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17話 仕事内容

 早朝からラナとロナはフェリスの役所に来ていた。 ラナの体調も一晩寝たら良くなり、やっと今日から行路師として働ける。

 さっそく中に入るとまだ人はまばらだった。 受付の女性にこの役所からの手紙と応援に来たことを伝えると、応接間に案内された。 二人は黒い革製のソファーに腰かけて待っていると、眼鏡をかけた青年が分厚いファイルを持って入ってきた。


「お待たせしてすみません。 (わたくし)ここで経理関係の仕事をしております、メルク・ノーザンといいます。 本日はよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします。 私はロナ・フェーリエ。 隣が妹のラナ・フェーリエです」


 二人は立ち上がり自分たちのことを述べ、互いにお辞儀をして座った。


「さっそくで申し訳ないのですが、本題に入らせてもらいます。 現在フェリスには、外から(うち)に入れる道が二つしかありません。 それによって近年、町に入れずに魔物に襲われるという事件も起きています。 そのようなことが、これからも起こるとなると町の信頼に関わります。 ですので、お二人には道を増やしてほしいと考えています」


 メルクはファイルから町周辺の地図を引っ張り出して、現在ある二つの道を指差しながら用件を言った。


「予算も最優先でこちらに回しているので、大抵のことは何でもできます。 ……どうでしょうか?」


 ロナはじっと地図をして思案する。 現在フェリスの町は、北西と北東に町に入れる道があるだけだ。 しかも南は海に面して道を作るどころではない。 さらに西は険しい崖で馬が通るには危険過ぎる。

 となると東に道を作るしかない。 幸い東には山があるだけなので、道を作ることはできる。


「道を作ることは可能ですが、現実的に厳しいと思います」

「厳しい、とは?」


 ロナは地図で東の山を指差して説明しだした。


「私たちが道を作るとしたら東側に作りますが、一つだけ大きな問題があります。 山です」

「山……ですか」


 メルクはあまりピンっときてないようだったので、ラナが補足説明をした。


「山に道を作るだけなら簡単にできるの。 だけど、それが『道』として使えるようになるには時間が必要になってくるんだよ。 山は魔物にとって町みたいなものだから、そこに人間の通る道ができてもかえって刺激さるだけなんだよ」


 ラナが説明しても、どうもいまいち理解できないメルクにさらに説明をする。


「私たち人間に置き換えて考えてくれると分かりやいかな。 例えば、フェリスに魔物が通る道が一本あったとするとどうする?」

「そんなの塞ぐに決まってる!」

「じゃあ逆に、魔物が通らない道があったとしたらどうする? 塞ぐ?」


 メルクは腕を組んで悩んだ後、答えた。


「そのままにする。 危険もないのに取り除く程、予算も労力もないからな」


 ラナは満面の笑顔で頷いた。


「そう危険がなければそのままにする。 それは全部、魔物にも言えることなの」


 やっと理解できたようでメルクは何度も頷いた。


「なので『道』ではなく、中継ポイントを作ります。 もちろん道も作りますが、あの行列を町の中に入れるのは、一つ、二つの道では不可能でしょう」


 ロナはあの長い行列を思い出して苦笑いを浮かべた。 ロナたちもフェリスに入る前に長い行列に並んだが、その日には町に入れず外で夜を過ごした。 それからちょっとごたごたしたけど、次の日の夕刻にやっと町に入ることができた。

 町に入るだけで、日をまたいでしまう。 それが今のフェリスの町だ。

 しかしそれよりも、もっと大きな問題がある。


「仕事とは関係ないのですが、一つ聞いてもいいですか?」

「はい、どうぞ」


 メルクは姿勢を正して聞く姿勢をとった。


「あなたたちは、あの道の行列を知っていたのですよね。 なぜ対策を取らなかったのですか? 何も道を作るだけが解決策ではないでしょう?」


 ロナは言ってはいけないことを言ったと思った。

 しかし、理由が知りたかった。

 荷物検査をスムーズにすればよかったのに

 護衛を出して人を守ればよかったのに

 なぜしなかったのか

 その理由が知りたかった。

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