のやることだ、不備なところはある。


 「うれしいことですが……」


 ロナは先を促した。

 メルクは唾を飲んでから口を開いた。


 「不法な薬が流通しているのです……。 出どころはまたはっきりしてませんが、どこかの商人が荷物に薬を隠して持ってきたみたいなのです」

 「それで、荷物検査にあんなに時間を?」


 メルクは頷いた。


 「それで予算は人件費に当てている、と」

 「ええ、しかし結果は芳しくないですね……。 職員も必死になっているのですが、薬の見分けがどうしてもできないと……」


 メルクは少し俯いて下唇を噛んだ。


 「それでしたら、いい人を紹介しますよ。 格安で」


 ロナは笑顔である人を紹介した。




 そのころヴァンスはベットの上で考えていた。

 雇い主に「ロナたちの様子を見てくる」と言ったら、もう戻ってくるなと荷物と金を放り投げられてクビを宣告されてしまった。

 つまるところ、今無職なのである。

 さて、どうしたものか。

 ヴァンスは荷物袋から財布を引っ張り出し、中身をベットの上にぶちまけた。

 貨幣がいくつか落ちてきたが、正直心もとない。

 しばらくこの町で、金を稼ぐ必要があるがどう稼ぐか。

 ロナさんたちの仕事の手伝いをしたいところだが、役人の仕事をするにはそれ相応の許可書が必要になってくる。

 申請すればいい話なのだが、手続きが面倒くさいと聞いたことがある。

 おまけにあまりいい給金ではないみたいだし……。

 深いため息を吐いていると、ドアが開かれてロナが入ってきた。


 「ヴァンスさん、今仕事のことで悩んでないですか?」

 

 突然現れてビックリしたうえに、考えていることまで当てられさらにビックリする。

 

 「困ってます、ね……」

 「そんなヴァンスさんに役所から仕事を預かってきました。 さっそくで悪いのですが、役所に来ていただけますか?」

 

 ロナはヴァンスの返事を聞く前に、手を引っ張って連れ出した。

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